【写真】蔦重(横浜流星)は錦絵本を将軍に献上したいと意次(渡辺謙)に会う
横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。3月9日に放送された第10回「『青楼美人』の見る夢は」では、身請けされた瀬川(小芝風花)が吉原を去ることに。最後の花魁道中に視聴者が見入った。(以下、ネタバレを含みます)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎のひとつといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
蔦重の幼なじみの花魁・花の井(五代目瀬川)役で小芝風花、蔦重に影響を与える“希代の天才”平賀源内役で安田顕、幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙が出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■瀬川、最後の花魁道中
鳥山検校(市原隼人)に1400両もの大金で身請けされた瀬川が、ついに吉原を去る日を迎えた。
蔦重が作った女郎たちの普段の姿を描いた錦絵本「青楼美人合姿鏡」を餞別(せんべつ)にもらい、つかの間の2人きりの時間を経て、最後の花魁道中へ。これまでの艶やかな色合いの着物ではなく、豪奢だが白無垢姿だ。
吉原に集った客からの「これが吉原よ」「めでてえ!」「幸せにな」という掛け声が上がる。瀬川の後ろには、女郎屋の松葉屋半左衛門(正名僕蔵)と女将・いね(水野美紀)や、松の井(久保田紗友)ら花魁たちの姿も。
しばらくすると観衆の声が消え、無音状態に。瀬川が目指す吉原唯一の出入り口である大門の前には蔦重が立っていた。瀬川が高下駄で八文字を描く音と衣擦れの音が響く中で、蔦重の姿を目にとめた瀬川の口元がほんの少し緩んだように見える。
そこに花魁道中前の蔦重との続きの回想シーンが挟み込まれた。蔦重と瀬川をつなぐ、吉原を女郎にとっていいところにする夢を語る蔦重。「俺はこの夢から覚めるつもりは、毛筋ほどもねえよ!」という蔦重のたんかと笑顔は、瀬川の心にいつまでも残るのだろう。
■瀬川「おさらばえ」に視聴者から反響続々
瀬川の歩く音だけが響く演出、瀬川が最後の八文字歩きで道につけた跡を俯瞰(ふかん)で見せる映像。花魁道中はみんなが必ずしもできるものではなく、瀬川の美しさとともに吉原での地位と存在を浮き彫りにする演出でもあった。
瀬川を演じた小芝風花は花魁道中のシーンに関して、インタビューで「高下駄をお借りして家で練習したりしました」と明かし、2月28日放送の「あさイチ」(毎週月~金曜朝8:15-9:55、NHK総合)に出演した際には、フィギュアスケートを学んでいたことによる「体幹はすごく活きていると思います」と語っていた。瀬川最後の花魁道中でも、それが余すところなく発揮されていた。
さらに、視聴者が予告映像から注目していたのが瀬川の「おさらばえ」というせりふ。
瀬川はまるで蔦重の元へと歩み寄るように進んだが、蔦重が静かにうなずいたの見てほほ笑むと、吉原を振り返った。そして膝折礼をして「おさらばえ」と言って、蔦重の横を通って大門を出ていった。八文字ではなく、普通の歩みで進んだ先に待っていたのは鳥山検校だ。
SNSには「『おさらばえ』無理…涙止まらん」「吉原のおさらばえ、なんか物悲しいけどほんの少し希望もあるような、忘れられない言葉」「『おさらばえ』だとしても、永遠の残る恋」「美しい画や…なんちゅうもんを見せてくれるんや」など感想が続々と上がった。
また、その中には本作の脚本家・森下佳子が、以前担当したドラマ「JIN-仁-」(2009年、TBS系)を思い出す声も。同ドラマで中谷美紀が演じた花魁・野風が「おさらばえ」と発する場面が、視聴者の心に強く残っていたのだ。
俳優陣の演技、脚本、演出、すべてが重なり合って見事に作り出された瀬川最後の花魁道中だった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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