4月15日(火) 0:30
働き方は、日々多様化が進んでいます。正社員であっても起業や、副業、兼業など、1人でいくつもの肩書がある方は珍しくありません。
いくつかの事業所で勤務しながら、扶養の範囲内で自分では社会保険に加入していなかったり、自分で国民健康保険や国民年金に加入していたりと、社会保険や税務関係も人それぞれ異なることもよくあることです。
ただ、段階的に社会保険の適用拡大がされてきており、「働く=自分で社会保険に加入する」という流れは当然になっていくでしょう。ここで確認しておきたいのは、「社会保険ってなに? 」ということです。
広い意味での社会保険には、労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険、そして厚生年金などが含まれています。それぞれの保険の給付内容は異なりますし、実際に給付される適用条件は異なります。一概に「社会保険」でくくるのではなく、これら複数の社会保険に加入するときには、個別に「何の保険か」を確認するようにしたいものです。
では、それぞれの社会保険の加入条件を考えてみましょう。
まず、労働者災害補償保険、いわゆる労災保険は、加入する・しないという選択肢はそもそもありません。1日だけのアルバイトでも適用になるからです。
雇用保険には加入する条件があります。その条件は2つ。原則として、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、そして31日以上の雇用見込みがあることです。
複数の事業所に勤務している場合には、勤務先がいくつあろうと、「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社」で雇用保険に加入します。つまり、1つの勤務先を選んで加入手続きをして雇用保険料を支払えばいいということです。
一方、一般的にイメージしやすい社会保険、すなわち、健康保険と厚生年金は、複数の事業所で勤務している場合には、それぞれで資格取得をした上で、それぞれの報酬から保険料を支払う必要があります。
その勤務先すべてが常勤という条件を満たしていれば、というのがポイントとはなりますが、報酬を得ているすべての事業所で社会保険に加入する必要があります。
保険料はそれぞれの事業所で受け取っている報酬を合算して、計算され、按分されて徴収されるのです。例えば、A事業所で10万円、B事業所で8万円受け取っていたとすると、A事業所からは10万円/18万円分の保険料、B事業所からは8万円/18万円の保険料というように按分されます。
将来受け取れる厚生年金には、合計した18万円が老齢厚生年金の計算に使われます。「生計維持している事業所を選ぶ」という雇用保険とは異なりますので、それぞれの加入条件と、加入したことによるメリット・デメリットは個別に理解しておいたほうがいいでしょう。
勤務していると、会社がしてくれる年末調整、もしくは毎月の給与から所得税が控除されているので、なにもしなくてもいいだろうと考えている方もいるかもしれません。複数の所得があれば、給与明細や源泉徴収票も複数ありますから、わざわざ確定申告をするのは面倒だと思う気持ちもわかります。
ただ、毎年、○○の値上げや水道光熱費の高騰など、物価高が続いている現状では、賃上げを期待するだけでなく、所得税や住民税の節税に目を向ける選択肢を考えてみるのもいいでしょう。
複数の事業所で勤務していれば、それぞれの事業所で所得税が源泉徴収されていますが、確定申告をしなければ、1年間の正確な所得税は計算できません。複数の事業所に勤めており、それぞれ所得税が源泉徴収されていようが、あくまでも「仮」の状態なのです。
“ちょっとした副業”で源泉徴収をされていないこともありますが、給与以外の収入が20万円を超えると雑所得として確定申告はしなければなりません。確定申告をするかどうか判断するためには、国税庁ホームページの確定申告作成コーナーのサイトで動画を見ながら判断もできます。
スマホでも利用でき、マイナンバーがあれば、作成した確定申告書をそのまま電子申請することも可能です。
いろいろなところでスキマバイトをしていると、1つの勤め先からの報酬が少額なため、自分には社会保険や税金は関係ない、もしくはあまり知識がないままということはあるでしょう。
年収の壁の基準がいくらになるのか政府の議論が確定していないため、自分が知っている知識が間違っている、もしくは知識が古くなっているということもあります。複数勤務の場合、人それぞれの事情や勤務形態は異なります。他人やネットの情報に惑わされず、正しい知識を得た上で判断する習慣を身につけましょう。
国税庁令和6年分確定申告特集
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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