タデクイ、2ndワンマンライブ『潜水』満員御礼東京公演レポート「一緒に“潜水”しませんかという気持ちです」

タデクイ 2nd ONEMAN LIVE『潜水』2025年3月26日 下北沢・近道

タデクイ、2ndワンマンライブ『潜水』満員御礼東京公演レポート「一緒に“潜水”しませんかという気持ちです」

4月4日(金) 11:00

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Text:吉羽さおりPhoto:永戸耀士

3月7日から3週にわたって約1年ぶりとなるデジタル・シングル「レッテル」、「現実」、「灯台」をリリースした、釧路市・阿寒湖畔出身の3ピースバンド、タデクイの2ndワンマンライブ『潜水』が、3月23日に札幌BESSIE HALL、3月26日に下北沢・近道で開催された。札幌では1年ぶり、そしてレポートをする東京では初のワンマンライブ(昨年6月18日に下北沢BAR? CCOでアコースティックセットでのワンマンは行なっているが)となり、開演前からたくさんの人でフロアが埋まっていた。タデクイのメンバーと同世代の10代から20代の観客を中心に、音楽仲間や、ひとりで訪れている上の世代の音楽ファンの姿もうかがえる。ジャズやアンビエントな音楽が流れる会場内は、この日を心待ちにしていた、歓喜と緊張感とが入り混じったムードだ。

東京での記念すべきワンマンとなったが登場SEはとくになく、観客の拍手に迎えられてふらりとステージに登場した、3人。下手側にドラム・OMI、中央奥にベース・廣野大地、上手側がボーカル/ギター・下倉幹人で、それぞれが自然にアイコンタクトできるような形だ。下倉は、「東京はもう20度を超えているんですね。タデクイと申します、どうぞよろしく」と挨拶をすると、深いリバーブがかかったギターを鳴らし「友人」へと突入する。ちなみにこのライブまでに音楽配信サイト等で聴くことができるタデクイの曲は、前述の3曲と昨年リリースした「屁理屈」と「日常」の5曲。都内でのライブもまだ多くないことからこの日が初見の観客も多かったと思うが、冒頭から幻影的で、観るものに深くゆったりとした呼吸を促していくようなディープなアンサンブルを展開する。

ぐっと会場の雰囲気を掴んだところで続く「レッテル」で、哀愁の滲むメロディを口ずさむように歌う。怒りややるせなさが沸々とわく歌と、醒めた心情を映したようなドラムやベースが織りなす淡々としたビートとの温度感のギャップが、さまざまなジレンマを抱えこの日々を生きる若者たちを表しているような感じだ。ステージの気迫に、会場内もまた青白い熱を帯びていく。曲中で下倉が、「ベース、大地!」「ドラム、OMI!」と紹介をすると、フロアからは拍手や歓声が飛び、「レッテル」から連なるポストロック的な3人の濃厚なセッションに会場の温度も上がる。まだまだ序盤だがぐいぐいと観客を引き込んでいくライブだ。

前半ではさらに音源化はされていない「鯨」や「蛹」が披露された。これらの曲が音源化されていくのはこれからの楽しみではあるが、同時にこの2曲が生むヒリヒリとした緊張感や即興性、3人の演奏の迸るエネルギーやダイナミズムを直に浴びるのはライブだからこその醍醐味だ。ドゥームメタルかっていうくらい遅いビートと重厚感のあるサウンドに息を呑む「鯨」。また「蛹」ではまさに姿形を変え変態する昆虫のようにサウンドがさまざまに形を変え、熱を帯び、エネルギーを解き放つ瞬間の美しいざわめきを聴かせた。

中盤では改めて今回のワンマンライブに「潜水」と冠した思いを下倉は語った。生まれ育った釧路の景色、展望台のある米町公園から見る花火大会(釧路大漁どんぱく)、幼い頃に海(実際は湖だったようだが)で遊泳したときに感じた言いようのない怖さなど、つねに自分の近くにあった海の存在や、気づけばそんな海を題材とした曲が増えていたことを話した。現在、下倉とOMIは札幌に、廣野は進学で東京に暮らしているが、タデクイの音楽の原風景は地元・釧路にあるのだろう。「一緒に“潜水”しませんかという気持ちです」(下倉)という。ライブの前半はまさに、観客がタデクイならではの音楽に深く潜っていく感覚だったが、ここからの数曲は少し軽やかに、ゆらりと波に揺られ、また陸へと上がって風に吹かれるような曲が続いた。シンプルなビートに歌が映える高校生の頃に作ったという「現実」、そして現在最新のシングルとなる「灯台」はブラジル音楽的なアレンジが白昼夢的。会場ではミラーボールのきらめきが幻想感を引き立てる。

さらにここで、ライブでお馴染みとなっている「グレア」をプレイ。跳ねたビートによるシンプルなガレージロックに、ほんのりと哀愁が乗ったメロディやボーカルが響く。タデクイの曲のなかではBPM高めの曲で、自然と観客の体が揺れるサウンドだ。それまでのヒリヒリとした会場内の空気感も、柔らかく解きほぐしていく。

後半へと向かうMCでは廣野や普段のライブではあまり喋らないOMIもMCをした。現在、ひとり東京で暮らす廣野は、このライブにも学校の友人や東京でできた友人たちも来てくれているという。そんな新たな友人たちが3カ月連続リリースでのアートワークのデザインを手がけたり、この日のライブのカメラマンをしてくれているそうだ。環境は変化したが、そこもバンドにうまく反映できているのが頼もしい。またOMIは集まってくれた観客に感謝を述べ、この2ndワンマンライブのために新調したグッズを紹介。演奏での引き締まった表情とは違った、それぞれの素顔が垣間見える感じで会場は和やかな雰囲気だ。そして下倉は「今日はアンコールはないんです」といい、本編のみでしっかりと全力でやって締めたいと後半へと突入した。

下倉の弾き語りによる「海に来て」で、タデクイの持つ歌心を存分に響かせると、昨年3月にリリースした初のシングル「日常」へと続く。まだ世の中に不慣れで流されそうになりながらも、大人の態度が求められる10代から20代へという揺らぎのなかで、変わらぬものを大事に生きたいと願う、今の彼らの身の丈の思いが形になった曲がダイナミックなアンサンブルで演奏された。真っ直ぐで、晴れやかな眩しさを感じさせるような下倉のボーカルや、力強いバンドサウンドに会場から大きな拍手が湧く。

アンコールはないと宣言しつつ、どこか本人たちがいちばん名残惜しそうな雰囲気を出しながら、ラストに演奏したのは「舟」。こうして東京初のワンマンでみんなのいい顔を見れた喜びを語り、「その日常に、タデクイを入れて楽しくやってくれたら」と、ここから続く日々へと勢いよく観客を送り出していくかのような大地を踏み締めるおおらかなビートで、分厚いアンサンブルによるロックサウンドを鳴らしていく。ブルースやフォークを基調に、またアレンジではジャズやボサノバ、アンビエントなどさまざまなエッセンスを交えてそのサウンド世界を広げていているタデクイだが、3人の今のボルテージをストレートに昇華した「舟」の大きなスケール感、迫力に、バンドとしての力、骨太さがうかがえる。

2ndワンマンライブにして東京での初ワンマンとなった今回の『潜水』。何に依ることもなく自由に、しかしひたすら悩み葛藤しながら、この3人だからこそ奏でられる音楽を追求している濃い時間を共に体験するようなライブとなった。

<公演情報>
タデクイ 2nd ONEMAN LIVE『潜水』

2025年3月26日 下北沢・近道

セットリスト

1. 友人
2. レッテル
3. 潜水
4. 鯨
5. 蛹
6. 現実
7. 灯台
8. グレア
9. 海に来て
10. 日常
11. 舟

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<ライブ情報>
『HOT STUFF presents Ruby Tuesday 60』

2025年4月8日(火) 東京・新代田 FEVER
開場18:30 / 開演19:00
出演:是猫 / タデクイ / HINONABE / 水平線
料金:1,000円(入場時ドリンク代が必要)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2448206
イベント公式サイト:
https://www.red-hot.ne.jp/ruby/ruby60/

『春と狂気』

2025年4月9日(水) 東京・神保町 試聴室
開場19:00 / 開演19:30
出演:池間由布子 / タデクイ
料金:3,900円(1ドリンク、スナック込)
http://shicho.org/2025/04/1_250409/

『SYNCHRONICITY'25 - 20th Anniversary!!』

2025年4月12日(土)・13日(日) 13:00開演予定
東京・渋谷 Spotify O-EASTほか11会場
料金:2日通し券16,800円、1日券8,800円
※整理番号付、入場時ドリンク代が必要
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2454517
※タデクイは4月12日(土) に出演
イベント公式サイト:
https://synchronicity.tv/festival/

タデクイオフィシャルLinktree
https://linktr.ee/tadekui

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