CL優勝予想後編
3月4日(現地時間)から決勝トーナメントが始まる、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の優勝予想。この10年で5度優勝のレアル・マドリードを押しのけ、識者が推したクラブはどこか?
前編「レアル・マドリードを本命に挙げた識者たちの見解」>>
CLベスト16の組み合わせ
【現状の最右翼はリバプールか】
中山 淳(サッカージャーナリスト)
<優勝予想>
本命◎:リバプール
対抗○:レアル・マドリード
穴▲:パリ・サンジェルマン
トーナメント表で言うと、アーセナル、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、パリ・サンジェルマン、リバプールの強豪5チームが属する山は、優勝を狙えるチームがひしめく激戦区。それに対して、もう一方の山で優勝候補と言えるのは、バルセロナとバイエルンくらい。それで言えば、バルセロナとバイエルンが決勝の舞台に立つ可能性が高く、優勝のチャンスもあると見ていいだろう。
プレミアリーグで首位を快走するリバプールphoto by Getty Images
ただし、優勝できるかどうかとなると、優勝候補は激戦区の強者たちに絞られる。とりわけプレミアリーグで首位を快走するリバプールは、今シーズンから指揮を執るアルネ・スロット監督が前任者ユルゲン・クロップの遺産をうまく活用しながら、よりチーム戦術の精度を高めた印象だ。
ポゼッション方法も多彩で、何よりゲームプランを含めたスロット監督の采配が光る。エースのモハメド・サラーもゴール量産が止まらず、守備にも安定感があるとなれば、やはり実力的にリーグフェーズの首位チームが、現状では優勝候補最右翼か。
対抗馬は、百戦錬磨のカルロ・アンチェロッティ監督率いるレアル・マドリードだ。昨季王者は直近の10年で5度もトロフィーを掲げるなど、とにかく勝つための戦い方を熟知しているのが大きい。これだけ負傷離脱者が続出しているなか、冬の移籍市場で戦力補強をしなくても結果を残せていることが、その証明と言える。
本来の調子を取り戻して目下ゴール量産中のキリアン・エムバペを筆頭に、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガム、ロドリゴで形勢する前線の超強力カルテットは、現在世界最高レベル。どんなに苦戦しても最後に勝利するマドリディズモが健在となれば、優勝する可能性は高いと見る。
ダークホースとして挙げたいのは、16チームのなかでボールを握る能力が最も高いレベルにあるパリ・サンジェルマンだ。
ビッグネームの個人能力に頼って優勝を目指していた時代と違い、現在はルイス・エンリケ監督の戦術をひたむきに遂行する若いタレントが揃い、特にヴィティーニャ、ジョアン・ネベスら中盤の選手は献身的によく動くうえ、創造性も抜群だ。
唯一の不安材料だった決定力も、冬場からウスマン・デンベレが覚醒してゴールを量産。仮にデンベレの決定力が持続するとすれば、旋風を巻き起こす可能性は大きいと見ていいだろう。
その意味でも、ラウンド16のリバプール戦は、優勝を占ううえで見逃せない試合になりそうだ。
【バルセロナが優勝する順番か】
杉山茂樹(スポーツライター)
<優勝予想>
本命◎:バルセロナ
対抗○:レアル・マドリード
穴▲:リバプール、アーセナル
実力で見れば、優勝候補の筆頭はレアル・マドリードとなる。2番手はリバプールで3番手がバルセロナ。アーセナルが4番手、となる。
レアル・マドリードはリーグフェーズ11位。リバプール(1位)、バルセロナ(2位)、アーセナル(3位)に比べると見劣りする。だがシーズンは長い。問われるのはこれからの調子だ。むしろ前半から飛ばしていないところに妙味を覚える。
布陣のなかにキリアン・エムバペが綺麗に収まるようになったことが大きい。ヴィニシウス・ジュニオールとの2枚看板はもとより、ジュード・ベリンガム、ロドリゴを加えたアタッカー陣4人も、欧州一のスケールを誇る。近年はしぶとさを最大の売りにイングランド勢に対抗してきた同チームだが、今季はストレートに戦力で優位に立つ。
受けて立つチームは危ない。レアル・マドリードは、悪い意味で(相手から)横綱相撲を強いられるかに見えるが、リーグフェーズでベスト16へのストレートインを逃しプレーオフに回ったことで、出遅れた印象を与えることができた。打倒レアル・マドリードで他のクラブが一致している様子ではない。強さをカモフラージュすることができている。ターゲットになっていないのだ。
実際、リバプールがかなり強そうに見える。監督が代わり、サッカーの質が若干変わっただけではない。加えて強くなった。遠藤航の出場時間が減ったことは競争が厳しくなり、チーム力が上昇した結果だ。
バルセロナは右ウイングのラミン・ヤマルに何かと注目が集まるが、輪を掛けていいのが左のラフィーニャだ。両ウイングが2枚看板を形成している点がバルサの強みだ。
だが、推したくなる一番の理由は順番だ。CL優勝はビッグクラブで持ち回るものとの歴史的な前提に立てば、そろそろバルサの番なのだ。最後にCLを制したのは2014-15シーズン。10年前だ。CL史に従えば、眠りから覚めるタイミングなのだ。
今回の組分けが輪を掛ける。バルサに思いきり運を感じる抽選結果となった。レアル・マドリード、リバプール、アーセナルがトーナメントの同じ山に入ったため、バルサは彼らと決勝まで対戦がない。優勝チームを予想する際に、これは大きなファクターになる。冒頭で述べたレアル・マドリード、リバプール、バルセロナ、アーセナルの順番は、抽選結果を踏まえると以下のように変化する。
本命(◎)バルサ、対抗(○)レアル・マドリード、穴(▲)リバプール、アーセナル。
スペイン対決。CL決勝で史上初のエル・クラシコが実現する可能性ありと見る。軸はバルサ。バルサの相手探し。競馬の見出しに習えばそんな感じだ。となれば、レアル・マドリードやや有利と予想するが、決勝までにレアル・マドリードが姿を消している可能性を勘案すれば、本命はやはりバルサで行きたくなる。
サッカーの中身的には、オーソドックスな攻撃的サッカーがメインストリームを歩むとみる。目を凝らしたい。
【関連記事】
◆【フォーメーション】プレミアリーグ注目5クラブの最新布陣 リバプールの独走、三笘薫の活躍は続くか?
◆【布陣】レアル・マドリード、バルセロナ、バイエルン...注目クラブの今季後半戦の最新フォーメーション
◆【注目記事】プレミアリーグに冠たるモハメド・サラー ストリート育ちの最後の世代になるかもしれない別格の名手
◆【戦術分析】今季のバルセロナがあくまで貫く超攻撃的「ハラキリ」サッカー
◆【写真多数】ダニ・オルモ、ビルツ、サカほか欧州サッカートップスターの美しきパートナーたち