3月13日(木) 18:50
クリーニング業界は、近年の経済状況の変化や消費者の生活の変化により、業界全体が大きな転換期を迎えているといえます。厚生労働省の「令和5年度衛生行政報告例の概況」によると、全国のクリーニング店舗数は年々減少傾向にあります。
この背景にあると考えられているのは、後継者不足や経営難、大型チェーン店やコインランドリーの台頭などです。
かつては、スーツやワイシャツなどのビジネス衣料がクリーニング店の主な収入源でしたが、近年のファッションのカジュアル化やリモートワークの普及により、需要が減少していることも関係しているといわれています。
大手クリーニング業者は豊富な資本力を生かし、既存店の吸収・合併などにより出店を進めています。一方、中小のクリーニング店は資本力が不足しており、競争が激化する中で淘汰されるケースが増えるなど、二極化が進んでいるといえるでしょう。
クリーニング代の値上げには、原材料費の上昇や人件費の増加など、複数の要因があると考えられます。
クリーニングに不可欠な洗剤や仕上げ剤などの多くは、石油を原料として作られています。世界的な原油価格の上昇により価格が高騰したことで、クリーニング代に影響が及び、値上げを余儀なくされているのです。
また、近年では環境への配慮から、より高品質で環境負荷の少ない洗剤の使用が求められるようになったこともコスト増加の一因となっているでしょう。
クリーニング店で使用する洗濯機や乾燥機、アイロンなどは多くの電力を消費する機器です。電気代の上昇はコストの増加につながり、クリーニング業界に大きな打撃を与えています。
さらに、最低賃金の引き上げや人手不足により、クリーニング業界でも人件費が上昇しています。熟練の技術を要する仕上げ作業など、機械化できない部分も多く、人手に頼らざるを得ない状況が続いていることも理由といえるでしょう。
クリーニング代の値上げは、定期的にクリーニングを利用する人にとって支出の増加につながる可能性が高くなります。
ワイシャツなどを頻繁にクリーニングに出す会社員や、制服のクリーニングが必要な学生がいる家庭にとって、大きな影響があるでしょう。値上げによる家計への影響を最小限にするには、クリーニングの頻度を減らしたり、利用店舗を変えたりする方法があります。
洋服の日常的なメンテナンスを、できる限り自宅で行うことも節約につながります。着用後にブラッシングなどでほこりを払うことを心がけ、適切な方法で保管したり、軽い汚れは自宅で洗濯したりするなど基本的なケアを心がければ、クリーニングの頻度を減らせる可能性があります。
また、全ての衣類を同じ頻度でクリーニングに出す必要はありません。衣類の素材や使用頻度、汚れの程度に応じて頻度を適切に調整するといいでしょう。
クリーニング店は、地域や店舗によって料金やサービス内容に差があることは少なくありません。そこで、複数の店舗を比較、検討してみることをおすすめします。ただし、価格だけでなく仕上がりの品質やサービスの内容も含めて、総合的に利用する店舗を判断することが大切です。
クリーニング代の値上げは、物価高の影響によるものだけではなく、リモートワークの普及など社会の変化を反映した現象といえるかもしれません。
今後も、石油をはじめとした原材料費や人件費の上昇傾向は続くことが予想されますが、同時に環境に配慮したサービスの展開など、新たな可能性も広がっています。消費者とクリーニング業界が互いに協力しながら、よりよいサービスのあり方を探る必要があるでしょう。
厚生労働省令和5年度衛生行政報告例の概況(5ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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