森 大翔2MANライブ『響演』崎山蒼志を迎えた『響演』は個性が光るガチな弾き語りツーマンだった

森 大翔

森 大翔2MANライブ『響演』崎山蒼志を迎えた『響演』は個性が光るガチな弾き語りツーマンだった

3月28日(金) 9:00

提供:

Text:石角友香Photo:関口佳代

ギタリスト&シンガーソングライターの森 大翔が、今年1月から自身初の弾き語りツアー「響縁」を全国7カ所で開催。新しい表現のベクトルを見せたその先にかねてより親交のある崎山蒼志を迎えたツーマンライブ『響演』を3月16日、東京・渋谷WWWで行った。ともにギターの弾き語りにとどまらずDTMでの曲作りを行い、ジャンルを越境する作品性を持ち、かつ、崎山が2002年、森が2003年生まれの同世代で、10代デビューしていることも共通点だ。だが、アウトプットされる音楽性はそれぞれの色を有し、その部分でも非常に興味深いガチな弾き語りツーマンとなった。

先攻の崎山がふらりと(そう表現するほかないニュアンスで)ステージに現れる。満員のフロアから大きな拍手が起こる中、空気に切り込んでいくような鋭くも厚いストロークの「逆行」でスタート。バンドアレンジのような疾走感の根源を見る思いだ。高い緊張感を保ち、次に鳴らされた豪雨のごとくギターに沸き立つような歓声が上がり、代表曲「Samidare」では、身ひとつで映像を喚起し別世界にワープさせる彼の集中力が際立つ。独特なコードワークの「踊り」まで駆け抜けると、森と観客に謝辞を述べた。

そして10代の不遜なほどの超然とした気持ちが蘇る「国」、続いて大江千里の「MAN ON THE EARTH」のカバーを試みるのだが、崎山曰く“花粉の権化”のせいで歌詞が飛んだらしく、曲順を変更。次の曲の説明を兼ね、上京後4年間、初めてのひとり暮らしが良くも悪しくも自分と向き合わざるを得ない時間だったことを語り、「燈」を披露。TVアニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」EDでなじみの曲だが、弾き語りではより歌詞とメロディが際立ち、トラップ調のタイム感に乗るラップに近い押韻も明快に聴き取れて、MCで明かされた時期の心情がまっすぐ飲み込めた。

仕切り直して再び「MAN ON THE EARTH」のカバーに挑戦。80年代のシンセポップに近い原曲のポップ要素をアコギのコード感に変換してはいるが、アンビバレントな思いをはらむラブソングという意味合いがかなりまっすぐ届いた。そしてラストは先ほどとは別アレンジでの「Samidare」にアプローチ。アコギ弾き語りの定石を超えるシューゲイザーな音の厚みとラウドな響きに圧倒される。もちろん、その音圧は人力だ。短いセットかつ弾き語りのセットだからこそ、崎山というアーティストの曲調の振り幅や奏法の変化を端的に感じることができた。まさにツーマンの闘い方だ。

一方、後攻の森はひらりとステージに舞い込んだ風のように高速フレーズを盛り込んだ長めのイントロで、インストゥルメンタリストとしての自己表現も見せているかのよう。まさに1曲目に選んだこの「台風の目」にふさわしい弾き語りのアレンジだ。音源ではピアノが印象的なこの曲をストロークで加速させ、「もっと足掻いてやろう」と歌う、人としても表現者としてもいい試行錯誤をしていく意思をライブアレンジにも投影する。そしてミュート音をループさせながらギターを持ち替え、ミディアムナンバーの「明日で待ってて」へ。大きなグルーヴを持つことは共通しているが、弾き語りで届けることで、よりクラシックやジャズ、ニューエイジのニュアンスが際立つのはやはり彼のギタリストとしての素地からだろう。歌メロに寄り添うようなアルペジオも心地よい。

MCでは3年前の崎山との出会いや、喋りたい人をゲストに呼んでいいと言われ、ラジオ番組で崎山を指名したこと、さらには一緒にスカイツリーに遊びに行ったり、下北沢の古着屋では話しかけてくる店員をふたりしてかわし、ジャズ・フュージョンのTシャツを探したものの買えなかったことなど、なぜこのふたりのツーマンが実現したのかが理解できるエピソードを聞かせてくれる。その都度、意外だったり納得した声がフロアから上がり、よりこのツーマンを深く楽しめるようになった印象だ。

ルーパーで4つ打ちのビートを出し、クラップが鳴り響くと、シンガロングが起きる「アイライ」。ステージ前方まで歩み出て演奏と表情でもオーディエンスを盛り上げていく。「あったまってきてますね。もうちょっと行けそうだね!」と、バンドセットでも弾き語りでも同じぐらいのテンションでフロアと対峙する森。激しいストロークやリフの連続でチューニングが大幅に狂ったようで、丁寧に整えながら続く曲の紹介も兼ねて「OK、ブルース好きな人いる?崎山蒼志もブルーだぜ!」と、アコギの音量とは思えない太い音でブルース・スケールのフレーズを弾き、SNSなど情報過多の現代的の憂鬱を歌う「オテテツナイデ」で、00年代生まれのブルースを炸裂させる。サビではシンガロングを促し、フロアもそれぞれのノリで歌い、クラップで憂鬱な気分をぶっ飛ばしていた。

中盤のMCでは初の弾き語りツアー『響縁』でのオーディエンスとの距離の近さに、自分が人によって生かされていることや解けていく感覚があったと話し、言葉を歌い音楽することの意味を再認識したようだ。「群青日記」に繋ぎ、森が歌うことの意味をごく自然に届けるいい流れを生んでいた。

さらにツーマンライブは「ふたりのアーティストどっちもおいしいところを見ることができる、まるでメロンパンの上のとこみたいに」と笑わせ、「森 大翔のファンには崎山くんのバンドセットも見てほしい」と話した。もちろん逆も然りだろう。因みに森が崎山にいだく感想はドラゴン。しなやかなのに表皮は鎧みたいな感じという形容が言い得て妙だった。

続く「たいしたもんだよ」では洒脱なリフとラップ調のフロウに彼の天性のリズム感の良さを再確認し、そのノリを引き継ぐようにギターのボディをパーカッションに見立ててのソロに加え、ミュートカッティングのループがビートの役割をする「大都会とアゲハ」の森流ミクスチャーに突入。クラシックもラテンもブルースも顔を出すソロを弾き、中にはなじみぶかい「エリーゼのために」の音階も聴こえてくる。弾き語りならではのアドリブの瞬発力と、この曲がそもそも持つ混沌が掛け合わさった。ギターソロからダンスミュージックのビートに言葉数の多いメロディが乗る「剣とパレット」がスリリングにスタートする。イントロでダックウォーク、背面弾きも盛り込んで、およそスーパーギタリストのアクション大全といった趣き。弾き語りライブでここまでエンターテイメントに昇華できるアーティストを今のところ私は知らない。

森が袖に下がり、マイクが2本セットされ、“もりそーし!”という合体ワザのコールも起こる中、ふたりが登場すると今日一番の拍手と歓声が起こる。喋る替わりにしばらくギターで会話するふたり。「曲作れそう」と言う崎山にフロアから期待の声が飛ぶ。アンコールはまず森のリクエストで崎山の「ソフト」を初披露したのだが、小気味いいカッティングは共通しつつ、ギターサウンドや声の違いも面白く、人対人から発生するグルーヴを目の当たりに。ラストは森の「いつか僕らは〜I Left My Heart in Rausu〜」で、ふたりが弾くアルペジオはアコギならではの音が鮮烈。森の曲なので、部分部分に彼がオブリガートを入れるのは当然なのだが、空間の捉え方の違いも見ていてはっきりわかるものがあった。音楽家として互いに影響し合うふたりが同じステージに立つことで発揮されたおのおのの個性。オーディエンスの立場としても非常に貴重な機会になった。

なお、森はワンマンが6月6日(金) に東京・渋谷 WWW Xにて決まっている。

<公演情報>
森 大翔 弾き語り2MAN『響演』

2025年3月16日 東京・渋谷WWW
出演:森 大翔 / 崎山蒼志

セットリスト

崎山蒼志
1. 逆行
2. Samidare
3. 踊り
4. 国
5. akuma
6. ブラックリバーブ
7. 燈
8. MAN ON THE EARTH(大江千里カバー)
9. Samidare

森 大翔
1. 台風の目
2. 明日で待ってて
3. アイライ
4. オテテツナイデ
5. 群青日記
6. たいしたもんだよ
7. 大都会とアゲハ
8. 剣とパレット

アンコール(森 大翔 / 崎山蒼志セッション)
1. ソフト
2. いつか僕らは〜I Left My Heart in Rausu〜

プレイリスト公開中
・弾き語り2MAN『響演』
https://a-sketch-inc.lnk.to/Yamato_Mori_2men_kyouen

・弾き語りツアー『響縁』
https://a-sketch-inc.lnk.to/Yamato_Mori_kyouen

<ライブ情報>
森 大翔LIVE『A day of YAMATO 69/25』

2025年6月6日(金) 東京・Shibuya WWW X
開場18:00 / 開演19:00

【チケット情報】
一般スタンディング:4,500円(税込)
U-23 スタンディング:3,500円(税込)
※ドリンク代別途必要
★3月30日(日) 23:59まで先行受付実施中
https://w.pia.jp/t/yamatomori-t/

森 大翔 公式サイト:
https://www.yamato-mori.com/

ぴあ

エンタメ 新着ニュース

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ