『OneMan LiveTour2025「春歌の軌跡」』
4月14日(月) 9:00
Text:吉羽さおり Photo:飛鳥井里奈
1月にメジャー1stアルバム『軌跡』をリリースしたシンガー・ソングライターりりあ。が、アルバムを引っ提げてのワンマンライブ・ツアー『OneMan LiveTour2025「春歌の軌跡」』を開催。東京公演が、4月1日に渋谷CLUB QUATTROで行われた。このツアーはりりあ。初のスタンディングライブとなり、会場内は開演前から期待感の心地よい熱気で満ちている。そしてSEが流れ、ブルーの照明に染まったステージにまずバンドメンバーが登場し、バンドが音をかき鳴らす中でりりあ。が登場すると、大きな拍手や歓声が起こって、1曲目「消去。」とともに観客の手拍子が重なっていった。ドラム、ベース、ギター、キーボードによるボリュームのあるバンド・サウンドと弾むようなビートに、切なさ成分多めのりりあ。の甘いボーカルが冴えて、会場が華やいでいく。
「りりあ。です。今日は最後まで楽しんでいきましょう」と挨拶をすると、「素直になりたい子の話。」へと突入。リズムに乗って、観客に語りかけるように歌い、そこに続いた「ずるい君。」では、観客を“君”に見立ててじれったい思いをかわいらしくぶつけるように歌う。そこからの「貴方の側に。」では、会場内にやわらかに幸せが滲んでいく感覚がとてもいい。
そして中盤へというところで、ここからはキーボードとふたりでと言って、ピアノと歌というかたちでじっくりと歌声を響かせた。今年1月からのテレビアニメ『わたしの幸せな結婚』第2期オープニング主題歌となった「幸せな約束。」は、ミニマムな音響の中でリリカルな歌心が冴え、聞こえてくる繊細な息づかいにフロアが静かに耳を寄せる。さらに抑えたボーカルで感情を溢れさせるように歌う「ごめんね。」に、拍手が起こった。パワフルなバンドアンサンブルでカラフルに彩られた曲もいいが、音を引き算して、なお情景が鮮やかに目に飛び込んでくるようなこのセットもまた、シンガー・ソングライターりりあ。のよさだ。
りりあ。は、恋愛の甘さや苦さをキャッチーに歌にする。ちょっと聞いてよ!と友人に打ち明けるような話から、奥ゆかしく心に閉じ込めた切ないため息やリアルで毒々しい思い、あるいはジタバタする自分をドライに見つめる眼差しなどが絶妙なポップさで綴られる歌は、SNSや若い世代を中心にリスナーを広げ、デビュー後はドラマやアニメ作品等のテーマ曲にも起用されている。ライブには女性客、男性客ともにバランスよく足を運んでいる感じだ。
再びバンドメンバーを呼び込んで「あんたなんて。」をプレイし、明るく灯されたフロアの後方にも呼びかけるように歌うと、「さっき、MCするはずがとばしちゃって」と笑顔を見せた。MCでは、改めて後方までを眺めながら、「今日めちゃくちゃ人多くない!?」と手を振って、渋谷QUATTROの名物(?)であるフロアの大きな柱について話したり、「東京以外から来たよという人は?」と観客とやりとりをしたり、唐突に「お腹すいたなあ」と言ったりと、自由気まま。繊細な声色による歌での印象とはまたちょっとちがった、このフレンドリーな感じも魅力だろう。
ちなみにこの日は、関東や国内のみならず香港やカナダ、インドネシアやチリなどから訪れた人もいて、りりあ。や観客も驚きの声を上げた。会場内の空気がほぐれて和やかになったところで、「静かな曲が続いたので、ここから盛り上がる準備はできてますか」と観客のボルテージを上げながら、後半は「君の隣で。」からスタートした。バンドアンサンブルの熱量も上がって、観客は体を揺らしたり手拍子で応えた「君の隣で。」に続き、爽快なギターロックチューンに凛としたボーカルを響かせる「騙されないからね。」へとなだれ込む。さらに、アップビートでギターのカッティングが気持ちいい「恋って難しい。」では、曲のエンディングでバンドメンバーも観客も“せーの”でジャンプをして締めくくったりと、ライブならではの一体感を作り上げていった。
「ラスト2曲となりました......。寂しい、帰りたくない!」というりりあ。の言葉にフロアからも惜しむ声が湧いたが、「気持ちを込めて、ラスト歌いたいと思います」と歌ったのは、失恋ソング「私じゃなかったんだね。」。リアルな体験をもとに書き上げた曲で、最初はTikTokに投稿した弾き語りで火がつき、たくさんの声に望まれて2021年10月に配信リリースされ、MVが公開となった。今なおMV、ストリーミングともに数字を伸ばし、痛みとともに素直に吐き出される心情に、自分を重ねるように何度もリピートしているリスナーも多い曲だ。この日の観客もまた、その歌やエモーションを全身に染みわたらせるように聴いているといった感じだった。
そしてラストは、2020年5月に初のオリジナル曲として配信リリースされ、その率直な歌でりりあ。の名を大きく広げていった「浮気されたけどまだ好きって曲。」を披露。エモさを畳み掛けてくる流れに、フロアには(歌に反して)歓喜が満ちて、ギターと歌によるイントロに拍手が上がる。そしてこの曲でも、最後はステージとフロアとが一体となって大きなジャンプで曲を締めくくり、会場を笑顔にしていった。
長い拍手や歓声に迎えられたアンコールでは、アルバム『軌跡』の終曲「失恋ソング沢山聴いて 泣いてばかりの私はもう。」を披露。物販紹介や集合写真を撮影し、これで終わりか?と思いきや、最後に1曲アコギの弾き語りで「ねえ、ちゃんと聞いてる?」を歌い上げた。それまでの賑やかな雰囲気から一転して、ぎゅっと空間が圧縮されるような一対一の濃度の濃さに観客が息をのむ。ライブという多くの人と時間を分かち合う場から、それぞれひとりの時間へと帰っていく、そのいい手土産を渡されたようなエンディングとなった。
初のスタンディングライブで、バンドセットを軸に、ピアノと歌、そしてギター弾き語りというかたちで、りりあ。の過去と未来とを詰め込んだ1stアルバム『軌跡』の世界を魅せたライブ。ここからまた鮮やかに広がっていくだろうその歌の情景に楽しみが広がっていく、そんな期待感を持たせるライブ、ツアーとなった。
<公演情報>
『OneMan LiveTour2025「春歌の軌跡」』
4月1日(火) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
【セットリスト】
01.消去。
02.素直になりたい子の話。
03.ずるい君。
04.貴方の側に。
05.幸せな約束。
06.ごめんね。
07.あんたなんて。
08.君の隣で。
09.騙されないからね。
10.恋って難しい。
11.私じゃなかったんだね。
12.浮気されたけどまだ好きって曲。
EN1.失恋ソング沢山聴いて 泣いてばかりの私はもう。
EN2.ねえ、ちゃんと聞いてる?
<リリース情報>
1stアルバム
『軌跡』
発売中
2,200円
アルバム『軌跡』 配信リンク:
https://tf.lnk.to/kiseki
りりあ。 オフィシャルサイト:
https://www.toysfactory.co.jp/artist/riria