【#佐藤優のシン世界地図探索99】神に選ばれし3人の指導者①

神に選ばれたふたりの指導者。日米首脳会談での石破首相とトランプ米大統領(写真:時事)

【#佐藤優のシン世界地図探索99】神に選ばれし3人の指導者①

3月7日(金) 1:00

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神に選ばれたふたりの指導者。日米首脳会談での石破首相とトランプ米大統領(写真:時事)

神に選ばれたふたりの指導者。日米首脳会談での石破首相とトランプ米大統領(写真:時事)

ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

***

――佐藤さんからいただいた全資料を拝読しましたが、今の世界情勢の大枠は「石破(茂)さんが日本国首相になった。隣国の韓国では大統領が起訴までされる大混乱に。そんななか、石破首相がトランプ米大統領に会いに行き、プロテスタント・カルバン派同士でうまくいった」という理解で間違いないでしょうか。

佐藤 その通りです。

――続けます。

「今度は、トランプ米大統領が世界中に喧嘩を売り始める。イスラエルはガザ地区を『リビエラ』にし、ウクライナの行く末を米露だけで決めてしまう。すると、西欧は大混乱。そして、そんな外国の騒乱を見てしまった自民党の人達は、石破首相を予算成立後に引きずり降ろすつもりだったのが『もうちょっと首相やってくれない?』と一転する」。

こういうことでしょうか?

佐藤 そうです。日米会談の見方はそれで正しいです。

――それで、さらに大枠は「日本の野党が責任を取らないParty(政党)になっている」と、これがいまの世界情勢の大枠で良いでありますか?

佐藤 その通りです。

――では、個別に。まずはトランプ・石破の日米首脳会談です。石破首相がキリスト教のカルヴァン派であり、それを表現できたためうまくいった。これは、首相官邸のインテリジェンス(諜報活動)の勝利と見ていいですか?

佐藤 はい、そう見ていいと思います。要するに、総理の希望があっても、それで噛み合うかどうか判断するのはインテリジェンスです。なので、これは内調(内閣情報調査室)の成果です。

――石破首相はトランプに「あなたがここで暗殺者の弾丸を避けられたのは、神に選ばれたからだ」と言ったそうですが、このセリフをもしカルヴァン派の信徒ではない首相が言っていたら、トランプはブチ切れたわけですよね。



佐藤 そうです。だから、その点をちゃんと理解している人間かどうかというのは、良くわかります。

――その辺りを内調が調べて、問題ないと報告を上げたのですね。

佐藤 これはどういうことかと言うと、このセリフをバイデンに言ってはいけないということです。バイデンはカトリックだからです。カトリックの教義は「信仰と行為」であり、良い行動が大切です。

それに対して、改革派や長老派などのカルヴァン派の教義は「選び」。カルヴァン派的な考えの人は、「逆境の中において、試練があってもそれを乗り越える事が重要」です。そして「自分にしかない使命がある」と、こういう考え方をします。

――すると、石破首相の追い出しを画策していた自民党内の一派は、あの日米会談の成果を見てビビりまくったのですね。

佐藤 いや、ワケわからん!という状態です。「なぜうまくいったんだろう?」と理解していないんです。

――なぜわからないのですか?

佐藤 教養がないからですよ。

――なんと。

佐藤 こうした石破首相の宗教観は、別の形でも出ています。森友学園の文書改ざんに関する裁判も、その一例です。先日、大阪高裁は、財務省の関連文書の不開示を取り消しました。しかし、国は上告しないと決めました。

――はい、あれに関しては急展開であります。

佐藤 そして、亡くなった赤木俊夫さんの夫人・雅子さんが国会を傍聴しに来た時に、石破首相は「個人として墓参りをしたい」と述べたんです。

――確かに。

佐藤 これはね、神様が怖いんですよ。

――神様が......?



佐藤 国のために一生懸命働いて、その結果、失意の形で自死した人がいます。その人に対して、

「これは明らかに不正が行われているんだ。そこでもし、自分が総理大臣として判断を間違えた場合、その時には自分だけではなく日本の国家にも災いがある」

というのがカルヴァン派の考え方です。つまり、石破首相は自民党の党内力学より、神様が怖いというわけです。

「茂よ、そんな事をやった場合に、怒りに触れるぞ」と神の声が聞こえてきたから、墓参りもしたいし、森友文書も全て開示することになったんでしょう。そして、それが赤木夫人に通じていて、奥さんも「この人ならばやってくれる」となっていると。

でも、今度は逆に世俗の論理として考えみてください。森友問題の文書を開示して「こんな事が行なわれていた」と国民が知れば大きな問題となります。

しかし、その怒りは、石破政権に向かいますか?安倍政権に向かいますよね?

――はい、そうです。

佐藤 その森友文書が開示されたら、国益は毀損(きそん)しますか?

――毀損しません。

佐藤 そう、毀損しません。毀損されるのは安倍派の利益だけです。だから、結果として石破政権はうまく回っています。レベルの低い連中はこういうことがわからないから、「安倍派を陥れるために善人のふりをしている」とか言うんですよ。

しかし、そうではありません。石破さんには怖いモノがあるわけです。それは神です。だから、非業の死を遂げた人に対して不適正な扱いをすると、自分が罰せられるし、国家にひどい事態が起きると恐れて動いているんです。

――すごく神々しいことです。

佐藤 だから石破首相は、ある種、頑固になるとテコでも動かないでしょう。それが、カルヴァン派の特徴ですから。

――それは、ホワイトハウスのトランプにも伝わるのですか?



佐藤 トランプもそういう人です。「強い男だ」とトランプが石破さんに言ったのは、「神に選ばれた人間だ」ということがわかるからです。そして、それは「私も選ばれているからわかるんだよ」という意味でもあります。

――これは安倍首相のゴルフ仲間より、強い絆になりますね。

佐藤 全然違いますよ。これは、価値観ですから。

――信仰ですからね。

佐藤 多くの人々はその辺りが見えていませんが、そこが見えれば石破政権の強さがわかります。

――すると、これで長期政権の礎(いしずえ)が固まったのですか?

佐藤 まだそこは今後どうなるかわかりません。結局、石破政権の政策は高校の教育無償化にしても、基本的に国民の可処分所得が増える政策ですから。

――「楽しい日本」ということですね。

佐藤 そう、楽しい日本の土台を作るということです。その意味においては野党のコンセンサスも得ているから、国民から文句が出る政策はありません。さらに中国との関係を改善すれば、ビジネスチャンスにもなります。

――石破首相は日米首脳会談でうまく立ち回り、中国とバランスを見ながら、新しい日本の外交を作ろうとしている、ということですね。

佐藤 そう、まさにそうなんです。そしてそのタイミングで、トランプ劇場の舞台がアジアではなくヨーロッパになりました。だから皆、滅茶苦茶ですね。

――はい、そのようになっていますね。

次回「神に選ばれし3人の指導者②」へ続く。次回の配信は2024年3月14日(金)予定です。

取材・文/小峯隆生

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