新作『ミッキー17』が公開中。製作者が分析するポン・ジュノ映画の魅力

新作『ミッキー17』が公開中。製作者が分析するポン・ジュノ映画の魅力

3月29日(土) 3:00

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『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』が公開されている。2000年に韓国で長編映画デビューを果たしたポン監督はヒット作を次々に手がけ、2013年には『スノーピアサー』で海外に進出した。そこから海外作品での“伴走者”になっているのが映画製作者のチェ・ドゥホだ。

彼は語る。「これまでに積み重ねてきた経験のすべてが『ミッキー17』に結集しました」

チェ・ドゥホがポン監督に最初に会ったのは、まだ監督が長編デビューする前。その後、ふたりはそれぞれキャリアを積み、2011年からポン監督の英語作品でタッグを組むようになった。

本作の主人公ミッキーはある出来事を機に追い詰められ、逃げるように地球を脱出して“何度も生まれ変わる夢の仕事”に就く。しかし、それは過酷な環境に放り込まれて死んではまた生き返る仕事だった。過酷な労働をさせられ、死んでも誰も気にしない。そんな状況下で彼は逆襲にうって出る。

「本作はワーナーがすでに原作の権利を取得していて、(映画制作会社の)プランB経由で僕たちに話が来たんです。興味深いと思ったのは、このストーリーは最初から監督が情熱を傾けられるようなテーマを含んでいたことです。原作とは少し違って監督はワーキングクラスの人物を主人公にした。これがとても重要だったと思っています。

ミッキーも、劇中に登場するクリーパーのママも、グエムル(『グエムル-漢江の怪物-』に登場した怪物)もすべて監督の姿が投影されているのではないかと僕は考えているんです。彼の映画にはいつもシンボリックなものを僕は感じています」

ポン監督の作品ではいつも“声を持たない者たち”の物語が描かれる。社会からはみ出てしまった人、無視されたり、置いて行かれてしまった人たちが、予想もしなかった状況に放り込まれることで物語が動き出す。ポン監督は筆者のインタビューに「そういうストーリーに惹かれてしまうだけなんです。もしかしたら、食事や音楽の“好み”に近いのかもしれません」とかわしたが、チェ・ドゥホはそこに“ポン・ジュノ自身の影と葛藤”を見ている。

「彼の作品は、自分自身がアーティストとしていかに生き延びるのか?そんな彼の葛藤が描かれているのではないかと感じるんですよ。韓国というのは周囲を大きな国に囲まれた小さな国だというのもありますし、映画をつくる過程で彼は小さな存在として、大きな力と向き合わなければならない。彼の映画はいつも主人公が不可能だと思えるようなことをやらされる/やらざるをえない物語が多いけど、結果的には彼の葛藤を描いているのだと思います」

ポン監督は韓国で圧倒的な支持を集め、自国以外の環境に身を置き、海外の俳優やスタッフと仕事をしながら、着実に進化を遂げてきた

「彼は英語作品を手がける上で少しずつステップを踏んできました。まず最初の『スノーピアサー』では韓国人俳優も出演していて、韓国語のセリフもありました。次作の『オクジャ/okja』では、ほとんどの撮影を韓国で行っています。そして本作ではついに物語の舞台は地球外になり、撮影は海外(本作はイギリスで撮影された)で行われました。だから、この映画は監督がアジアから来たという意味では全カットがアジア的かもしれないですし、ある意味では監督の出身地とはまったく関係のない映画になった、とも言えます。

僕はポン監督とよくアン・リー監督の話をするんです。台湾出身の彼は『アイス・ストーム』(1997)で1970年代のニューヨーク郊外で暮らす家族のドラマを描ききった。台湾出身の彼がニューヨークに住んでいたのは、ほんの数年らしいんです。脚本を書いたジェームズ・シェイマスさんの力もあったと思いますが、なぜ、アン・リー監督はあの時代のことがここまでわかって、あのような映画を撮ることができたのか?『不可能はないのだとアン・リー監督が示してくれたんだ』と監督は言っていました。

そういう意味では彼はいつも自分のやり方で映画をつくってきた人ですし、これまでの作品で積み重ねてきた経験のすべてが『ミッキー17』に結集したと思います」

彼は製作者として本作の完成までの全過程に伴走し「監督以外で最もこの映画をたくさん観ているのは僕だと思います」と笑う。

「撮影現場にいましたし、編集過程も、完成版もIMAXも何もかも繰り返し観ているのに、それでもこの映画は観るたびに新しい発見があるんです。ポン・ジュノ監督はこれまでのキャリアの中で扱ってきたテーマを手放さずに、次の映画でさらに考えて深く掘り下げているのではないかと思います。それまでのパズルのピースを、新作をつくるときに再構成しているのです」

『ミッキー17』
公開中
(C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights

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