3月6日(木) 19:20
基本的に相続税の申告をしっかりしていればタンス預金をすることに問題はなく、手続きも必要ありません。税務署がタンス預金を問題視するのは、「税金申告が必要にもかかわらずタンス預金としてお金を隠した場合」のためです。
相続税の場合、基礎控除額を超えていれば課税されます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」で、相続財産から引いて求めるため、基礎控除額よりも相続財産が多ければ税金申告が必要です。
納税をしていれば、タンス預金は手元にお金を置いておけるメリットがあります。ATMのようにお金を引き出すときに手数料もかからず、銀行やATMへ行く必要もありません。そのため、けがや病気などの緊急時に、すぐお金を用意できます。また、もし銀行が破綻したとしても、タンス預金があればその金額分は破綻の影響から守れる点もメリットでしょう。
今回は、以下の条件で、1000万円を相続したときの相続税額を計算します。
・法定相続人数は子ども2人(兄弟)
・次男が現金1000万円を相続、長男は4000万円の価額の家を相続
・遺留分は考慮しない
・控除は基礎控除のみ
また、国税庁によると、複数人が相続したときの相続税額の求め方は以下の通りです。
(1)相続財産から基礎控除を引く
(2)法定相続分通りに相続人が相続したとして(1)の金額を分ける
(3)それぞれの金額に税率をかけて計算したあと合計する
(4)(3)で求めた合計税額を、実際に相続した割合で分けた金額が、各相続人が負担する相続税額
今回のケースだと、基礎控除額は4200万円、相続財産は合計5000万円のため、課税金額は800万円です。
法定相続分通りに分けると2分の1ずつのため、400万円になります。400万円のときの税率は10%のため、1人当たりの税額は40万円、2人合わせて80万円です。
実際に相続した割合は長男が5分の4、次男が5分の1なので、相続税額が長男は64万円、次男は16万円になります。この金額をきちんと申告すればよいのです。
相続財産を少なく申告する目的でタンス預金にした場合、あとから追加で課税されるケースがあります。隠したとしても、故人の口座履歴やお金の動きを見て不審な点があれば、税務署にいずれバレるでしょう。
悪質だと判断されると、課される税金の税率が重くなる場合もあります。タンス預金にするのは、申告が終わっているお金のみにしましょう。
タンス預金は空き巣や強盗に狙われるリスクもあります。盗難防止策としては、封筒や入れ物に収納した現金をそのまま保管せず、重い金庫などに入れておくと盗まれにくくなるでしょう。
また、銀行に預金したお金は災害でもなくなりませんが、現金で保管しているタンス預金は火事や津波などでなくなることがあるでしょう。タンス預金を残したまま誰にもその存在を告げずに自身が亡くなると、親族間で相続トラブルに発展する可能性も少なくありません。
タンス預金をするときは、こうしたトラブルの対策も考えておいた方がよいでしょう。
タンス預金にするお金は、税金申告をしっかりしていれば特別な手続きは必要ありません。タンス預金はすぐにお金が用意できたり銀行の破綻からお金を守れたりといったメリットもあります。しかし、紛失したり盗まれたりといったリスクもあるので、タンス預金をするときは扱いに注意が必要です。
もし法定相続人数が2人で、5000万円のうち1000万円を相続したとすると、今回の条件では、負担する相続税額は16万円です。ただし、条件によって税額は変わる可能性があります。
また、節税目的でのタンス預金はやめましょう。税務署にいずれバレる可能性が高く、追加でペナルティーの課税が行われる場合があります。
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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