洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフであるサムゲタン市川が、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第10回は、ジャンルを問わず多くの映画に出演する怪優ブラッド・ドゥーリフの魅力に迫る…ということで、キャラクターの魅力を中心にした普段の連載とはひと味違うものに。ドゥーリフのファンを公言する市川が熱っぽく綴った“ラブレター”を、とくとご覧あれ!
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■ブラッド・ドゥーリフが75歳になったって?祝わねば!
みなさんこんばんは、サムゲタン市川です。さて、栄枯盛衰を繰り返すホラー界隈のなかで30年以上にわたり人気を維持し、老若男女問わず愛され続けているキャラクターといえば、そう、『チャイルド・プレイ』(88)のチャッキーです。殺人鬼の魂が宿り殺人を重ねる…という恐ろしい人形ながら、かわいらしい見た目をしており、そのギャップにやられてしまいますね。そしてなにしろ人形というのは、主にフィギュアを紹介するこの連載において相性が抜群です。
いくら殺されようとも魂とその器がある限り蘇る、永遠に等しい命を手にしたチャッキーですが、最新作であるドラマシリーズ「チャッキー」(21~24)まで約36年間にわたり声を当て、生前の姿を演じ続けてきたブラッド・ドゥーリフは、去る3月18日で75歳に。おめでとう!
実は私、演技が上手いと思う俳優は?と訊かれたら必ず答える一人がドゥーリフなのです。このたび「嗚呼…どうしてもドゥーリフについて書きたいッ!」という思いが爆発したため、今回は普段の連載と趣向を変え、俳優自身の魅力を解き明かしながら、演じたキャラクターの魅力にも迫ってみたいと思います。
それではここからは、私が個人的に推したい作品を彼の3つの魅力、ビジュアル・声・演技、それぞれに紐づけて紹介していきます!
■『デスマシーン』…まずビジュアルがいい!
1950年3月18日生まれのドゥーリフは、本格的な映画初出演となった『カッコーの巣の上で』(75)で精神疾患のある青年ビリー役を演じ、若干25歳にして第48回アカデミー賞で助演男優賞にノミネートされるなど、演技派としてキャリアをスタート。以降、半世紀にわたって主にバイプレーヤーとして活躍してきたため、出演作が多いわりにあまり主演を張っていないのが彼の特徴です。
そのなかでも、『ブレイド』(98)のスティーヴン・ノリントンが監督デビューを飾った『デスマシーン』(94)は数少ない主演映画の1本。ここでドゥーリフが演じている科学者のジャック・ダンテは、ビジュが爆発しまくっています!
ダンテの登場シーンは暗いことが多いのではっきりと視認することは難しいのですが、右手の人差し指と中指には鉤爪のような、薬指にはオフセットレンチを彷彿とさせる独特な形状をしたアーマーリングを装備し、左耳には小さなテディベアに似たイヤーチャームを着けています。足首程まである丈の黒いレザーのロングコートを身にまとい、鳥らしきイラストが描かれたシャツとダメージジーンズという、科学者らしからぬパンク寄りのファッションがカッコいい!スプリング付きの目玉が飛び出るメガネをかけてふざけるギャップもたまりませんね。
そしてなんといっても、胸元まで伸びる少しボサついたロングヘアが最高なのだ!首を傾げたり髪を払う際に前髪がひと束だけ顔にかかるのがとってもセクシー。攻撃的で子どもじみた言動が目立つキャラクターですが、ふとしたカットに色気を感じるドゥーリフのビジュのよさにうっとりしてしまうこと請けあいです。
■『エクソシスト3』…声色も絶品!
カルト的人気を誇る名作『エクソシスト3』(90)でドゥーリフが演じたのは、15年前に刑死した“双子座殺人犯”ジェームス・ヴェナマン。本作では『エクソシスト』(73)でデミアン・カラス神父を演じたジェイソン・ミラーが、自らを“双子座殺人犯”だと称する“患者X”を演じており、主人公であるキンダーマン警部補(ジョージ・C・スコット)の眼には“患者X”つまりカラス神父として映り、我々観客の眼には“双子座殺人犯”にも映る…という2人1役の特殊なキャラクターになっています。
“患者X”は薄暗い独房に収容されており、拘束衣に身を包まれたままベッドに腰を掛けて会話するため、その場を動くことはほとんどありません。それゆえ声が演技の大半を占めることになるわけですが、ドゥーリフの声がまた絶品なんです…!
ミラーのトーンが一定で地を這うような低い声もカッコいいのですが、ドゥーリフの少し抑揚をつけた空気を震わす声と皮肉めいた言葉遣いがたまりません。キンダーマン警部補の親友ジョセフ・ダイアー神父の殺害を仔細に語る場面では、キンダーマン警部補が拳を握り締めるのを見て、挑発するように声のトーンを上げていきます。こうした声色の使い分けの上手さもドゥーリフの好きなところです。
■『スポンティニアス・コンバッション人体自然発火』…表現力に脱帽!
不気味なキャラクターを演じることが多いドゥーリフですが、不運な役もよく似合うんです。トビー・フーパー監督の『スポンティニアス・コンバッション人体自然発火』(90)で演じたサム・クレイマーは、突如として人体自然発火現象(SHC)が発現し、抑えきれなくなっていく炎と闘いながらも現象の究明や自身の出生のルーツを解き明かしていくというキャラクター。
どうやら発火のトリガーは怒りのようですが、隠された真実のすべてがクレイマーを憤らせるような、それはもう本当に酷く可哀想なものばかりなので、諸悪の根源に対する憎しみや不条理な生い立ちへの悲しみ、身体が燃え盛り続ける苦しみを一身に背負うことに。
このような“負”の感情を表現させたらドゥーリフは天下一品です。激昂した形相は不動明王さながらの迫力ですし、恋人リサのことさえ信じることが出来なくなっていくさまを表現した演技のなんと悲しいことか。彼が響きわたらせる絶叫はまるで断末魔のように苦しい響きがあり、強く胸を打ちます。
『カッコーの巣の上で』での華々しいデビュー以降は、いまいちこれといった賞に恵まれていないドゥーリフですが、特に本作での表現力は「オスカーに値する」という声もあり、ファンとしては再評価を願ってやみません。
■『チャイルド・プレイ』…結局全部が好き!
そんなドゥーリフのビジュアル、声、演技のすべての要素が堪能できる代表作こそが、『チャイルド・プレイ』で演じた“チャッキー”ことチャールズ・リー・レイです。
いまやその知名度はホラーの枠を超え、世界的なカルチャーアイコンといって過言ないほどですが、実際に本編を観て、ドゥーリフが演じたレイのことまで知っているという方は意外と少ないかもしれません。本稿では少しこのあたりをおさらいしてみましょう!
“湖畔の絞殺魔”と呼ばれる殺人鬼だったレイは逃亡中、仲間に裏切られ置き去りにされてしまい、脚を撃たれながらも玩具店に逃げ込むことに。店内での銃撃戦で致命傷を負ったレイはグッドガイ人形に魂を乗り移し、チャッキーとして人形のふりをしながら邪魔な人間を殺して回るのです。
チャッキーの姿ももちろんかわいくて好きなのですが、私はやはりレイが大好きなんだ…。登場シーンこそ短いものの、キャラクターとしての魅力は申し分なし。髭はなく、スーツの上にコートとマフラーを着用しており、身なりの整った色男であることがお分かりになられることでしょう。肌が綺麗なのもポイント高め!銃撃戦のさなかで車のボンネットを飛び越える身体能力もイカします。
仲間が乗るバンを「俺を置いてかないでくれ」と情けない声を上げながら追いかけたり、胸を撃たれ死に瀕した際には刑事に対し「貴様を殺してやる!なにがあろうともな!」と怒りで身を震わせながら涙目で罵声を飛ばしたりと、ドゥーリフの幅広い感情表現の引きだしには感服するばかり。
高い攻撃性を持っていながら人間臭い部分を捨てきれず、それゆえの弱みが垣間見える…みたいなキャラクターが大好きなんですが、ドゥーリフはそのあたりの切り替えが本当に上手くって、レイはそのテクニックがもっとも活かされたキャラクターではないかと思います。
■フィギュア紹介の前に…やっぱりチャッキーも好き!
さて、長々とドゥーリフの魅力を語っておいてなんですが、彼自身は目立ったアクションフィギュア化がされておらず。世界的なドゥーリフ不足、ここに極まれり…。ですのでここからは、気持ちを切り替えて彼と一心同体であるチャッキーのことを改めて紹介しながら、ドゥーリフ不足の渇きを癒していきましょう。
チャッキーというキャラクターのミソは、一見するとただの人形に見えながら、どの瞬間も殺人鬼レイの意識を明確に持っているところだと思います。6歳の男の子であるアンディに両腕で抱きかかえられたり、同じベッドで寝たり、頬にキスをされたり、あげくのはてには腹にパンチを喰らわされても一切表情を変えずに人形のフリに徹します。
屈辱に耐えながらも正体がバレないように殺意を押し殺しているんだなぁ…と思うと、チャッキーを見る目も変わってきますよね。アンディの母カレンに「正体を現さなければ燃やす」と脅された際には、これまでの鬱憤を晴らすようにブチ切れながら襲ってきます。このアグレッシブさとのギャップよ!
やっぱりみんなそんなチャッキーが大好きなようで、各メーカーも愛にあふれた立体化アイテムを展開してくれています(俳優の肖像権と関係がないから立体化しやすい、という大人の事情もゴニョゴニョ…)。
■Youtooz
どんなキャラクターも、Youtoozにかかればにっこり笑顔。殺人鬼の魂が入った人形でさえこの通り。後ろ手に鋏を持っていたりはしませんよ、えぇ。左足を蹴りだしたポージングがかわいいけれど、その笑顔にはどこか陰りがあるような…?全高約10cmと丁度良いサイズ感でお部屋のインテリアにも。
■メディコム・トイ
メディコム・トイが手掛けるMAFEXシリーズからもチャッキーが登場。グッドガイ状態を含む計3種の頭部パーツに加え、ファブリック素材のオーバーオールを着用し、なんとグッドガイ人形の外箱も同スケールで付属するコレクターズ・アイテム。なんと眼球可動で表情を変えることもできちゃうのだ。バットやものさし、ハンマー、2種類のナイフなど凶器も盛り沢山で『チャイルド・プレイ2』(90)のあらゆるシーンを再現することが可能に!
■ネカ
アクセサリーパーツの豊富さならばネカも負けちゃあございません。なんと!『チャイルド・プレイ』のグッドガイ人形や『チャイルド・プレイ2』の本性を現した顔、『チャイルド・プレイ3』(91)終盤に顔面の左側を抉られた通称 “ピザフェイス” に『チャイルド・プレイチャッキーの花嫁』(98)にてティファニー・ヴァレンタインによって復元された継ぎ接ぎ顔、その4種すべてが付属し、各作品に登場する印象的な凶器の数々もついてくる、まさにアルティメットな逸品。約10cm程度のやや小さめサイズなので、デスクや棚に飾ってもかわいいかも。
■メズコトイズ
メズコトイズのMDSメガスケールほど、チャッキーの立体化にもってこいなシリーズはないでしょう。メガなだけあって約38cmのビッグサイズ!赤毛の彩度や衣服、スニーカーの靴底に至るまで徹底的な再現がなされ、さらになんと背中に配置されたボタンを押すことで劇中のセリフが流れだすうれしい仕様も。純真な明るい笑顔がかえって怖く感じさせる、ファン垂涎の逸品!
■引退後も、チャッキーの歴史は続いていく!
昨年4月には、俳優業をすでにセミリタイアしていることを公表したドゥーリフ。その時は悲しみに暮れたものですが、同時に「『チャイルド・プレイ』関連のプロジェクトは例外」だと言ってくれて非常にうれしかったです。その言葉通り、リタイア宣言後に放送された「チャッキー」シーズン3にも出演し、チャッキーの声のみならず顔出し出演でもファンを喜ばせてくれました。どうかいつまでも元気で、あの笑い声を聞かせてほしいものですね。それでは、また次回お会いしましょう!
文/サムゲタン市川(豆魚雷)
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