「第2回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際映画祭」の授賞式が3月1日、那覇市ぶんかテンブス館テンブスホールで行われた。ペルーのフランコ・ガルシア・ビセラ監督作「ルーツ 岩と雲の先へ」がコンペティション長編部門の最優秀長編作品賞を受賞、マレーシア出身のラウ・ケクフアット監督作「島から島へ」が審査員賞、観客賞の2冠を獲得した。コンペティション短編部門の最優秀短編作品賞はニック・ハルタント監督の「デイリー・シティ」。
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【フォトギャラリー】「第2回Cinema at Sea沖縄環太平洋国際映画祭」授賞式、レッドカーペットの模様
最優秀長編作品賞に輝いた「ルーツ 岩と雲の先へ」は、ペルーの山間の村で仲間たちと共にアルパカの群れを追って暮らす少年フェリシアーノが主人公。ワールドカップ出場への期待に溢れる平穏な日々の中、鉱山会社が村の生態系を危険にさらし、窮地に追い込まれた村人たちとフェリシアーノをアンデス山脈の壮大な風景とともに描く。本作は2024年ベルリン国際映画祭のジェネレーションKPlus部門で特別賞を受賞している。
審査員長のブリランテ・メンドーサ監督は、「見事に作り上げられた作品。巧妙で引き込まれる物語や映画の技術、自然な演技が、ほかの候補作品を僅かに上回った」と本作を評し、ビセラ監督は「審査員の方々、観客の皆さんがフェリシアーノの物語に共感してくださったことに心から感謝します」とビデオメッセージを寄せた。
コンペティション長編部門の審査員賞、観客賞の2冠に輝いた「島から島へ」は、第2次世界大戦中の旧日本軍による東南アジアでの虐殺をめぐる約5時間の大作ドキュメンタリー。最優秀主演賞は、ニュージーランドのジョセフィン・スチュワート・テ・フィウ監督が、非行更生施設の少女を描いた「私たちはデンジャラス」に出演の少女たちに贈られた。また、今年新設されたスペシャルメンション賞には、インドネシアのロロ・ヘンドラ監督作で、祖先の土地を巡る争いに巻き込まれたダヤク族の少女の物語「湖に浮かぶ家」が選出された。
さらに今年は、スポンサーの笹川平和財団の提供による太平洋島嶼特別賞が設けられ、ハワイ出身のアリカ・テンガン監督の長編「モロカイ・バウンド」とキアラ・レイナアラ・レイシー監督の短編アニメーション「女王に花を」が選ばれ、パラオで上映される予定だ。
映画製作者がプロジェクトを業界関係者にプレゼンテーションを行うインダストリー部門最優秀企画賞は、太田信吾監督「煙突清掃人」。太田監督は昨年の「沼影市民プール」企画に続き2年連続の受賞となる。
沖縄在住・台湾出身の映画監督、黄インイク(こう・いんいく)がエグゼクティブディレクターを務める本映画祭は、優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深めること、地元ビジネスを支援すること、そして地元アーティストの作品を広く発信することを目指し、沖縄が環太平洋地域における新たな国際文化交流の拠点となることを目指すもの。沖縄をハブとし、海でつながる様々な地域の作品から、それぞれの環境や歴史・文化の違い、そして共通点を見いだせるユニークな映画祭だ。
映画祭アンバサダーを務める沖縄出身の俳優・尚玄は、理事の東盛あいかとともに琉装と呼ばれる伝統衣装で登壇し、「自分の生まれ育った沖縄で、このような素晴らしい映画祭が開催されることを本当に嬉しく思います。まだまだ至らないところはあると思いますが、1つ1つ改善していきながら続けていきたいと思っています。またぜひ沖縄に帰ってきてください」と呼びかけた。
この日は審査員長のメンドーサ監督を筆頭に、スロバキアを拠点に活動する映画祭プログラマーのクリスティーナ・アッシェンブレンネルロバ、音楽家・映画監督の半野喜弘、ニュージーランド出身でサモアにルーツを持つプロデューサー・俳優のマリオ・ガオア、俳優の渡辺真起子も登壇し、受賞作品を発表。授賞式開始前には、国際通りに面した広場でレッドカーペットイベントが行われ、市民や観光客が多彩なゲストが集う国際映画祭ならではの華やかな雰囲気を楽しんでいた。
映画祭最終日となる明日3月2日は、午後2時から最優秀長編作品賞受賞作ならびに、最優秀短編作品賞受賞作品がテンブスホールで上映される。スケジュール、上映作品詳細は公式HP(https://www.cinema-at-sea.com/)で告知している。
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