ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――先週の「スプリント王決定戦」GI高松宮記念に続いて、今週は古馬中距離の頂点を決するGI大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)が行なわれます。
大西直宏(以下、大西)
ドバイワールドカップデーと同時期に行なわれる大阪杯。近年は日本馬の海外での活躍が顕著となり、有力馬やリーディング上位騎手がドバイへ遠征するのが恒例化。そのあおりを受けて、この路線のエース級が不在、というのがここ数年の現状です。
そうしたなか、今年から大阪杯も1着賞金を3億円に増額しました。しかし、潤沢なオイルマネーによる中東のビッグレースには及ばず、国際的な名誉も伴うことを鑑みれば、陣営がこれまでどおり中東遠征を優先させるのは、仕方のないことかもしれません。
――確かにドバイワールドカップデー(現地4月5日)には、今年も日本から豪華なメンバーが参戦します。
大西
その結果、先にも触れたとおり、大阪杯は小粒なメンバーになりがち。おかげで、直近4年の勝ち馬は皆、ここでGI初制覇を達成。いずれも、その後のGI勝利はありません。そういう意味では、予想においては過去の実績よりも、今の勢いや伸びしろといった点にフォーカスするほうが得策かもしれませんね。
――あらためて今年のメンバーをご覧になっての、率直な印象を聞かせてください。
大西
昨年もそうでしたが、全体的に力量が拮抗した顔ぶれ。GI馬が4頭エントリーしていますが、いずれも図抜けた存在とは言えず、それらに次ぐ勢力との差はわずかでしょう。
つまり、これまでGIを勝つには少し足りなかった馬や、ここで初のGI獲りを狙う上がり馬などにもチャンスがあるということ。まさしく混戦で、馬券的には非常に面白い一戦と言えるのではないでしょうか。
――レースの傾向を踏まえて、有力視できる馬を挙げるとしたら、どのあたりになりますか。
大西
舞台となるのは、阪神の内回り・芝2000m。コーナー4回、直線に坂のある標準的なレイアウトですが、直線は短く、何かしらに突出した能力というよりも、総合力や機動力の高さがモノを言うGIと言えます。
そういった点を考慮してまず注目されるのは、昨年の覇者であるベラジオオペラ(牡5歳)。戴冠後も、GI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)3着、GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)6着、GI有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)4着と善戦。派手さはないものの、着実にレベルアップしています。
ここに向けての臨戦態勢も良好。メンバー的にも展開を組み立てやすい雰囲気があって、連覇の可能性も十分にありそうです。
明け4歳勢では、桜花賞馬のステレンボッシュ(牝4歳)と、GII毎日王冠(10月6日/東京・芝1800m)、GII中山記念(3月2日/中山・芝1800m)と好メンバー相手に連勝を飾ってきたシックスペンス(牡4歳)。
前者は差しタイプで、立ち回りに注文がつきますが、高松宮記念を制したサトノレーヴと同様、名手ジョアン・モレイラ騎手が継続してタッグを組むのは大きな魅力です。
後者は抜群の中山実績が示すように、機動力は申し分ありません。ただ、今回は主戦のクリストフ・ルメール騎手がドバイへ。横山武史騎手との初コンビというのが、レースでどう出るか?
――いずれにしても、激戦は必至の様相。そうした状況にあって、人気の盲点になりそうな馬、配当的に妙味がありそうな馬というのはいますか。
大西
前走のGII京都記念(2月16日/京都・芝2200m)で重賞3勝目を挙げたヨーホーレイク(牡7歳)が面白そう。
大阪杯での大駆けが期待されるヨーホーレイクphoto by Eiichi Yamane/AFLO
ディープインパクト産駒の良血で、早くから高い素質を評価されていた馬ですが、屈腱炎で明け4歳から6歳になるまで2年以上もの休養を余儀なくされました。医療やリハビリ技術の進歩によって、同馬のように戦列復帰を果たす例は増えているものの、競走馬にとって屈腱炎が"不治の病"であることに変わりません。ですから、レースを使うことができただけでも大変なこと。
にもかかわらず、同馬は復帰してから重賞をふたつも勝って、GIに駒を進めてきました。これは、偉業と言っても過言ではありません。馬自身の高いポテンシャルはもちろんのこと、陣営の忍耐と努力による賜物と言えるでしょう。
道中折り合いを欠いた2走前の毎日王冠は7着。スムーズに運んで快勝した前走の京都記念は快勝。それぞれ、状態面に差があったこともあるでしょうが、コース適性がパフォーパンスの違いとなって表われたのは明らかです。
硬い芝の瞬発力勝負より、少し上がりのかかるソフトな馬場での持久力勝負のほうがハマるタイプ。コーナー4回の内回りコースに、開催6週目の馬場がフィットすることは、容易にイメージできます。
今回は、陣営が「何とかGⅠを獲らせたい」と公言してきた目標を叶える千載一遇の絶好機。陣営もそれを重々承知したうえで、渾身の仕上げで臨んでくるでしょう。
レースを引っ張る先行馬の存在も、好位で折り合って流れに乗っていきたい同馬の大仕事を後押しする追い風になると見ます。こうしたことを踏まえて、一発の可能性を大いに秘めているヨーホーレイクを、大阪杯の「ヒモ穴」に指名したいと思います。
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