「幼稚園の年中で九九を覚えさせられ…」厳しい教育を受けた27歳女性が「母親の人生のやり直し」を避けるためにしたこと

バカデカい愛さん

「幼稚園の年中で九九を覚えさせられ…」厳しい教育を受けた27歳女性が「母親の人生のやり直し」を避けるためにしたこと

4月4日(金) 6:52

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ネット言論界にはさまざまなバックグラウンドを持つ人間がいるが、バカデカい愛さん(@fuckin_big_love)もそのひとりだろう。京都市立芸術大学を卒業後、イラストで生計を立てつつ文章も綴る。その切迫したテキストの圧に味を感じる。彼女の半生を追った。

教師の母から厳しい教育を受けた幼少期

バカデカい愛さん(以下、愛さん)は現在、27歳。肩書はイラストレーター、デザイナー。芸術一家で育ったのかと思いきや、行き過ぎた教育ママのもとに生まれている。

「教師である母は、私が小2くらいのときに中学校のカタログを見せてきて『あんた、こんな可愛い制服着たいやろ?』と聞いてきました。何気なく『うん』と答えたのを、母は『中学受験をすることに娘が同意した』と見なしたようでした。それ以来、塾にもほぼ通わず母による特訓が始まりました」

もっとも、教育ママの萌芽らしいものは愛さんが幼稚園のときにはすでに見られる。

「一緒にお風呂に入るとき、湯船に片足を突っ込んだ状態で私に九九を言わせるんです。でも、少しでもつっかえたりしたら、その足をピシャリと母は平手打ちしました。幼稚園の年中のときのことです。したがって、私は4~5歳のときにはもう九九がいえたことになります。もっとも、暴力は日常的にありました。もっと時系列が下れば『エアコンをつけっぱなしにしたから』というような理由で簡単に鉄拳が飛んできました」

苦労人の母が抱えていたものは…

だがそんな母親もまた、傷を抱えていたのではないかと愛さんは言う。

「母は実家と絶縁しているため、推測でしかないのですが、虐待をされて育ったのではないかと私は考えています。また、母は自腹で高校へ通い、通信制の大学を経て教員免許を取得した苦労人ですから、学歴に対するコンプレックスがあったのではないでしょうか」

反旗を翻し、自身の夢を伝えるも…

さまざまな事情から降りざるを得なかった学歴レース。その悔しさから、愛さんの母親は自分の娘を“敵討ち”の道具にしたのかもしれない。優秀で、母の期待通りの成績を修めた愛さんが“反乱”を起こしたのは、高校生のときのことだった。

「母に言われるまま中学受験をして、勉強をやり込んできた私でしたが、本当は絵を描くのが好きでした。学生時代、母の目を盗んで勉強の合間に絵を描いていたんです。高2くらいのとき、進路を真剣に考えるにあたって、『母親の人生のやり直しをさせられているだけだ。このままでは私のやりたいことはできなくなってしまう』と考えて、芸術系の大学へ行きたいという希望を打ち明けることにしました。

当然、母は大反対。『あんたにこれまでいくら注ぎ込んできたと思ってるの?』『公立大に入って仮面浪人していい大学へ行きなさい』と矢継ぎ早に浴びせてきました。私は、どうせ浪人するなら、芸術大学へ行きたいなと考えました」

志望校に入学してから気づいた“格差”

結局、浪人して芸大へ進学するための予備校へ通うことになった愛さん。母親は最後まで反対したが、思わぬ援軍を得た。

「父は母と仲が険悪で、口を開けば母の悪口を言っているような人です。母の教育への暴走を止められなかった罪滅ぼしなのでしょうか、父と父方の祖母が、予備校の学費の一部を出してくれました。大部分は、週に6回ほど朝6時から11時まで駅構内でのバイトをして補いました。浪人時代の私は、バイト先から予備校に直行して勉強する生活をしていたんです」

浪人の甲斐もあって晴れて京都市立芸術大学へ合格。だがその門をくぐった愛さんは、同級生たちと住む世界が違うことを思い知ったという。

「予想はしていましたが、芸大へ進学する子たちの実家は裕福なので、経済格差は常に感じました。そもそも制作にも費用がかかるので、実家からの支援があってアルバイトの必要さえない同級生たちとはスタートラインが違うんですね。私は体調を崩して留年を選択したため、入学の同期とは卒業年がずれるのですが、彼女たちが卒業を前に『アルバイト経験がないから、アドバイスがほしい』と来たときは仰天しました。就職に際して1度もアルバイトをしてこなかったのが不安だったようなのですが、私からすると、恵まれた環境すぎて(笑)。

私は学生時代、とにかく単価のいいアルバイトを探して、キャバクラ、コンセプトカフェ、ガールズバー、メンズエステなどで働いていました。あまりに境遇が違うので、アドバイスと言っても逆に迷ってしまいますよね」

「恨んでいる状態がしんどい」境地に

両親の都合に翻弄された愛さんは、夢だったイラストの世界で頭角を見せている。意外なことに、現在は母親とも1~2ヶ月に1度はランチに行くのだという。それはなぜか。

「端的に言うと、恨んでいる状態がしんどいからですね。私は、自分の人生がうまくいかないのを親のせいにしている人間が一番嫌いなんです。自分がそうなりたくないので、歩み寄る意味で必ず定期的に会うようにしています。

母親は今になって当時のことを忘れたかのような発言をすることが多く、その点は呆れを通り越して尊敬すら覚えます。『確かに厳しく躾けたけど、手を上げたことはない』とか本気で言うんですよ(笑)。私の認識では、週に4〜5回ほど暴力はあって、むしろ殴られない日のほうが少なかったんですが、記憶が改ざんされているんです」

優しくなった両親に対して思うことは…

打ち解けたというには程遠い状態にも思えるが、一方で負の感情を自らのなかに内面化しないよう務める愛さんの気持ちは首肯できる。そんな彼女は今、両親に対して何を思うのか。

「これは両親に共通しているのですが、今になって優しくしてくるんですが、率直に言って『なんで今更?』という思いが強いですね。自らの行動を反省しているようにも受け取れるんですが、そうであるならば、最初から子どもとの関係性に気をつけるべきだったのではないかと思ってしまいます」

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親子関係もまたひとつの人間関係である以上は、家庭内という密室空間だからこそ、互いに細心の注意を払うべきだろう。親が人生のリベンジに子どもを利用すれば、子どもは自ら人生を生きられなくなる。自らを支配していた母親の筋書きから解き放たれ、旺盛な創作欲で突き進む愛さんの未来が明るいものになるといい。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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