F1第4戦バーレーンGPレビュー(前編)
F1第4戦バーレーンGPの予選を10位で終えてパドックへ戻ってきた角田裕毅、そして決勝を9位で終えてマシンから降りてきた角田裕毅は、口には出さずとも安堵と喜びと達成感に満ちた表情をしていた。
「この結果を受け止めているというか、ひとまずよかったなという感じです。もちろん(予選は)10位で終わったので、もっと上に行きたかったのは正直な気持ちですけど、ただ(ここまでの状況を考えると)悪くないなという感じです」
予選では鈴鹿で果たせなかったQ3進出を果たし、最後のアタックは不発だったものの、マックス・フェルスタッペンでさえ苦戦して7位にしかなれなかった厳しい状況のなかで、角田はチームの期待にしっかりと応えてみせた。
角田裕毅はレッドブル2戦目で初入賞を果たしたphoto by BOOZY
「ユウキ、前進だ。いいリカバリーだったと思うよ」
クリスチャン・ホーナー代表も、予選を終えた直後の角田をねぎらって、そう声をかけた。
「今日はQ3進出が目標でしたし、フリー走行での苦戦を考えると、いい挽回を果たせたと思います。マシンをうまく機能させられるウインドウがものすごく狭いなか、ちょっとでも攻めすぎればアウトになって、全然機能しなくなってしまいます。フリー走行ではいろんなことをトライしたのですが、そのせいでパフォーマンス的にはアップダウンがたくさんあって......。
タイトな争いのなかで、ここまで前進できたことには満足しています。このマシンに対する知識や理解度がまだまだ不十分で、全体の半分も理解できていないなか、今のマシンでこのレベルの自信を持てていることにも満足しています」
バーレーンGP週末の3回のフリー走行は、試行錯誤の連続だった。
レーシングブルズでの当たり前が、レッドブルでは当たり前ではなく、より尖ったドライビングやマシンのセットアップ、タイヤの扱いを、当たり前にできるようにならなければならない。そのためには、マシンもチームも隅々まで理解しておかなければならない。
もちろん、それはまだまだ不十分。ただ、フリー走行でさまざまなトライ&エラーをしてきたからこそ、急速に学習を進めてこられた。
【ナーバスでも対処できる自信】その影響でソフトタイヤでのアタックラップは不発となり、FP2は18位、FP3は20位と、「見た目」は非常に不安になる状況だった。しかし、ミディアムやハードタイヤでのアタックは決して悪くなく、むしろ角田は着実に手応えをつかんできていた。
金曜には担当レースエンジニアのリチャード・ウッドとのコミュニケーションミスもあった。しかし、「この後、飲みにでもいきますかね」と冗談を言えるほどだった。
「いや、飲みには行ってないですけど(笑)、予選のコミュニケーションは悪くなかったですね。まだまだ噛み合ってはいないと思いますけど、人としてはすごく気が合うし、逆に今後ものすごくうまく噛み合うための材料は揃っていると思います。そこもゆっくりステップアップしていきたいなと思っています」
トップチームのレッドブルだからと萎縮するでもなく、角田は自分の知識と経験をもとに、比較的若いエンジニアたちをリードするような姿勢でムードメーカーになっている。
ブレーキング時にリアが不安定でターンインしていけない難しいマシンでも、多少のナーバスさなら対処できるという自信がある。だからこそ、自分が進みたい方向を明確に示し、実際にコース上で結果を出すことができる。
レッドブルでの2戦目にして、角田はすでにそういう雰囲気を醸し出している。
ホンダの現場運営責任者であり、レッドブル担当チーフエンジニアでもある折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、見えない部分での角田の努力をこう語る。
「エンジニアと常に会話していますし、見ていてもかなり打ち解けていると感じます。夜遅くまで残ってエンジニアと積極的にコミュニケーションを取り、いろいろと詰めていっているのをよく見ます。
その効果が、予選のタイヤウォームアップの仕方にも表われていたんだと思います。走るだけでなく、そういう部分も改善していかないとうまくいかないのがF1です。この2日間でも、かなりの改善が感じられました」
◆つづく>>
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