【選抜高校野球】甲子園を席巻した浦和実の変則左腕・石戸颯汰 対戦相手が「レベルが違う」と唸った120キロ台の速球の秘密

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【選抜高校野球】甲子園を席巻した浦和実の変則左腕・石戸颯汰 対戦相手が「レベルが違う」と唸った120キロ台の速球の秘密

3月30日(日) 22:10

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後ろで守っていて、「なんで打たれないんだろう?」と思うことはありますか?

恐る恐る尋ねると、浦和実の遊撃手を務める橋口拓真は苦笑を浮かべてこう答えた。

「それはすごく思っています」

浦和実の試合を見ながら、いくつもの疑問が浮かんでは頭のなかをぐるぐると渦を巻いていく。

浦和実のエース・石戸颯汰photo by Ohtomo Yoshiyuki

浦和実のエース・石戸颯汰photo by Ohtomo Yoshiyuki



なぜ、打たれないのか?

どうして、このフォームにたどり着いたのか?

これほど頭を振っているのに、なぜコントロールがつくのか?

アクションの大きな投げ方なのに、毎回しっかりと再現できるのはなぜ?

120キロ台の速球に、どうして打者が詰まらされるのか?

疑問が解消されないまま、マウンドの変則左腕は強打者たちを打ち取っていく。

【すごいフォームのヤツがいる】浦和実のエース左腕・石戸颯汰は、今春のセンバツの話題をさらった。セットポジションから、右足のつま先を頭より高く上げる。上体をくの字に折って体重移動すると、再び頭を真っすぐに戻して、左腕を真上から振り下ろす。バックネット裏から見ると、体幹部がゆらゆらと波打つような動きをしたあとに、突然左腕が上から出てくる。初めて見た人は、誰もが度肝を抜かれるに違いない。

「入学して最初から、『すごいフォームのヤツがいるな......』と思いました」

遊撃手の橋口はそう証言する。

変則フォームに行き着いた理由は、「体が小さくて、力では抑えられないから」と石戸本人が明かしている。中学1年時には原型ができており、モデルになった選手はいないそうだ。

これだけ全身を大きく動かせば、同じ動きを再現するのは難しいのではないか。そんな疑問をぶつけると、石戸は屈託のない表情でこう答えた。

「いえ、練習していればできると思います」

もしかして打者を観察しながら、足を上げるスピードを変えるなど細工しているのではないか。フライを打ち上げる打者が多いため聞いてみたが、仮説はあっけなく打ち砕かれた。

「タイミングをずらすことはまったくしていません。同じフォームで投げています」

石戸の趣味は将棋だという。もしかしたら、将棋で培った「先を読む力」が投球に好影響を与えているのではないか。破れかぶれで聞いてみると、石戸は困惑した表情でこう答えた。

「配球はキャッチャーのサインどおりに投げているので......。サインに首を振ることもないです」

つかみどころのない受け答えに終始し、取材者としての力不足を痛感せずにはいられなかった。もしかしたら、石戸に打ち取られた打者たちも、こんな無力感を覚えたのかもしれない。

【18イニング連続無失点の快投】石戸はセンバツ初戦で滋賀学園を6安打完封に抑え込んでいた。滋賀学園の正捕手を務める小野心太朗(こたろう)に話を聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。

「気づいた時にはボールが手元まできているんです。昨年の近畿大会は技巧派の左投手が多かったので、石戸投手も『似たようなタイプだな』と思っていたんです。でも、対戦してみたら全然違いました。レベルが違う。自分たちの見積もりが甘かったです」

その後も石戸の快進撃は続いた。石戸の18イニング連続無失点の快投に支えられ、浦和実は初出場ながらベスト4に進出した。

レベルが違う----。滋賀学園の小野の言葉が、ずっと脳裏で繰り返されていた。

石戸とバッテリーを組む野本大智に「石戸投手のボールは、体感速度が速いのですか?」と尋ねると、野本は首をひねった。

「スピードはそこまで速くは感じないんです」

野本は「ただ」と言って、こう続けた。

「低めの球が垂れないんです。低めのボールになるかな、と思った球が垂れずにストライクになる。高めの球は伸びてくるので、フライが増えるのだと思います」

一方、遊撃手の橋口はこんな見方を示している。

「ショートから見ていると、ストレートとカーブが同じ軌道でリリースされて、ストレートはそのまま高めにいって、カーブはストンと落ちるイメージです。紅白戦で対戦しても、高めのストレートと低めのカーブにみんなつられていました」

そして、橋口は石戸の内面について、こう語っている。

「石戸はみんなが黙っていても、ひとりでも平気でずっとしゃべり続けているようなところがあって(笑)。試合前とか、強い相手でも、ひとりだけ緊張してないんです。あれはちょっとすごいなと思います」

【真価が問われる夏】3月28日、浦和実はセンバツ準決勝に臨んだ。相手は強打を誇る智辯和歌山である。

智辯和歌山はある「石戸対策」を練っていた。1番打者の藤田一波が明かす。

「中谷(仁)監督が(石戸の)投げ方を真似してバッティングピッチャーをやってくれました。右投手と左投手の違いはありましたけど、感じはつかめました。監督の(真似の)完成度はけっこう高かったですよ」

チーム全体では「淡白なフライアウトにならないよう、ライナーを徹底する」という方針が取られた。3番打者の山下晃平は「モーションに惑わされずに、リリースに集中するように言われました」と明かす。

智辯和歌山は1回裏に3安打を集中させて2点を先取。さらに3回裏には5安打に浦和実の守備の乱れも絡み、3点を追加した。

捕手の野本は「球の勢いは悪くなかった」と語りつつ、こんな実感を漏らしている。

「今日もよかったんですけど、前回、前々回のほうがよかった印象です。とくにコントロールが荒れてしまったので、強いチームになると通用しないんだなと思いました」

とはいえ、4回以降もピンチを背負いながら、無失点に抑えた浦和実バッテリーの粘りは見事だった。

この試合で4安打を放った智辯和歌山の藤田は、こんな感想を語っている。

「いい準備をしてきたので、しっかりととらえてチームに勢いをつけたかったんですけど、想像以上に石戸くんのボールが手元で来ていました。1打席目は差し込まれて、いい当たりではなかったんですけど、レフト前に落ちてラッキーでした」

浦和実は0対5で敗れ、春の旋風は終わりを告げた。

今や高校野球界で「石戸颯汰」の名前を知らない者はいないだろう。マークされる存在になってもなお、石戸は不思議なフライアウトを重ねることができるのか。

花咲徳栄、浦和学院、昌平、西武台、山村学園、春日部共栄など、埼玉県内だけでも石戸を攻略すべく闘志を燃やすチームは多いはず。夏にかけて、石戸颯汰という投手の真価が問われる戦いが繰り広げられそうだ。

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