3月28日(金) 20:10
「在宅勤務であっても、子どもを自宅で見ながら簡単に働けるわけではない」というのが当事者たちの声です。オクシイ株式会社の調査によると、未就学児を持つ親の約9割が、子どもと一緒に在宅ワークをすることに「困っている」と回答しています。
最も多かったのが、「仕事ができない・集中できない」という回答です。ほかにも、「子どもにTVやタブレットで動画などを長時間見せていることに罪悪感がある」といった悩みが挙げられています。
1歳や2歳の子どもからは特に目が離せません。静かに遊んでくれる時間は限られ、おむつ替えや食事の世話、昼寝の寝かしつけなど、細かい対応が必要です。テレビやおもちゃで気を引いたとしても、急に泣き出したり、危険な行動を取ったりすることもあります。
子どもにもよりますが、もう少し成長したとしても、子どもが1人で長時間遊べるわけではありません。親が近くにいることで、どうしても「自分に構ってほしい」という気持ちが出てくるため、仕事をしていても頻繁に呼ばれる状況になります。
在宅勤務で大きな課題となるのが、会議や打ち合わせです。ビデオ会議の最中に子どもが部屋に入ってくるのではないかと気になり、会話に集中できないこともあります。特に、大事なプレゼンテーションがある場合などは、子どもをどうするかを事前に考えなければならず、結局仕事に十分な時間を割くことが難しくなってしまう可能性があるのです。
在宅勤務をしている場合でも、保育所は使えます。内閣府・文部科学省・厚生労働省の連名通知で、「在宅勤務者も保育所の利用対象であること」を明確に示しているからです。
また、保育所の入園優先度を決定する際に、「居宅内での労働か、居宅外での労働かという単純な基準だけで判断するのは望ましくなく、個々の保護者の就労状況を十分に把握した上で判断すべきである」ともしています。
さらに、この通知には「居宅内で労働しているからといって必ずしも子どもの保育を行いやすいというわけではない」という記載もあります。つまり、在宅勤務だからといって育児が容易とは限らない、という政府の見解が示されているのです。
次に、上司の「保育料が浮いていいね」という主張は、本当に正しいのかを考えてみましょう。確かに、3歳未満の子どもを保育所に預ける場合、世帯年収によって月4000円~7万円程度の保育料がかかります。そのため、「在宅勤務なら子どもを家で見れば保育料が浮く」という考え方も、一理あるかもしれません。
とはいえ、3歳以上の子どもについては、幼児教育・保育の無償化制度により、認可保育所の保育料は無料になっています。そのため、「保育所代が浮いていいね」という主張は、3歳以上の子どもを持つ家庭には当てはまりません。
「在宅勤務なら保育所代が浮いていい」という考えを持つ人はいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。在宅勤務であっても子どもが家にいると仕事に支障が出ると感じている人は多く、政府も「在宅だから子どもを家で見るべき」とは考えていません。
むしろ、在宅勤務者であっても保育の必要性があることを認め、保育所の利用対象としているのが実情です。
また、3歳以上の子どもは幼児教育・保育の無償化制度により、もともと保育料はかかりません。「在宅勤務なら保育料が浮いて得をする」というのは、そもそも成り立たないケースが多いのです。
これらのことから、在宅勤務だからといって、保育所を利用することに後ろめたさを感じる必要はありません。仕事の時間は仕事に集中し、子どもをお迎えしてからの時間を一緒に過ごすことで、親子ともに充実した日々を送りましょう。
国土交通省 令和5年度 テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-
オクシイ株式会社 <子どもと一緒に在宅ワーク>の実態調査
厚生労働省 「子ども・子育て支援法に基づく支給認定等並びに特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業者の確認に係る留意事項等について」の一部改正について
厚生労働省 多様な働き方に応じた保育所等の利用調整等に係る取扱いについて
千葉市 令和6年度保育認定に係る利用者負担額
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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