【写真】広澤克実の“広角打法”理論を本人が解説
3月4日(火)に放送された「プロ野球 レジェン堂」(毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ)。今回のゲストは1984年のロス五輪で野球日本代表として金メダルを獲得した後、ヤクルト・巨人・阪神の3球団で4番打者として活躍した広澤克実が登場した。MCの徳光和夫、遠藤玲子とともに、平成を代表する強打者の打撃論や名将とのエピソード、巨人・阪神への移籍秘話まで貴重なトークを展開する。
■「新人に対して非道」な洗礼も
往年のプロ野球ファンにとって、広澤といえばヤクルト時代の印象が強いかもしれない。広澤は明治大学を卒業した1985年にプロ入りを果たすが、ドラフト会議では日本ハム・西武・ヤクルトの3球団が1位指名するほどの大型ルーキーであった。
広澤にとってのプロ初打席は、1985年4月13日の対中日戦。シーズン開幕戦でもあったこの日の先発投手は、沢村賞の受賞経験もある名投手・小松辰雄だった。広澤は代打として起用されたものの、スライダーと高めのストレートを組み合わせた巧みな配球により三球三振に終わり、早々にプロの洗礼を浴びてしまう。
当時、小松が投げる球は球界最速とも言われるほどのスピードがあり、変化球のキレも抜群であったという。広澤は「新人に対して非道だ」と笑いながら当時を振り返ったが、それだけ周囲に警戒されていたことの証とも言える。
その証拠に、広澤はプロ入り4年目にして143安打、30本塁打を記録して初のベストナインに選出される。プロ野球選手として順調に実績を積み上げていると思われたが、広澤は意外にも試合に出ることへ恐怖心や逃げたいという気持ちが強かったと当時の心境を振り返った。
しかし1987年に関根潤三が監督に就任すると、野球そのものの楽しさを思い出して「のびのびとプレーできるようになった」と広澤。池山隆寛との「イケトラコンビ」が生まれたのも関根監督時代であり、当時の知られざるエピソードも披露された。
■“広角打法”は苦肉の策だった
広澤の野球人生において、90年代のヤクルトを支えた名将・野村克也の存在も大きかったという。野村といえばデータを駆使しながら緻密な戦略によってゲームを組み立てていく“ID野球”が有名だが、これを徹底するために当時のヤクルトでは連日のように長時間のミーティングがおこなわれていた。
大学の授業のように選手がノートをとり、広澤自身も「人生で初めて“ペンだこ”」ができたというから驚きだ。しかしそのような過酷なミーティングが続く中でも、ほとんどノートをとらず寝ていた選手が1人いたという。しかもその選手に対してはなぜか野村監督も怒ることはなかったと漏らしたところ、徳光と遠藤はこのエピソードだけで選手を察して笑いが起きる。
広澤から見て、野村監督は長嶋茂雄のことをライバル視しているように映っていたそうだ。また同時に、長嶋も野村のことを意識しているように見えたという。番組内では、広澤が間近で見続けてきた2人の名将についての貴重な秘話が語られた。
意外だったのは、広澤の持ち味として高く評価されていた“広角打法”の誕生秘話について。左右に幅広く打ち分ける打法が生まれた理由は、「苦肉の策」だったというのだ。
「僕の欠点なんですけど、(打球を)引っ張れなくなりまして」「晩年までそれを修正できなくて、インコースの打ち方を」と語る広澤に、徳光がスタジオにあったバットで詳しく理論を聞くことに。
バットを持った広澤が明かすのは、インコースとアウトコースの打ち方では肩の状態が全く違うということ。インコースは肩を開き、アウトコースでは肩を閉じなければバットが正しいインパクトをボールに与えられない。きちんと肩を制御し、バットの持ち方を一定の角度に保つことがインコースの正しい打ち方と気づいたのだ。
さらに大谷翔平や王貞治、落合博満といった名スラッガーに共通する「名選手はアッパースイング」といった鋭い考察も披露。番組が進むにつれてトークの熱は高まっていった。
■頭脳と体を鍛えた名選手
今回の放送で目立ったのは、広澤の分析力と行動力だ。当時高く評価されていた広角打法の話では特に、実は苦手な分野を克服するうちに生まれたものだったと告白。肩の開き具合とバットの角度について、じっくりと理屈立てて修正を繰り返した末に生まれたという。
体力や身体能力を身につけることよりも、理論を体に沁み込ませることの難しさは言葉ほど取り組みやすいものではない。さらに長くプロとして活動してきた人間であればあるほど、身体操作のクセを修正するのは難易度は桁違いだ。理論を頭で分析し、地道に努力を繰り返してきた結果だろうと察せられる。
平成を代表する名スラッガー・広澤克実の生い立ちからプロ入り、巨人・阪神への移籍秘話まで貴重な内容が盛りだくさんの内容で聞けた「プロ野球 レジェン堂」。次回放送は3月11日(火)夜10時から、ゲストは張本勲が登場する。
【関連記事】
・
【写真】“苦手克服”の過程で生まれた広角打法を語る広澤克実
・
所ジョージ「私が仕上げると、こんなんなるわけ」こだわりのモデルガンカスタムで見せる趣味人っぷり<所さんの世田谷ベース>
・
藤岡真威人&大友花恋が語る、北大路欣也からの学び「皆さんと会話しながら役を作り上げていらっしゃる」
・
福本豊はいかにして「世界の盗塁王」となったのかきっかけとなった監督のアドバイス<プロ野球レジェン堂>
・
【漫画】タイタニック号沈没事故に隠されたドラマ… 最高の紳士たちの姿に「読んだらしばらく放心状態になった」