オレも行って手伝うからビール飲ましてくれ――っ

オレも行って手伝うからビール飲ましてくれ――っ

3月14日(金) 8:00

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1994年『漫画ゴラク』にて連載を開始、最新56巻が絶賛発売中!累計発行部数800万部を記録するラズウェル細木の長寿グルメマンガ『酒のほそ道』。主人公のとある企業の営業担当サラリーマン・岩間宗達が何よりも楽しみにしている仕事帰りのひとり酒や仕事仲間との一杯。連載30周年を記念し、『酒のほそ道』全巻から名言・名場面を、若手飲酒シーンのツートップ、パリッコとスズキナオが選んで解説する。自分史上ナンバーワンのビールを飲むシチュエーションとは。この世でもっとも不要なことのひとつとは。

「オレも行って手伝うからビール飲ましてくれ――っ」

『酒のほそ道』38巻第3話「雪おろしのご褒美」©ラズウェル細木/日本文芸社

飲み仲間の竹股の出身地は山形の豪雪地帯。実家の兄が入院中につき、今年の冬は雪おろしを手伝うために実家に帰るという。

それを聞いて、大変そうだな〜と反応する宗達と斎藤。ところが竹股が「だけど雪おろしが終った直後に飲むビールがすばらしくうまくてさ」と言うと、宗達の表情が一変。続く「全身汗びっしょりになってるからな そのうまさは自分史上ナンバーワンだな」というセリフを聞き、「オレも行くっ!」と反射的に叫ぶ。うまいビールが飲めるというだけの理由で、山形行き、さらにハードな雪おろしを手伝うことを即決できる男。さすがだ。

ただし当然、初心者の宗達はあまり役に立たず、序盤でリタイヤして家のなかに避難。作業を終えて真にうまいビールを飲む竹股を見て、「い、いいなあ…」とつぶやくばかりなのだった。

「ちょっと練習しようか?」

『酒のほそ道』38巻第10話「花見の場所取り」©ラズウェル細木/日本文芸社

新入社員が会社の花見の場所取りをするシーンは、サラリーマンが登場する漫画の定番のひとつだ。

今年は若手の小篠がその役で、昼過ぎから場所取りに行く予定らしい。それを知った宗達は「オレもつき合うよっ」と声をかける。なんていい先輩なんだと思うかもしれないが、実は午後の外回りの予定が相手の都合でキャンセルになり、予定がポッカリ空いてしまったからというのが真相。つまりはサボりというわけだ。

シートにごろりと横になって桜を見上げる宗達。その横には、手際のいい小篠がすでに手配した潤沢な酒類がある。となれば当然、フライングで一杯やりはじめてしまいたくなるのが酒飲みというもの。そこで宗達の言い放ったセリフ「ちょっと練習しようか」が、せめてもの言い訳的で味わい深い。花見で酒を飲む“練習”なんて、この世でもっとも不要なことのひとつだろう。しかしながら、その背徳的なうまさは容易に想像できてしまう。

結果、花見が始まるころには寝てしまい、事情を知らない課長に「よっぽど疲れているんだろう」と心配までさせる始末。罪な男だ。

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次回「小さなシアワセの見つけかた『酒のほそ道』の名言」(漫画:ラズウェル細木/選・文:スズキナオ)は3月21日みんな大好き金曜日17時公開予定。

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Credit:漫画=ラズウェル細木/選・文=パリッコ
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