華やかなイメージの強い大学のミスキャンパス。受賞者たちの「その後」の進路はどのようなものなのか――。
ミスコングランプリをきっかけに芸能界入り
ミス明治学院2020年グランプリの久木田菜々夏さんは、3年前からアイドルグループ「衛星とカラテア」のメンバーとして活動している。
もともと、大学卒業後は、一般企業に就職するつもりだったが、3年生のときにミスキャンパスコンテストでグランプリを受賞。芸能事務所からオファーを受ける。
悩んだ末に選んだ事務所で、アイドル結成の話が持ち上がり、現在のグループに加わることになった。だが、その選択が彼女の人生を狂わせることに――。
アイドル活動が原因で留年
「アイドルになったことがきっかけで、大学を留年することになったんです」
そう久木田さんは語る。アイドルとしてはよくある、仕事が忙しくなって大学に通えなくなった――というパターンなのだろうか。
「1年生の頃から教員免許を取ろうと思って授業を選択してきたんですが、取得のためには4年生で教育実習に行くのが必須なんです。私は3年生でアイドルになった後に、教育実習に行くことになりました。
ただ、大学の教員のひとりが、私のアカウントを見て、それを疑問に感じたみたいなんです。それで、私は大学からの指示で、実習に行けなくなってしまったんです。留年をして翌年に実習に行くか、教員免許の取得を諦めてそのまま卒業するかの2択を迫られました。ただ、高校生の頃からこの学部に入って教員免許を取るというのは決意していたことなので……」
ひとりぼっちで卒業式をYouTubeにアップ
'21年当時の状況を鑑みれば、ライブハウスに出入りをするアイドルが教育現場に行くことに違和感を覚える人がいることも想像はつく。ミスキャンパスコンテスト出場にアイドル活動と、学内で目立ってしまったことの弊害ともいえ、相当に悩んだというが、久木田さんは泣く泣く、留年を選ぶことになる。
「袴は予約していたので、留年が決定したまま卒業式には行きました。だから、結局は2回卒業式に参加しているんです。2年目は、ひとりぼっちの卒業式に参加する動画も撮って、YouTubeにアップしました。就職しないと決めていたのが、不幸中の幸いですかね(笑)」
大変な状況もなんとかネタにするのが久木田流だ。5年をかけて、無事、教員免許も取得した上で卒業。その後のアイドル活動も順調に進むかと思いきや、グループには波乱が続く。
グループが軌道に乗り始めた矢先にメンバー脱退
'21年7月に5人組として結成された「衛星とカラテア」だが、当時のメンバーで今も残っているのは久木田さんのみ。
結成翌年にはファーストアルバムを発売するなど、軌道に乗り始めたように見えた。しかし、同じ年に2名の脱退が発表された。
「ファンの方も増えてきたタイミングでしたが、『落ちたな』といった外部からのコメントが気になるようになってしまって、思うように活動できない時期もありました」
結成から3年半。Zepp Shinjukuでのワンマンライブも決定するなど、徐々に光が見え始めている。アイドルとしての歩みを進めるとともに、家族の理解も得られるようになったという。
「最初、私がアイドルになることに父は衝撃を受けていて。大学卒業後は就職すると思っていたみたいなので当然ですよね。でも、1年半くらい経って、CDの発売や全国ツアー決定といった実績を見て、ようやく受け入れ始めてくれた感じで。今は曲を家の中で流してくれたり、タワーレコードに行ってグッズを集めてライブに来てくれたり……とても応援してくれています」
埼玉のサウナで顔バレ
さらに、この3年半の間に個人単位でも注目を集めつつある。25万人以上のフォロワーを擁する久木田さんのTikTokのアカウント名は『乃木坂にいそうでいない人』だ。
「最初は乃木坂46の山下美月さんのそっくりさんとして話題になりました。その後、ファンの人に『彼女っぽいね』と言ってもらえることが多かったので、ドラマ形式で、彼女のようにあざとく語りかける動画をアップし始めました。
それらに『#埼玉の彼女』というハッシュタグをつけてまとめたところ多いものだと300万回再生を記録するなど、一気に再生数が増えて、いわゆる“バズる”状態になりました」
再生回数が伸びたことで、テレビ朝日の人気番組『あざとくて何が悪いの?』からもオファーを受け、出演することに。動画をきっかけにライブに来るようになったファンも多いといい『#埼玉の彼女』効果は今も続いている。ただ、注目を集めたことによる思わぬ弊害もあるという。
「サウナが好きで、よく行くんですが、顔バレしてしまうんです。サウナハットを被ってても、覗き込まれるように顔を見られたり、アイスを買ったときに店員さんが完全に気付いたような顔をしたり……。
『昨日サウナで見ました』とか『今日はご来店いただきありがとうございました』みたいなDMやコメントが来ることもあります。もちろん、知ってもらえるのは嬉しいんですが、裸だったりノーメイクだったりする場所なので、私だとわかって見られるのはめちゃめちゃ恥ずかしいです」
“埼玉の彼女”は自虐じゃない!
将来的には埼玉に関連する仕事をすることが今の希望だ。埼玉のおすすめのデートスポットを聞いてみると……。
「川越です。街並みも綺麗で、歩いて見えるものについて話すだけで会話が続くといいますか、話題のネタには事欠かないと思います」
順調な活動の成果は、学費を返済したという事実にも表れている。
「留年した分の学費は、最初は親に出してもらっていたんですが、卒業後に稼いだお金で返していきました。自分のせいで負担を増やしてしまったと感じていたので、返済が終わったのは嬉しいです」
取材の終盤、筆者が「“埼玉の彼女”って秀逸な自虐ですよね」と言うと、間髪入れずに「自虐じゃないです!」という答えが返ってきた。これからも、久木田菜々夏は“埼玉の彼女”であることに誇りを持って生きていく。
【久木田菜々夏】
1999年6月9日生まれ、埼玉県出身。2021年からアイドルユニット「衛星とカラテア」のメンバーとして活動スタート。アイドル、タレント、インフルエンサーと幅広く活躍中。TikTokの「#埼玉の彼女」動画でフォロワー数26万人を突破
<取材・文/霜田明寛>
【霜田明寛】
1985年生まれ・東京都出身。約20年にわたりミスキャンパスを取材。就活本を3冊執筆し、自身のセミナーから100名以上のアナウンサーを輩出している。その他の著書に『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)『夢物語は終わらない ~影と光の“ジャニーズ”論~』(文藝春秋)など。X:@akismd
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