キャデラックは、同社初の電気自動車となるラグジュアリー・ミッドサイズSUV「リリック(Lyriq)」の日本導入を発表した。アメリカでは2022年から既に販売されており、昨年後半には「ドイツ・カー・オブ・ザ・イヤー2025」の高級車部門を受賞している。日本市場は満を持しての投入となったわけだ。日本では3月8日(土)から販売を開始し、デリバリー開始は5月以降の予定になっている。
【画像】キャデラック発の電気自動車、ラグジュアリー・ミッドサイズSUV「リリック」(写真21点)
GMの次世代電動化プラットフォーム「BEV3」を採用した記念すべき第一号車となるリリック。このプラットフォームは、車両床下にバッテリーをフラットに配置するスケートボード方式を採用。これにより、広々とした室内空間と低重心による優れた走行安定性を実現しているという。
ミッドサイズSUVとはいえホイールベースが3085㎜もあるからか、デザインの妙味なのか、面白いほど威風堂々としている。実際のサイズは全長4995mm×全幅1985mm×全高1640mmで”そこまで”大きな車ではない。日本に導入されるリリックは右ハンドル仕様、全輪駆動のデュアルモーター搭載車で、日本の多くの充電スタンドが採用しているCHAdeMOに対応している。システム合計最高出力384kW(522ps)、最大トルク610Nmを誇る。車両重量2,650kgという巨漢ぶりながら、0→100km/h加速は5秒台をマークするそうだ。そして、前後重量配分は理想とされる50:50を実現。
記者発表会では、しきりに「右ハンドル車」であることが強調され、従来以上に日本における高級車セグメントに食い込める、と意気込んでいた。1990年代後半、キャデラックは「セビル」で初めて右ハンドル仕様を投入し、全長5m以内に抑えた意欲作であったことが懐かしい…。あれから約25年、キャデラックにとっても右ハンドル市場(日本に限らず)は見過ごせない規模に成長したのだろうか?
なお、記者発表会に臨んだのはゼネラルモーターズ・ジャパンの代表取締役社長、若松格氏、グルーバル・キャデラック・ヴァイス・プレジデントのジョン・ロス氏、そしてGMアジア・パシシフィック プレジデント&マネージングディレクターのヘクター・ヴィラレアル氏の3名。錚々たる顔ぶれだったのはディーラー向けプレゼンテーションという意味もあるのだろう。というのも、販売手法を変更するそうで”エージェント制度”なるものを導入するからだ。
エージェント制度とは、各ディーラーは在庫を抱えることなく、「メーカー指定価格」のワンプライスで販売する、というもの。消費者の立場からは価格交渉の余地を排除することで、値引き交渉が不得意な人にもフェアにするもの。リリックのメーカー指定価格は1100万円(税込み)。
理論上、今まではメーカー「希望小売価格」であって、需要が旺盛であればプレミアム価格での販売も可能であった、ということ。実際、アメリカではたびたび問題になっている事象である。そして、全国のディーラーは”ブランド体験”をする場としての役割を今まで以上に担う、ということらしい。
質疑応答の場では以下の点を確認しておいた。
アジア市場向けのリリックは上汽通用汽車(SAIC―GM)で生産される、との事前情報が流れていたが日本市場向けはアメリカ・テネシー州スプリングフィールド工場にて生産される、とのこと。
右ハンドル仕様が約20年もの間、日本で不在だったのは、要約すると「コストに合わなかった」からだ。電動化プラットフォームだと左ハンドル仕様/右ハンドル仕様の切替えが容易らしい。また、アメリカを代表する高級車であるキャデラックのプレゼンスを各市場で築くためにも、右ハンドル仕様の投入は必須であった、と今さらながら社内で再確認したようだ。
そして、2026年に3列シートBEVの「ヴィスティック」(アメリカのメディアからは”ベイビー・エスカレード”と呼ばれているとか)、エントリーBEVの「オプティック」、そしてハイパフォーマンスモデルの「リリックV」を投入する旨、アナウンスしていた。個人的には全長5.5mオーバーのBEVセダン「セレスティック」が気になっていたが、日本における自キャデラックのBEV展開はSUVを軸に拡大させる目論見のようだ。
3月8日から同16日まで実施されるリリック発売記念の「ローンチ・キャンペーン」では5つの外装色(通常は3つ)、3つの内装色、パノラミック電動サンルーフおよびブラックルーフを自由に選んで組み合わせられる。また、2.4%の金利ローンを利用できる(通常の金利は3.9%)という。
文:古賀貴司(自動車王国)写真:キャデラック ジャパン、古賀貴司(自動車王国)
Words: Takashi KOGA (carkingdom)Photography: Cadillac Japan, Takashi KOGA (carkingdom)
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