長期固定に揺り戻し?頭金割合や借入金額は?過去35年間と足元5年間で住宅ローンの利用実態に違いも

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長期固定に揺り戻し?頭金割合や借入金額は?過去35年間と足元5年間で住宅ローンの利用実態に違いも

4月1日(火) 22:00

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三井住友信託銀行の「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(以下、ミライ研)は、全国1万1435人(18歳~69歳)を対象とした「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」を2025年1月に実施した。その結果を分析したレポート「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化 ―転換局面にある家計の選択―」を公表した。過去35年の動きと直近5年の動向に違いが見られるという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
住宅ローン利用の変遷についてアンケート結果を公表/三井住友トラスト・資産のミライ研究所

「金利がある世界」復活で、住宅ローンの金利選択に変化?

今回の調査の特徴は、「1990~2024年:これまでの35年間」と「2020~2024年:足元5年間」とを比較して分析している点だ。なぜなら、以下のように住宅ローンの金利動向が変わっているからだ。

■住宅ローンの変遷
「1990~2024年:これまでの35年間」→バブルが崩壊し、住宅ローンの金利は低下を続け、「金利なき時代」となり、低金利が長く続いた。
「2020~2024年:足元5年間」→ゼロ金利政策解除により、「金利がある世界」が復活した。

たしかに、足元5年間では、35年間で初めて金利上昇局面に入る状況になったが、35年という長いスパンで見れば、住宅ローンはまだ低金利の水準といえるだろう。

まず、住宅ローンの【金利形態】の違いを見ていこう。

住宅ローンの金利形態「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)
住宅ローンの金利形態「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)

低金利、特に「変動型」の低金利を受けて、過去35年では変動型が徐々に増加している。一方で、足元5年間、なかでも変動型の金利が久しぶりに上昇した2024年では、「変動型」を選んだ人が減少に転じている。住宅ローンは低金利のままという状況に慣れてしまったなか、適用金利だけでなく、金利上昇リスクを考慮して選ぶ人が増えていることがうかがえる。これについて、ミライ研では、「長期固定金利への揺り戻しの気配」と見ている。

低金利や物件価格上昇の影響で、借入金額や返済比率に変化

物件価格はどういった推移だったか? 新築マンションの価格について振り返ってみると、バブル崩壊以降は下落が続き、2006年あたりからマンションミニバブルにより価格が上昇し、以降は価格の上昇が続いていくという状況だ。

では、【借入金額】は、どうだろう?

過去35年間では、借入金額の増加が著しく、借入金額の中央値は1000万円以上も増加した。一方、足元5年間では、世帯年収「700万円未満」は2023年で、「700万円以上」は2022年で中央値が最も高くなり、2024年では下がる結果となった。ミライ研では「借入金額中央値はピークアウトし、高額化の波に歯止めがかかった可能性がある」と分析している。

住宅ローンの借入金額(世帯年収別)「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)
住宅ローンの借入金額(世帯年収別)「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)

次に、【返済比率】(ここでは世帯年収に占める年間返済額の割合)を見ると、過去35年間のうち、2020年までは「返済比率1~3割まで」がおおよそ90%で推移していたが、2021~2024年では返済比率1割、2割が減少し、4割や5割以上が増えている。これは、物件価格の上昇と変動型の低金利によるものだろう。足元5年間で見ても、「返済比率4割以上」が徐々に増加している。

住宅ローンの返済比率「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)
住宅ローンの返済比率「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)

住宅ローンの商品の変化による影響も

では【頭金】を見ていこう。過去35年間の前半は、「住宅金融公庫」の融資が全期間固定型の主流だったが、融資は物件価格の8割までとした時代があり、頭金2割が常識だった。加えて、低金利であれば、頭金がたまるまで待つ必要もない。そのため、過去35年間では、頭金0という借り方が増加してきた。一方で、金利上昇局面に入った足元5年間で見ると、頭金0の比率は減少傾向にある。

住宅ローンの頭金割合「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)
住宅ローンの頭金割合「1990~2024年」と「2020~2024年」(出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化」より転載)

次に、【借入期間】について見ていこう。過去35年間のうち2020年までは、「借入期間36年以上」はわずかであったが、2021~2024年では11.1%まで増えている。かつては借入期間の最長は35年というローン商品がほとんどだったが、近年、36年以上の超長期ローンが増えたことの影響もあるだろう。一方、足元5年間では2023年に21.0%まで増加した「借入期間36年以上」が、2024年には10.3%に減少するなど、金利上昇リスクを考慮した選択も見られるようだ。

最後に、「ペアローン」について見ていこう。過去35年間では、共働き世帯が増え、ペアローンの利用者が着実に増加。2021~2024年では「ペアローン」利用者が23.0%になった。これは借入金額の増加などの影響もあるが、ペアローンを積極的に扱うようになった金融機関側の姿勢による影響もあるだろう。足元5年間だけで見ても、ペアローン利用者が増加傾向にあり、ペアで借りてペアで返すスタイルは今後も続きそうだ。

住宅ローンの実態を「これまでの35年間」と「足元5年間」で比較してみると、長期間のトレンドと金利の潮目が変わった足元とで、違いがある点、ない点が浮き彫りになった。これは、金利の動向、物件価格の動向、金融機関のローン商品の多様化などの影響をさまざまに受けた結果だ。

住宅ローンの金利はこれから本格的な上昇基調に入る。上昇するとはいっても、変動型の金利は長期固定タイプのものよりもまだまだ低い。変動型にするのか、長期固定タイプにするのかは、長期間のマネープランや世帯ごとの家計マネジメントの考え方によって、変わるだろう。

住宅ローンは35年間などの長期間で返済するものなので、その間に金利は上がり下がりするだろうが、今の変化を借りる人がどう判断するかによって、住宅ローンの利用実態もこれまでとは変わっていくのだろう。

●関連サイト
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が住宅ローン利用の変遷についてアンケート結果を公表
三井住友トラスト・資産のミライ研究所:金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化


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