『劇場版 クマと民主主義』(4月5日実施 札幌 舞台挨拶)
4月7日(月) 12:00
4月5日・6日に大阪・京都・福岡・札幌で計7回にわたり開催された『TBSドキュメンタリー映画祭2025』舞台挨拶のオフィシャルレポートが到着した。
4月5日実施 札幌 舞台挨拶劇場版 クマと民主主義
【登壇者】
監督:幾島奈央
ゲスト:佐藤喜和(酪農学園大学教授)
幾島監督は、クマによる被害で「大切な人を失った方々が、同じことを繰り返してほしくないからと取材に応じてくださいました。映画で知ってもらうことで、防げるはずのクマの出没や被害を無くしていけたら」と取材を続ける思いを具体的に語った。
クマ対策は、現れた時の駆除だけでは効果は期待できず、地域の実態に合わせた周到な計画こそが大切だと主張するのは、ヒグマ生態研究の第一人者・佐藤教授。ヒグマの暮らす森林で調査を続け、集落に通い、足で成果を出す研究者である佐藤教授は、「研究を始めた30年前には、クマ問題が映画になるとは想像できなかった。温暖化などでクマが変わっていくので、人間社会も変わらなければならない。行政や猟友会に任せるだけではなく、自分ごととして対処することでクマとの共存につなげたい」と信念を説いた。
イベント終了後には、幾島監督のもとに「クマ注意の看板が家のそばにあるのできちんと知らなければと映画を観に来た。とても考えさせられた」「クマへの対応に苦労しているので応援になりました。ありがとう」と声をかける観客の姿も見受けられた。
4月5日実施 京都 舞台挨拶労組と弾圧
【登壇者】
ディレクター:伊佐治整
ゲスト:望月衣塑子(東京新聞記者)
ゲストの望月記者が「逮捕者数自体にも驚きましたが、これほど多くの人が無罪となった労働弾圧の事件を東京のマスメディアが報じてこなかったことを恥じた。そしてこの歴史を伝える作品を自分と同世代の伊佐治さんが作られた、こういう作品こそ全国展開となってくれたらいいなと思って観ていた」と映画本編の感想を語ると、伊佐治ディレクターは「関生の事件に当初から強い関心があったわけではない、正直、むしろつい後回しにしてしまう事件だったと思う。自分は竹信三恵子さんの発信をきっかけに一気にスイッチが入った形だが、取材し始めるとこれほどの事件を取り上げてこなかったことに忸怩たる思いがした」と思いを語った。
望月記者は「ただ、だからこそ事件の顛末、ここまでの無罪を出しているという重い事実も捉えることになった」とし、これまで見過ごしてきてしまった事実を悔いつつ“ここから”改めて労働者の権利を考え、取り戻すときが来たのではないかと結んだ。
4月5日実施 福岡 舞台挨拶誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した
【登壇者】
監督:里山千恵美
ゲスト:平方宣清(出演者)
真正面から丹念に、長期にわたり取材を続けた里山監督は、「RKBに残っている豊かだった時代の有明海の映像を見て、この問題に対して黙っていることは出来ないと思いました」と取材を始めた動機を熱く語った。映画の視点について「取材現場で感じたこと、確信した思いのまま、あからさまに漁業者側に立って、この事業は本当に正当なものなのか、大きな声で問いたいと思い制作しました」と、タイトル『誰のための公共事業』にも繋がる問いかけを説明して観客を頷かせた。
ゲストで映画にも登場し、かつて“宝の海”の象徴、二枚貝「タイラギ」を採っていた佐賀県太良町の漁師の平方は、巨大な国や県などとの訴訟に翻弄される当事者にもなってしまった現在の境遇を「有明海の漁業が大変厳しい状況を多くの方に知っていただきたい」と説明し、「干拓事業は、漁業者だけでなく、地域に暮らす様々な人たちの生活、地域の産業を潰してしまったら、人は生活することが出来ない」、「事業を行った国の無責任な姿勢には本当に憤りを感じる」と訴えた。
全国ニュースで、過去幾度も取り上げられた干拓問題は、法的には「一応の」決着となったが、そこに生きる人の生活が終わったわけではない。平方が「宝の海を取り戻すためにこれからも闘っていきたい」と決意を示すと、里山監督は「今回このような形で“有明海の今”を伝える機会があり、本当にありがたい。いつか漁業者が望む潮受け堤防の開門が叶った時に、この映画の映像が役に立ってくれたら嬉しい」と語り、有明海の堤防問題は決して終わったわけではないと再認識する場になった。
4月5日実施 大阪 舞台挨拶①カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~
【登壇者】
監督:津村有紀
ゲスト:古川流唯、中下雄貴、國村諒河、高垣博之、関優樹、永遠、加藤青空(カラフルダイヤモンド)
本映画祭7回目となる舞台挨拶は大阪で行われた。映画でここに注目してほしいという話題では、永遠の髪型問題が浮上。今日はばっちり髪型が決まってるという永遠だが、映画の中では髪型がシーンごとに変わっており、古川は「強風にあった後のシンガーのVaundyさんみたいだった」と語った。
大阪が大好きだというリーダーの國村は「人柄がいいなーって。大阪にいるだけで明るくなれる街」だとコメント。最後に津村監督は「うわべだけの付き合いが多い中、一歩踏み込んだ付き合いも大切だということを映画を通じて届けられたら嬉しい」と語っていた。
4月5日実施 大阪 舞台挨拶②カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~
【登壇者】
監督:津村有紀
ゲスト:古川流唯、中下雄貴、國村諒河、高垣博之、関優樹、永遠、加藤青空(カラフルダイヤモンド)
本映画祭8回目となる舞台挨拶で國村は、数週間前に京都でイベントをしたときに出会った警備員が前作も観てくれており、今回もチケットを購入したと言ってくれたことを報告。「おじさんにも僕らの映画が刺さって嬉しかった」とファンが広がっていることに喜びを明かした。
大阪では行きたいところや食べたいものが数えきれないくらいあるというが、みんなでこれはおいしいと盛り上がったのが大阪のミックスジュース。関は自販機のミックスジュースを鞄に入るだけ買ったという。最後に津村監督は「みんなと過ごす時間が多くなればなるほど、みんなすごく優しいんだなって感じました。そんなみんなのやさしさが映画を通じて伝われば嬉しいです」と締めくくり、大きな拍手で舞台挨拶が終了した。
4月6日実施 福岡 舞台挨拶カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~
【登壇者】
監督:津村有紀
ゲスト:古川流唯、中下雄貴、小辻庵、國村諒河、関優樹(カラフルダイヤモンド)
本映画祭9回目の舞台挨拶は福岡で。舞台挨拶冒頭、福岡出身の小辻は「イエーイ!」と喜びの声をあげ、「1年前にもこの場所に来たけれど、こうしてまた戻ってこられてうれしい」としみじみと語った。古川、國村、関からは博多名物を堪能した様子も語られ、「モツ鍋、串焼き、鯨も食べました!」とご当地グルメを満喫。小辻おすすめのラーメンやクロワッサンを紹介する一幕もあった。
舞台挨拶中盤には、古川の“ホテル事件”が話題に。他のメンバーがベッド付きの部屋だった中、古川の部屋だけなぜか畳に布団。「俺だけお風呂もなくて、布団が真ん中に……しかもちょっと膨らんでいてホラー(笑)」と語ると、会場は爆笑に包まれた。
「マジで怖くて、夜中4時に諒河(國村)くんの部屋に引っ越しました」と明かすと、國村も「夜中にガラガラってキャリーケースごと引っ越してきて(笑)」と振り返り、まさに“忘れられない福岡の夜”となった様子。
最後に津村監督は会場を見渡しながら、「本日はご来場いただきありがとうございました。(小辻)伊織くんがですね、10年後どうなっていたいですかって聞いた時に、“カラフルダイヤモンドとして生きていたいですし、誰ひとり欠けることなく”ということを言っているのですけれども。国とか状況とか環境とかっていうのは日々変わってはいきますが、そのとき、その瞬間の真実を映し出せていて良かったなと思っています。未来とか、明日とかってどうなるか分からないですけども、この今の瞬間、もうちょっと大切にしようとか全力で生きよう、みたいな。そんなきっかけになってもらえれば嬉しいです。本日はどうもありがとうございました」と挨拶した。フォトセッションでは会場に大量のシャッター音が響き、名残惜しそうにマイクを握った國村の「これでラストだ!楽しかったっちゃんね」という言葉で締め括られ、本作の“終着点”にぴったりのフィナーレとなった。
巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯
【登壇者】
監督:大村由紀子
ゲスト:冬至克也(出演者)
舞台挨拶の冒頭では、映画に関する感想や制作のきっかけなどが語られ、大村監督は「BC級戦犯というものがあまり知られておらず、JNNのニュースライブラリー(TBS系列の28局で共有しているライブラリ)で検索をしたら3件ぐらいしかなかった」とBC級戦犯というテーマがまだあまり知られていなかった当時を振り返り、「しかも報じられていないっていうところも、なぜ?と思ってリサーチを始めましたけれども、それはやはり、もうこの戦争犯罪に戦犯という言葉が非常に重くてですね、亡くなったご遺族の方もそれを語らず、語らなかったわけで」と、戦争犯罪という言葉の重みを語った。
また映画内の登場人物である、冬至堅太郎の孫である冬至勝也がゲスト登壇し、「(祖父は)物事の判断が非常に早い人間でした。非常に強情なところもあったんですけども、問題が解けると、もう手のひらを返したように自分の主張を引っ込めるというような面もありました」「しかし、映画を見まして、私は家族として祖父とずっと接してきたわけですけども、普段では見れない彼の性格というか、そういう彼の姿が垣間見れた気がして非常にありがたいなと思います」と監督に感謝を伝えた。
大村監督は「日本国憲法の前文に、“戦争の惨禍を繰り返すことのないように決意し、日本国憲法を確定する”とあって、憲法っていうのは日本を作る一番ベースのところ、全ての法律がそこに全部上に立っているもので、戦争を繰り返さないように作られたものなんだっていうことが、すごくそのときストンと落ちて、明確に戦争の惨禍を伝えなきゃいけないっていう目標が出来た」と本作の制作についての動機を熱く語った。
冬至は「戦犯そのものだけではなくて、これから先に戦争しないようにするために、この国の主権者のひとりとして、それぞれが自分自身で決めなくてはいけないと、そのために、考えたり誰かと話し合ったりする機会っていうのは非常に重要だと思います」と国内だけでなく、現在の世界情勢にも目を向けて、本作を通して戦犯裁判のことだけでなく、戦争の悲惨さを伝えていく必要性も語った。最後に大村監督は、「過去のことを描いた作品ですけれども、私たちの過去を見てそこからぜひ未来に目を向けていただけるきっかけになれば」と観客にメッセージを送った。
<イベント情報>
『TBSドキュメンタリー映画祭 2025』
※終了分は割愛
3月28日(金)〜4月10日(木) 大阪・テアトル梅田
3月28日(金)〜4月10日(木) 愛知・名古屋センチュリーシネマ
3月28日(金)〜4月10日(木) 京都・アップリンク京都
3月28日(金)〜4月10日(木) 福岡・キノシネマ天神
4月5日(金)〜4月11日(金) 北海道・シアターキノ
4月4日(金)~5月1日(木) 広島・福山駅前シネマモード(3作品限定上映)
公式サイト:
https://tbs-docs.com/2025
(C)TBS