3月31日(月) 21:00
株式会社帝国データバンクの調査によると、2024年の飲食店倒産件数は 894件となり、前年(768件)から約16.4%増加して過去最多を更新しました。これは新型コロナ感染拡大期だった2020年の780件を上回る水準です。
コロナ禍では国や自治体による融資・協力金などの支援策で一時倒産が抑えられ、2022年には452件と大きく減少していましたが、支援策の終了後に倒産件数が再び増加に転じています。
業態別に見ると、倒産件数が最も多かったのは「酒場・ビヤホール)の212件で、次いで「中華料理店、その他の東洋料理店」が158件、「西洋料理店」が123件と続きます。全11業態のうち5業態で、過去最多の倒産件数を記録しました。
また、倒産した飲食店の8割以上は、負債1億円未満の小規模事業者が占めており、規模の小さい店舗ほど厳しい状況に追い込まれていることが分かります。
倒産が増加した背景には、以下のような複合的な要因があります。
2020~2021年に実施された無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」や協力金など各種支援策が2023年前後に終了し、多くの飲食店で元本返済や通常利息の支払いが本格化しました。これにより資金繰り負担が一気に増大し、経営体力の弱い店舗が倒産に追い込まれやすくなったことが想定されます。
円安や世界的なインフレの影響で食材の仕入価格や光熱費が大幅に上昇し、店舗経営を圧迫しました。特に個人経営の小規模店ほど物価高によるコスト増に耐えられず資金繰りに行き詰まるケースが増えています。必要な値上げができないまま原価率が悪化し、赤字に陥る店舗も少なくありません。
コロナ禍から経済活動が正常化する中で外食産業の求人が増えましたが、慢性的な人手不足は依然続いています。人材確保のための賃上げや待遇改善による人件費負担の増加が利益を圧迫し、耐えきれず廃業する例もあります。特に最低賃金の引き上げにより、人件費コストの増加幅が小規模店には重い負担となりました。
物価上昇に伴い消費者の節約志向が強まり、外食を控えるなど安価な選択肢へ流れる動きが見られます。実際、2023年の家計消費における食費は物価高や所得減少の影響で減少しており、消費者の財布のひもは固くなっているようです。こうした需要面の伸び悩みも中小飲食店の収益回復を妨げ、倒産増加に拍車をかける一因となりました。
コロナ禍の特別融資終了後、多くの飲食店が金融機関からの通常融資や自主的な資金繰りに頼らざるを得ない状況です。民間銀行などによるゼロゼロ融資の返済開始で毎月の債務負担が増す中、追加融資を申し込む企業もあるようです。
しかし銀行側も業績不振の飲食店への融資には慎重になっており、資金繰りの綱渡りが続いているのが実情です 。
一方で、政府や自治体による各種補助金・助成金制度も用意されており、設備投資や業態転換などに活用する動きも見られます。「事業再構築補助金」や「持続化補助金」などは飲食店でも申請可能で、新たな収益源確保や省コスト化の取り組みを後押ししています。
このように、公的支援と金融機関融資をバランスよく活用しながら資金繰りを維持していく工夫が必要です。
飲食店が厳しい状況を乗り越えるには、コスト管理の徹底と新たな収益源の確保が欠かせません。食材ロス削減や人員配置の見直しで無駄を省き、メニュー価格の適正化で収益を確保することが重要です。
また、独自メニューの開発やSNS・デリバリー強化で集客を図り、インバウンド対応を強化するなど、売り上げ拡大の工夫も求められます。こうした取り組みを積み重ねることが、今後の経営安定につながるでしょう。
株式会社帝国データバンク2024年通年の企業倒産件数についての集計結果【PRTIMES】
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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