舞台『みんな鳥になって』中島裕翔の撮り下ろしビジュアル
3月11日(火) 22:00
2025年6月28日(土) から7月21日(月・祝) に東京・世田谷パブリックシアターで上演される舞台『みんな鳥になって』の出演者が発表され、中島裕翔の舞台用撮り下ろしビジュアルが公開された。本作は東京公演の後、ツアー公演として兵庫・愛知・岡山・福岡での上演を予定している。
世田谷パブリックシアターではこれまで、ワジディ・ムワワドの戯曲『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』『森 フォレ』を、上村聡史による演出で上演を重ねてきたが、『みんな鳥になって』はその第4弾として上演される。本作は、ムワワドが2016年にパリ・国立コリーヌ劇場の芸術監督に就任する際に発表し、その後も再演を繰り返してきたムワワドの代表作のひとつで、世田谷パブリックシアターで上演してきた前3作の「約束の血」シリーズの世界観を引き継ぎながらも、まさにリアルタイムで世界が抱える問題に真正面から切り込んだ力作だ。民族や国境の高い壁に直面する人々の逃れられない辛い現実と、だからこそ抱く未来への夢が、ムワワドならではの迫力と美しさに満ちた台詞で綴られていく。
ベルリン出身のユダヤ系ドイツ人の青年エイタン役を中島裕翔、エイタンの父ダヴィッド役を岡本健一、エイタンの恋人でアラブ系アメリカ人のワヒダ役を岡本玲、エイタンの母ノラ役を那須佐代子、イスラエルの兵士エデン役を松岡依都美、16世紀の外交官ワザーン役を伊達暁、エイタンの祖父エトガール役を相島一之、そしてエイタンの祖母レア役を麻実れいが演じる。なお岡山・福岡公演は松岡依都美に代わり、渡邊真砂珠が出演する。演出は、前3作と同様に上村が手がける。
■演出:上村聡史 コメント
『みんな鳥になって』は、『炎』『岸』『森』に増して、ワジディ・ムワワドの決意を感じる戯曲です。それまでは、カナダ・ケベックで作品を創ってきたレバノン出身の劇作家が、かつて移民として拒否されたフランスに、今度は招かれる形で、パリを拠点に作品を創ろう、そしてこの地で生きようとする決意を感じます。それは世界を見つめる視点においても鋭角的で、今までは寓話性に包む形で描写していた中東も、今回は、勇を鼓するような筆力でイスラエルという固有名詞をそのまま剥き出しに、西洋の只中から我々現代にある種の“怒り”を突きつけます。
その決意を受けて演出者として、日本人の私たちも世界の一員であるという感覚を呼び覚ます作品に仕立てたいと思います。そして、清新さと深遠な表現を体得する頼もしい出演者八名とともに、今ある現在形の惨劇のなかであっても、物語と真実が照らす光に期待を抱けるような劇空間を皆さまに届けます。どうぞ、ご期待ください。
■中島裕翔 コメント
出演が決まったと聞いて、正直今の自分にはできないのではないかと思ってしまったくらい課題の多い作品ですが、チャレンジ精神を持って頑張りたいと思います。
この作品は人種や戦争、歴史にフォーカスを当てつつも普遍性を描いていて、大きなテーマを扱ってはいますが、僕が演じるエイタンも一人の人間なので、戯曲を読み込んで理解を深めていきたいです。自分の中にある小さな共通点を見つけて、それを広げていくような形でこの役に向き合っていきたいですね。エイタンが主人公ではありますが、様々な事情を持った人が出てくるので、それぞれに共感できるところはあると思います。
演出の上村さんは僕が初めて出演した舞台の『WILD』を観てくださっていて、その印象が残っていたから声をかけていただけたそうです。当時はわからないことだらけだったので覚えていていただけてありがたいですし、とても光栄です!多くのことを学ばせていただきたいと思います。
エイタンという青年の成長物語でもあると思うので、作品の中で悩んだこと、考えたことがそのまま出せればいいなと思います。名だたる戯曲に素晴らしい方々が集まっています!一生懸命頑張りますので、ぜひ劇場にお越しください。
■岡本健一 コメント
この作品を上演するにあたって大切にしたいことは、何なのだろうか?
愛するということなのか、信じるということなのか、自分の考えや言葉、行動は正しいのか、色々な思いもしない出来事が起こった時に、どのように対処して行くのか、はたして今の自分は、大丈夫なのだろうか?
ワジディ・ムワワドが描く、美しくリアルで刺激的な言葉の数々が、全身全霊で演じる俳優陣、そして観劇してくださる方々の心を鷲掴みにして、大切な希望を与えてくれるのだと思います。
演出家、上村聡史の創り出す『みんな鳥になって』、劇場にいる皆様と一緒になって、どこまでも自由に羽ばたきたいと願っています。
■岡本玲 コメント
今でも台詞の一節をそらで言えるくらい、自分にとってとても大きな存在である前作『森 フォレ』。
引き続きこの座組に参加できること、演劇猛者の皆さまとご一緒できることを、心から嬉しく思います。
と同時に、前回は初めましてでがむしゃらにぶつかったのが功を奏した気がするので、もうそうはいかないぞと自分に喝を入れています。
ワジディ・ムワワドの力強く美しい言葉たちに血を通わせ、命の、怒りの"熱"を届けられるよう、誠心誠意作品に向き合いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
■那須佐代子 コメント
ワジディ・ムワワド×上村聡史氏のタッグには『炎 アンサンディ』の初演・再演に出演させていただきました。美しい言葉の群れとめくるめく展開、そして強烈なメッセージをつきつける衝撃的な作品で、私にとって今も強く心に残る宝となった経験でした。
この度、またあの世界観の中に素晴らしい共演者の皆様と共に没入できることが大変嬉しく興奮する思いであると同時に、ガザ侵攻など様相を変えながらも連綿と続いている民族対立の厳しい現状と地続きであることを忘れずに、真摯にこの作品に向き合いたいと思っています。
■松岡依都美 コメント
2021年の『森 フォレ』参加以来、今回またあのワジディ・ムワワド氏の世界に飛び込める喜びでいっぱいです。出演させていただけることに心より感謝いたします。
演出の上村さんを筆頭に、ムワワドの美しく詩的で壮大な世界観を最大限に広げられる最強のキャストの皆様とスタッフの皆様と共に、私自身必死にくらいついていく覚悟でおります。
世田谷パブリックシアターで皆さまにお会い出来ることを楽しみにしております。
■伊達暁 コメント
世田谷パブリックシアター企画によるワジディ・ムワワド氏の「約束の血」シリーズ、僕が最初に出会ったのは観客としての21年『森 フォレ』でした。巨大な切り株を模した舞台装置と神秘的な劇場空間は今も脳裏に焼きついています。
シリーズをこれまで創り上げてきた上村さんをはじめとするスタッフ・キャストの皆様〜僕にとっては「森フォレチーム」〜と共に新たな旅に出られるのは、とても光栄で身の引き締まる想いでおります。
■相島一之 コメント
この作品は……と書き始めて筆が止まってしまった。書いては消してを繰り返し、上手くまとめようとするのを諦めた。だめだ。一度読んだくらいでは語れない。なのでしきりなおして、この作品は……大きく、深く、美しく、そして難しい。でもヒリヒリする想いがあって、戦っていて……。だからいろんなことを上村さんと座組の皆さんと稽古場で探して行こう。演劇の武器、想像力を使って。普遍的なものは何なのかと。こりゃ、大変な作品だと、今武者震いしています。でもあまり力んでも仕方ないよね。やっぱり演劇とは楽しいものなんだと、それをお客さまに届けたい。そして作品を読み終えた今思うこと。『みんな鳥になって』なんて素敵なタイトルだろう。祈りを込めてそう思います。
■麻実れい コメント
今回ワジディ・ムワワド作『みんな鳥になって』に出演させていただきます。
ムワワド作品は2014年『炎 アンサンディ』。2021年『森 フォレ』の2作品に参加させていただきました。特に『炎 アンサンディ』 は私の演劇人生に衝撃的な出会いとなり忘れられぬ舞台となりました。演出の上村さんとは4年ぶりの再会。。。とても嬉しいですね。
世田谷でのムワワドさん作品4回目の区切りとなるこの舞台、キャスト、スタッフの方々と共に皆様の心に残るよう頑張って創って行きたいと思っています。
■渡邊真砂珠 コメント
『冒した者』を観て、いつかご一緒したいと思っていた上村聡史さんと、今回ご縁があり光栄です。私の出演は岡山と北九州公演になりますが、その公演をまっとうできるように、大好きな世田谷パブリックシアターで稽古に臨みたいと思っております。そして錚々たるキャストの皆さんの中に加わりこの作品に携われるということに、緊張と不安と覚悟とワクワクと色々な感情が織り交ぜられている今です。
争いで今日も人が亡くなる世界で、ひとりでも多くの人に届けられるよう、自分の役割をしっかり務めたいです。よろしくお願いします。
【ストーリー】
ニューヨークの図書館。ベルリン出身で遺伝学・統計学を学ぶ青年エイタンは、イスラム史を学ぶワヒダに一目惚れして声をかけてしまう。ふたりは瞬く間に恋に落ちた。
ユダヤ人のエイタンは、アラブ人のワヒダとの婚姻を認めてもらうため、両親を呼び「過越祭」の食事をともにするが、敬虔なユダヤ教徒の父ダヴィッドは交際を認めようとしてくれない。
過剰なまでにワヒダを拒絶する父ダヴィッドの出生に疑念を抱いたエイタンは、ワヒダとともに祖母レアの住むイスラエルへと向かいそのルーツを解き明かそうとする。だがふたりは、爆弾テロに巻き込まれてしまう。病院に運ばれたエイタンのもとに、父ダヴィッドと祖父エトガールが駆けつけてくる。ふたりは久しぶりに母であり妻であるレアと再会を果たすことになるのだが……。
<公演情報>
舞台『みんな鳥になって』
作:ワジディ・ムワワド
翻訳:藤井慎太郎
演出:上村聡史
【出演】
中島裕翔、岡本健一、岡本玲、那須佐代子
松岡依都美、伊達暁、相島一之、麻実れい
※岡山・福岡公演は松岡依都美に代わり、渡邊真砂珠が出演。
【スウィング】
近藤隼、伊藤麗
【東京公演】
2025年6月28日(土)~7月21日(月・祝)
会場:世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】
2025年7月25日(金)~27日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】2025年8月1日(金)~3日(日)
会場:東海市芸術劇場大ホール
【岡山公演】2025年8月8日(金)~10日(日)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
【福岡公演】2025年8月15日(金)~17日(日)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール