【写真】ドラえもんのぬいぐるみを大事そうに持つ鈴鹿央士
「映画ドラえもん」シリーズ45周年記念作品となる、3月7日公開の『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』。のび太とドラえもんが絵の中の世界「アートリア公国」を冒険する本作で、アートリア公国の美術商人・パルを演じるのは鈴鹿央士。この度、声優は2度目の挑戦となる鈴鹿にインタビューを実施し、ドラえもんの世界に入り込んだ感想や、自身の声について、さらには鈴鹿自身が挑戦したアートなどについて語ってもらった。
■ドラえもんたちと喋っているようで感動した
――ゲスト声優として、45周年記念作品である「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」への参加が決まった時の心境を教えてください。
とてもうれしかったのですが、声優のお仕事は1度しか経験がなかったので、こんな大作に出演するのは不安もありました。でも、子どもの頃から見てきた「ドラえもん」の世界に入れるという楽しみもすごく大きかったです。毎週見ていて生活習慣の中に含まれている感じでしたし、映画も観に行っていました。
実は僕が初めて映画を見て泣いた記憶があるのが「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」なんです。「映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝」も思い出に残っています。劇場グッズのメダルがあったのですが、それが今も実家にあります。いつもドラえもんという作品全体から、人生で大事なことを教えてもらっていた気がします。
――では、念願が叶った感じですか?
びっくりの方が大きかったです。
――アニメの声優には2度目の挑戦になりますが、前回の経験を生かすことはできましたか。
どうでしょう(笑)。声のお仕事は、映像の現場とはセッティングから全く違うんです。ブースに入って、台本があって、マイクに向かうという状態には前回の経験のおかげで緊張しなかったです。
でも、同じアニメ作品でも前回とはテイストが違うというか「夏へのトンネル、さよならの出口」(2022年)は静かな雰囲気だったので、普段の小声に近いくらいで撮っていたんですけど、今回はアクションなどの迫力のあるシーンもあって、話すスピードや声量に変化を出して“より伝える”ことを意識してお芝居したので、 前回とはまた違う経験ができて楽しかったです。
――「ドラえもん」の世界に入った感想は?
僕がパルとしてマイク前に立つ時には、もうドラえもんとかのび太くんの声は入っている状態でした。そこに僕が加わるので、キャラクター本人と喋っているようで感動しました。
完成した作品を見たら改めて「すごい世界だな」って不思議な気分になりました。例えるなら自分が冒険を体験しながら、同時に客観視しているみたいな感じ。映画を見ながら思わず「ほえーっ」という声が出てしまいました(笑)。
■ボイトレで発覚「“歌う”機能が行方不明に」
――ちなみに、ご自身の声について何か言われたことなどは?
僕の声は眠たくなるらしいです。以前、マネージャーさんと駅のベンチで喋っていたら、だんだんマネージャーさんの返事がなくなって、のぞき込んだら寝ていたんです!(笑)そのあと、マネージャーさんが起きて「央士くんの声って、ふわっとしていて眠たくなる声だよね」と言われて、そうなのかなと思いました。
他にも、ラジオをしていたのですが、スタッフの方に「落ち着く声だね」って言っていただけて、とてもうれしかったのを覚えています。
――その落ち着く声を活かした役柄などをやってみたいと思いますか。
やってみたいです。でも今回の映画で出てくる大きな怪物が出す、迫力のある唸り声を聞いて、その凄さに圧倒されました…すごかった。ああいう声とかも出してみたいです。きっと難しいですけど。
実は僕、あんまり歌が得意ではなくてボイストレーニングに通ったりもしたんです。そこで自分でもわかったんですけど、どうやら「歌」という概念が僕の喉と脳にないらしくて。
――というと?
「歌う」機能が、どこかで行方不明になったらしくて(笑)。先生の指導も「まずは喉や歌の感覚をちょっとずつ培っていきましょう」から始まるくらい、僕はあまり人生で喉を使ってこなかったようです。もちろん生活で喋ってはいるんですけど、声で表現したり何かを強く伝えたりということを、ほぼしてこなかったので、声や喉をフルに使って怪獣を表現するなんて本当にすごいなと。声の表現にさらに興味がわいてきました。
――そこは鈴鹿さんの未開拓の部分、新しい伸びしろですね。
そうですね。興味が出たぶん、広げていきたいと思います。
■油絵セットを購入するも2枚で断念
――今回は美術商人のパルという役どころですが演じられた感想はいかがですか。
すごくやりがいのある役でした。謎めいた人物ですが、ところどころ抜けている感じもあって、彼なりの正義感もあるので演じていて楽しかったです。
――ご自身に似ているところはありましたか?例えば正義感とか。
僕は彼みたいな強い正義感はあんまりないです。いや、ないって言ったら誤解を招くな…。「正義を貫くぞ!」みたいな感じではなくて、気持ちのベースとして「少しでも世界のためにいいことをしよう」とは常に思っている…くらいのテンションです。
――それが鈴鹿さんの優しい魅力の源かもしれませんね。パルは美術商人ですが、鈴鹿さんはアートへの興味はいかがですか。
2024年の夏ごろに絵を描きたくなって、油絵セットのようなキャンパスと絵の具と筆など買って描きました。
――それは今回のオファーがあったから?
それよりも前です。自分では楽しんで描いたんですけど、ちょっとよくわからない絵が2枚できて…。そこで絵画は断念しました。一応家に“自分が初めて描いた子”として置いてはいます。
――何を描いた絵だったんですか。
僕、小さい頃からアヒルの絵をずっと描いていて、その流れでひとつはアヒルといくつかの動物の絵です。といっても羽根や毛の雰囲気は全くなくて、ただ線で形を描いただけ。どんな形が描けるかを詰め込んだみたいな感じです。
あと1枚は色で遊んだ絵ですね。色って混ぜたら何色になるんだろうと思って、ひたすらいろいろな色をベタ塗りしました。結果は、ほぼ「色のついた板」になりました(笑)。
――『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』はタイトルの通り、色彩が美しい作品です。オファーの前に絵画の世界に引かれたというのは運命を感じますね。
本当にそうです。不思議なご縁ですね。
■お芝居を届けることで「少しでも誰かの生活が豊かになったら」
――今回の映画のひみつ道具、絵の中の世界に入れる「はいりこみライト」を手にしたとしたら、どこに入ってみたいですか?
印象派の画家のデウィット・パーシャルが描いた「ハーミット・クリーク・キャニオン」という絵の中に入ってみたいです。聞いた話では、この絵は鉄道会社からの依頼で描くことになって、その時に目隠しされて、グランドキャニオンの前まで連れていかれて、ぱっと目隠しを取った瞬間の景色を描いたらしいんです。
構図は壮大で、それでいてすごく綺麗な色なんです。光の色は太陽の色なんですけど美しくて温かくて。あれは朝なのかな、夕方なのかな…。あの瞬間に行ってみたいです。
――この映画に参加したことで絵心が復活したりは?
残念ながらそれはなかったです(笑)。今は自分の中で集中してやっていきたいなって思えるのがお芝居以外だと写真かな。4年前くらいからカメラは持っていて、ほとんどは海外の風景を撮っています。自分がいいなと思った、美しいと思った場所だったり、瞬間だったりを撮っていると、なんとなくいい写真が撮れる気がします。でも特に展示や発表などはしていないです。でも、ファンクラブの方々だけに配るミニフォトブックみたいなのを作ったりはしました。
ちなみに僕はフィルムで撮るのですが、フィルムの種類で色も違うんです。それぞれの色合いや、ピントが合っているか合ってないかなどは個性だと思っていて。気持ちが動いて切り取った瞬間自体が素敵だなと思います。
それにアートは心を豊かにしてくれるので、人生や世界はもっと広いもの、そして自分でも広げていこうって思わされます。ジャンルは違うけれど、僕もお芝居を届けることで、ほんの少しでも誰かの生活が豊かになったらいいなと願っています。
――では最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。
今作は本当にスケールが大きくて、大人も子どももみんなが楽しめるシーンがいっぱいあります。その中で軸になっているのは何かを好きという気持ち。例えば勉強も、絵や作文も、仕事も、どうしても評価されてしまうけど、でもそれとは別に、これをやっていて楽しいとか、これをするのが好きとか、自分がそれをどう思うかとか…。そんな「自分の感覚を大切にする」ことを応援してくれる映画だと思います。ぜひ劇場へお越しください!
取材・文/後藤直子
撮影/山田健史
ヘアメイク/宮本愛(yosine.)
スタイリスト/朝倉豊
衣装協力/ジャケット&パンツ=BRAINCHILD COLLECTIVE、靴=ADIEU
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