舞台『グッバイ,レーニン』プレスコールより
3月10日(月) 3:00
3月9日、東京・渋谷PARCO劇場にて舞台『グッバイ,レーニン』のプレスコール、開幕前会見が行われた。
2003年にドイツで公開された同名映画は、本国ドイツだけでも600万人以上を動員。ゴールデングローブ賞の外国語映画賞にノミネートされたほか、国内外の映画賞を数多く受賞している。
そんな『グッバイ,レーニン!』は2021年に初めて舞台化。日本版の『グッバイ,レーニン!』の演出を務めるのは2026年9月から新国立劇場演劇部門芸術監督に就任予定の上村聡史だ。
物語は1989年、東ドイツの首都ベルリン。主人公のアレックスは母のクリスティアーネ、アリアーネとともに暮らしていた。
東ドイツ建国40周年記念日である1989年10月7日の夜、アレックスは家族に内緒で反体制デモに参加していた。そこで、警官ともみあっていたところを母に見つかってしまう。ショックのあまり、心臓発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまうクリスティアーネ。次に目を覚ましたのは、8ヶ月後。東西ドイツが統一されたあとだった。激変した情勢。目を覚ました母がショックを受けないよう、アレックスは家族や近所の人たちの協力を得て、ある「ウソ」をつくことにする。
プレスコールで披露されたのは、アレックスたちがクリスティアーネに東西ドイツ統一の知らせを伝えるために、嘘のテレビ特別放送を見せるシーン。母の心を守るために、アレックスたちが優しい嘘をつくという重要な場面でもある。
激動の時代の中、舞台上にいるのは互いを大切に思う家族たち。穏やかな空気の中にも、それぞれの熱い想いがほとばしる。
開幕前会見には主人公・アレックスを演じる相葉雅紀のほか、母・クリスティアーネ役の堀内敬子、アレックスの恋人・ラーラ役のトリンドル玲奈、アレックスたち一家の近所で暮らすハンナ・シェーファー役の西尾まり、アレックスの同僚・デニス役の浅利陽介、そして、アレックスの父で、西ドイツに単独亡命をしていたロベルト役の山崎一が登壇した。
稽古中のエピソードについて聞かれると相葉は「みんなで二度、ご飯に行きました」と明かし、浅利が演者にスケジュールを聞いて回ってメモをし、アナログでスケジュール調整をしたそう。その食事会を「楽しかった」と振り返り、「諸先輩方の仲が良いので、その中に入れていただけている感じが心地良いです」と笑顔を見せた。
トリンドルは「(稽古は)とても順調でした。1ヶ月以上あったけれどあっという間に終わってしまった感覚」と言い、そんなトリンドルから「どうでしたか?」と振られた西尾も「和気あいあいと、楽しく笑いが絶えない現場です」と頷く。山崎も「なかなかこんなチームワークがいいところはない」と振り返った。まさに家族のようなチームとなっているようで、楽屋があるロビーでも自然と集まって話をしていると仲が良い様子をうかがわせた。
さらに、作品の内容とからめて、相葉演じるアレックスの立場だったとしたら、母のために嘘をつくか?という問いには、それぞれが「つく」「つかない」のフリップで回答。
「嘘をつく」と回答した堀内は「(母親が)その嘘を信じてるから言えない。本当のことを言ったら死ぬかもしれないのに」。浅利は「決まった余生があるなら、その間だけでも元気でいてほしい」、山崎も「嘘をつくことで長生きしてくれるんだったら、嘘をついてしまうと思う」と同意した。
3人と少し異なる理由で「嘘をつく」というフリップを挙げたトリンドルは「嘘をつくのが楽しいことってあるじゃないですか。この物語のように近所の方も巻き込んでわちゃわちゃとみんなで嘘をつくために一体になっている感じが楽しいな、って」とこの作品ならではの空気感と絡めて回答した。
一方「嘘をつかない派」の相葉は「アレックスって大変ですよ?」と実感がこもった様子。最初に嘘をつくのはいいが、その嘘をつきとおすための努力が大変、というのが世の常だ。「うまく、傷つかないようなやり方をまりさんと考える」と同じくつかない派の西尾に協力を求めた。西尾は「私はもう嘘がバレちゃうから。だったら最初から嘘をつかない!」と明るく言った。
最後にメッセージを求められると、「相葉くんがとっても大変で。でも稽古のときからセリフがすでに入っていてみんなに気を使わせることなく、良い時間の中で作った作品。それが伝わったら」と堀内。
そして相葉は「登壇している役者さん以外にもたくさん大先輩に囲まれてすごく素敵な経験をさせてもらっています」。そして「素敵なみんなで作る愛のあるのフィクションの世界に入ってもらえたらな、思います」とメッセージを送った。
舞台『グッバイ,レーニン!』東京のほか、福岡、大阪にて上演される。
取材・文・撮影:ふくだりょうこ
<公演情報>
パルコ・プロデュース2025
『グッバイ、レーニン!』
原作:ヴォルフガング・ベッカー/ベルント・リヒテンベルクによる同名映画
脚本:ベルント・リヒテンベルク
演出:上村聡史
出演:
相葉雅紀堀内敬子トリンドル玲奈浅利陽介松岡依都美後藤剛範
福本伸一櫻井章喜佐川和正今國雅彦
石井舜塩田宙豊本燦汰鳴海竜明
西尾まり山崎一
【東京公演】
日程:2025年3月9日(日)~3月31日(月)
会場:PARCO劇場
【福岡公演】
日程:2025年4月5日(土)~4月7日(月)
会場:キャナルシティ劇場
【大阪公演】
日程:2025年4月11日(金)~4月15日(火)
会場:森ノ宮ピロティホール