会社員を辞めて個人事業主になろうか迷っています。「税金」や「確定申告」はどのくらい変わるのでしょうか?

会社員を辞めて個人事業主になろうか迷っています。「税金」や「確定申告」はどのくらい変わるのでしょうか?

3月11日(火) 0:10

確定申告をするうえでは、個人事業主の所得が事業所得と認められるか、雑所得になるかで、税務上大きな差が生まれます。 本記事では所得が事業所得になるか雑所得になるか、その条件の違いについて説明し、事業所得と認められた場合に、雑所得と比べて税務的に有利になる点について解説します。

所得が事業所得になるか雑所得になるか、条件の違い

所得が事業所得か雑所得になるかの違いは、税務上の扱いに大きな影響を及ぼします。それぞれの違いを明確に理解することは、適切な申告や節税対策に役立ちます。
 

事業所得

1. 事業所得とは
 
事業所得とは、営利性・継続性・独立性を持つ事業活動から得た所得を指します。主に、個人事業主やフリーランスが行う事業活動で発生する収入が該当します。税法上は「事業として行われる活動」から得られる利益であり、規模や安定性がある場合に、事業所得として認められることが多いといえます。
 
2. 事業所得の主な例

・自営業者(飲食店経営、物販業、サービス業など)
 
・フリーランス(プログラマー、デザイナー、ライターなどの専門職)

3. 事業所得として認められる条件
 
事業所得になるためには、以下の条件を満たしている必要があります。

・独立性 :他人の指揮や監督を受けず、自らの裁量で事業を運営していること。例えば、フリーランスのデザイナーが自身で顧客を開拓し、自由に仕事を進める場合です。
 
・営利性 :利益を得ることを目的としていること。単なる趣味ではなく、明確な収益目的があることが重要です。
 
・継続性 :一時的な活動ではなく、定期的に収入を得ていること。例えば、数か月ごとの単発契約ではなく、年間を通して複数の仕事を行っている場合が該当します。
 
・事業としての基盤 :事業としての基盤(顧客、設備、資金など)が確立されていること。小規模な営業でも、事業としての実態が認められることが重要です。

これらの条件を満たしていれば、事業所得として申告することで、税務上のさまざまな優遇措置を受けられます。
 

雑所得

1. 雑所得とは
 
一方雑所得とは、事業所得や給与所得など他の所得に該当しない所得を指します。主に、趣味的な活動や副業から得た一時的な収入が含まれます。雑所得は「副次的な収益」として扱われるため、税務上の優遇措置は事業所得に比べて限定的です。
 
2. 雑所得の主な例

・趣味活動から得た収入(例:アマチュア作家が得る印税、趣味で撮影した写真の販売収入)
 
・副業的な収入(例:オークションサイトでの物品販売、ブログやYouTubeの広告収入)

3. 雑所得として認められる条件
 
雑所得は、以下の条件を満たしている場合に該当します。

・一時性:短期的または不定期の収入であること。単発の副業で得た収入がこれに該当します。
 
・副次的:本業ではなく、副業的な性質を持っていること。例えば、本業が会社員で、空いた時間に副収入を得ている場合です。ただし副業であっても、事業所得の項で述べた営利性や継続性などの条件を満たしている場合は、事業所得と認められることがあります。
 
・趣味的性格:趣味や特技を生かして得た収入であること。例えば、趣味で制作した工芸品を販売して得た収入は、雑所得に分類される可能性が高いです。

2022年10月に加わった条件

上記に加え、2022年10月に新たに加わった条件があります。それは、「記帳」です。
 
2022年8月に国税庁は、「所得税基本通達の制度について」(法令解釈通達)の一部改正(案)を出し、「事業所得と雑所得に関する判定基準」へのパブリック・コメントを求めました。
 
その判定基準とは、「事業に関する所得が年間300万円を超えた場合は事業所得、それ以下の場合は損益通算のできない雑所得とする」というものでした。会社員の副業が増え、事業所得の赤字を給与所得の黒字と相殺し、税金の還付を求める動きが増えてきたため、それを封じ込めようとするものでした。
 
ところが、その案は猛烈な反対にあい、2022年10月国税庁は改正通達を出し、「記帳と帳簿書類の保存」を行った場合は、所得の大きさにかかわらず、原則事業所得として認めるということになりました。もちろん、事業所得に関する定性的な基準(独立性・営利性・継続性など)は残っていますが、決め手は「記帳と帳簿書類の保存」となったのです。
 

まとめ

本記事では、所得が事業所得になるか雑所得になるかの条件の違いについて述べました。適切な区分を理解し、正しく申告することで、余計な税負担やトラブルを避けることができます。自身の状況をしっかり把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを活用することも検討しながら、適切な対応を心掛けましょう。
 

出典

国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
国税庁 No.1500 雑所得
国税庁 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表CFPファイナンシャルプランナー

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