4月8日(火) 0:50
秘密証書遺言は作った人が亡くなるまで、作った人以外は、その内容を知れません。文字通りの秘密の遺言ということになります。具体的に説明していきます。
秘密証書遺言は、作成した遺言書に署名と押印をしてから封筒に入れます。そして、遺言書に押した印鑑と同じ印鑑で、封筒に封印をします。
封印した封筒を公証人役場に持参し、公証人と証人2名の前で封筒を提示し、自身の遺言書であることと、作成した人の名前と住所を告げます。もちろん、本人確認も行われます。
公証人は封筒に日付、および遺言者の申し出の内容を書いて署名し、職印を押印します。続いて、遺言を作成した人と証人2名が、それぞれその封筒に署名と押印します。これらの手続きにより、作成した秘密証書遺言が間違いなく作成者の遺言であることが明確になりました。
秘密証書遺言のメリットとして、自筆証書遺言とは異なり、財産目録も含めて自筆の必要はありません。パソコンを使ってWordで作成してもよいですし、第三者に代筆してもらってよいのです。
自筆証書遺言には法務局で保管してくれる制度があります。公正証書遺言は公証人役場で遺言書を保管してくれます。
しかし、秘密証書遺言には保管の制度がありません。自身で保管することになりますが、あまりに厳重に保管すると、遺族が遺言の存在を知らないまま、せっかく作成した遺言が発見されないという可能性も否めません。
逆に保管が十分でないと、生前に遺言を遺族に開封されてしまったり、隠されてしまったりする可能性があります。内容を秘密にできる秘密証書遺言ですが、遺言の存在そのものを秘密にしてよいのかについては検討の余地があります。
既述のとおり、秘密証書遺言は第三者に代筆してもらうことも可能ですが、遺言を作成した人が法律に十分な理解のある人とは限りません。つまり、法律の上で不備のある遺言の可能性があります。
秘密証書遺言を作った人が亡くなった後、遺族らが秘密証書遺言を見つけても、絶対に勝手に封を切ってはいけません。秘密証書遺言を開封せず、そのまま家庭裁判所に持ち込んで検認を受けなければなりません。
検認とは、遺族(=ここでは正確には相続人)に対し、遺言の存在およびその内容を知らせるとともに「検認した日」現在で、遺言書の内容を明確にします。明確にすることで、遺言書の偽造・変造を防止します。なお、法律的に有効な遺言か否かの判断をするものではありません。
自筆証書遺言は財産目録を除き、自分で遺言の全文を書かなければなりません。公正証書遺言は公証人に内容を伝えなければなりません。秘密証書遺言は自由に作成できます。公証人役場に出向かなければなりませんが、少なくとも遺言書を作成する、という点では手軽だといえます。
しかし、法律上の不備があれば、遺産分割の際に意思を相続人らに残せない可能性もあります。秘密証書遺言の作成には弁護士や司法書士などの専門家に相談することから始めましょう。
最高裁判所 遺言書の検認
日本公証人連合会 秘密証書遺言
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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