レッドゾーンまで回す必要などないのに、回したくなる。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|360モデナ編

octane.jp | 美しい車と暮らす

レッドゾーンまで回す必要などないのに、回したくなる。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|360モデナ編

3月11日(火) 3:11

提供:
この記事は【何年経ってもF355マジックは健在だ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|F355GTS編】の続きです。

【画像】「ヴェルデ・ツェルトヴェグ」というめずらしいダークグリーンメタリックの360モデナ(写真4点)

360モデナ
360はV8ミドシップカーの過激な再構築であった。オールアルミニウムボディに、ウィンドウトンネルの申し子のようなスタイルで、シェイプはシンプルかつクリーンで気取らず、取り立ててハンサムというわけでもない。愛しのリアバットレスはもはや消え失せたけれども、その代わりというわけではないだろうがフェラーリ初のガラス付きリアリッドが備わって美しいエンジンが見えるようになった。覗き込めばアルミニウムのサブフレームに囲われ、一対の吸気プレナムを載せたV8エンジンがF355よりもさらに低く搭載されていることが見えるはずだ。なんとゴージャスな眺めだろうか。F355の進化版というべきエンジンはいよいよ3.6リッターとなり、最高出力は394bhpにまで達している。5バルブも継承したのだから本来なら365モデナでもよかっただろうに。否、フェラーリで365といえばまずデイトナを思い浮かべてしまうだろうから、上手くない。

デビューから25年が経っている。それでも360のデザインは今になってようやく時代に馴染んできたかのように思える。取材車両はフィル・メイドメンツの所有になる素晴らしいコンディションの360で、しかも”ヴェルデ・ツェルトヴェグ”というめずらしいダークグリーンメタリックのボディカラーということもあって、新鮮味もさらに増した。

対してインテリアは少々魅力に欠けている。デビュー時にはかなりスタイリッシュに見えたものだが、不恰好なマットアルミのパートなどどこか未完成品のようだ。ブラックとクリームのレザーコンビとグリーンのカーペットは悪くない。全体的に広く、ルーミーで、頭上空間もたっぷりあるにもかかわらず、シートポジションまで高いせいか、308やF355に比べるとどこか落ち着かない。

360モデナのマニュアルギアボックス仕様は全体のわずか3割程度しかなく、レアだ。とはいえその素晴らしい操作フィールにおいてF355と肩を並べる。まさにフェラーリらしいマニュアルフィールだ。シフトレバーを動かそうとすると少なからずフリクションもあって、きっちり変速し終えた時にはレバーがゲートに当たって小気味の良い音がでる。エンジンの出力特性や合わせやすいクラッチのおかげで、そんな古典的なマニュアルフェラーリの魅力をいっそう手軽に楽しむことができるというわけだ。他の2台もそうだけれど、ドライバーが夢中になっているとき、マシンは最高の状態にある。

360のボディサイズはF355より大きい。よりワイドでホイールベースも長く、少し重い。けれどもタイヤサイズは似通っている。フロント215/45ZR18で、リア275/40ZR18だ。3.6リッターV8には低回転域におけるトルク特性を引き上げるため、2ポジションの排気カムタイミングと可変インテーク長を装備しており、背後に迫ってくる連中にはいっそサウンドを解放してやりたい衝動に駆られる。

F355よりもよりタフなエンジンだと思う。鋭く、音もアグレッシブ。8500rpmから始まるレッドゾーンまで回す必要などなくても、ついつい回してみたくなる。特にこの試乗車のように社外マフラーを装備していればなおさらだ。もっとも中にいるドライバーには至ってノーマルな音に聞こえていた。外では壮大なのだ。凄まじく金属的でスリリング、トップエンドで咽び泣く。

この1年の間に、新品のダンパーと入れ替え、ボールジョイントも新調し、ディスクとパッドも交換されていた。それゆえ、記憶にあるデビュー時と変わらぬ走りを見せた。いや、ひょっとするとさらによかった。落ち着きがあったのだ。308やF355の場合、大きなバンプを超えているという実感があるけれど、360ならいとも簡単にいなしてしまう。ドタバタせず、二度揺れもなし、ステアリングはセンターに保持され、とても扱いやすい。

ステアリングに大きな入力を与えると、恐ろしくクイックな反応をみせる。コーナリング中であってもそうだ。F355ならば低く構えて落ち着きを保ちつつ自然とリアが滑り出すような場面で、360ではつま先でもうそれを感じてしまう。トラクションコントロールの効きが段階的であっても、リアはさらに動きたがっているかのようで、それゆえF355のようにリラックスさせてくれることもリラックスすることもできない。


それで、どれを選ぶか。写真判定が必要なくらいの僅差だ。308はとにかくラブリーだった。一体感もあって、ドライブすることそのものに満足を覚える。シャシー性能とギアシフトはドライバーの腕次第、きっと飽きることがない。V8エンジンは魅力の宝庫というべきで、毎度のドライブを充実して過ごすに十分な力強さも備わっている。それに、なんといっても史上もっとも美しいミドシップカーの一台なのだ。ドライブする時間がたとえなくても、磨くか眺めるかして過ごしたって幸せというものだろう

思いのほかよかったのは360だった。エンジンは素晴らしく、扱いも容易で、それにすごく速い。F1ギアボックスではなくマニュアルだったおかげでより一層、楽しめたとも思う。取材車両のボディカラーにも痺れた。

もっとも360エンジンの魅力のほとんどはF355でも体感できるだろう。ハンドリングはさらにナチュラルで、思いのまま。それに308GTBに次ぐ美しいスタイリングをまとっている。F355が私のレッドゾーン、スウィート・スポットだった。


編集翻訳:西川 淳Transcreation:Jun NISHIKAWA
Words:John BarkerPhotography:Alex Tapley


2001年フェラーリ 360モデナ
エンジン:3586cc、40バルブ V8、DOHC、フラットプレーン・クランクシャフト、ドライサンプ、ボッシュ・モトロニック
最高出力:394bhp/ 8500rpm最大トルク:275lb-ft/ 4750rpm
トランスミッション:6段 MT、トランスアクスル、後輪駆動ステアリング:ラック&ピニオン、パワーアシスト
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピック/ダンパー、アンチロールバー(後輪調節式)
ブレーキ:ベンチレイテッド・ディスク、ABS車重:1350kg最高速:183mph、0-60mph 4.5sec
【関連記事】
・308GTB、F355GTS、360モデナ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|序章
・年月を経て美しくなるばかりの308。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|308GTB編
・何年経ってもF355マジックは健在だ。3台の「スモール・フェラーリ」を比較する|F355GTS編
・「V8ミドシップ・フェラーリ」などエントリー受付中!|KYOTO スポーツカー&スーパーカー・ヘリテージ・ギャザリング北野天満宮2025
・シューマッハ特注の355GTSがオークションに登場!F1の皇帝が選んだ仕様とは…?
0ctane

生活 新着ニュース

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ