支え続けた妻から夫へ。『35年目のラブレター』に散りばめられた人生を豊かにする名言集

何気ない日常を豊かにしてくれる!『35年目のラブレター』に登場する名言を紹介/[c]2025「35年目のラブレター」製作委員会

支え続けた妻から夫へ。『35年目のラブレター』に散りばめられた人生を豊かにする名言集

3月2日(日) 9:30

映画『35年目のラブレター』(3月7日公開)は、ある夫婦の実話を映画化したヒューマンドラマ。戦時中に生まれ十分な教育を受けることができず、読み書きができないまま大人になった西畑保は、最愛の妻、皎子(きょうこ)へ感謝のラブレターを書くために、夜間中学に通い一から文字を習い始める。現代の西畑夫妻を笑福亭鶴瓶と原田知世、若い時代を重岡大毅と上白石萌音が演じることでも話題となっている本作では、劇中の至るところに、長年にわたって夫を支え続けた皎子の、優しさにあふれた言葉の数々が登場。何気ない毎日がもうちょっとだけ楽しく見えたり、人生で大切にしていきたいと思える皎子の“名言”を、夫婦の一途な愛が胸にしみてくるエピソードと共に紹介する。
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■「変わりないのは、悪いこともない言うことやな」

ある年のクリスマス、保は自転車で寿司屋の仕事から帰り、皎子はタイプライティングの仕事を終え、一緒にコタツで暖を取る。街やテレビはキラキラと賑わっているのに、保と皎子はいつも通りなんの変哲もない一日を送っていた。

「変わりないのは、悪いこともない言うことやな」。何十年も共にクリスマスを過ごしてきた保と皎子だからこその言葉

そんな自分たちを、ちょっと自虐気味に「クリスマスや言うのに、いつもと変わらんな」と皎子に話しかけた保に、皎子がすかさず返したこの一言には、そこはかとないユーモアが漂い、誰もが心の中で思わず「たしかに、そうだな」と相槌を打ちたくなるはず。瞬時に返したそんな皎子の言葉からは、深い思いやりと人生の真理が宿っていることを、映画を観進めていくとジワジワと感じてくるだろう。保は本当はどこかで、なにか特別なことをして妻を喜ばせたい気持ちもある。それを理解している皎子は、特別なことをしなくても十分に自分は幸せだと、慎ましい自分たちの生活を軽やかに肯定してみせたのだ。皎子の優しさにあふれた気持ちがじんわりと伝わってくる。皎子の指摘どおり、いつもと変わらない日々を過ごせるということは、つまり悪い出来事や心配事がなにも起きてないということ。心穏やかに過ごせる、そんな小さな幸せに気付くことができること、感じられること、感謝できることこそが人生を豊かに輝かせるのだと、映画を観る我々にも気づかせてくれる。

■「おいしい。心ってホンマに味にでるんやね」

読み書きができないというハンデを、心配りで乗り越えてきた保

保は、大人になってからも“読み書きができない”ことでずっと苦労してきた。どんな仕事についても上司や同僚から蔑まれ、バカにされたりイジめられて仕事が長続きしない。しかし真面目で誠実、かつひたむきな人柄を見込まれて寿司職人となった保は、自分を拾ってくれた大将(笹野高史)に勧められ、気が進まぬままお見合いをすることに。最大の憂鬱は、やっぱり“読み書きができない”こと。しかし、お見合いの席で保は皎子に一目惚れをする。皎子のことを好きになるほど、“実は読み書きができない”と打ち明けることができない保は、誠実な人柄ゆえに負い目を強く感じながらも、恋心に負けて何度もデートを重ねていく。

タイピストである皎子は、言葉の大切さをなによりもわかっているのかもしれない

どこかで“諦めなければ…”と自分に言い聞かせていた時、皎子が寿司屋を訪れる。保は動揺しつつも、皎子のために「心を込めて握ります」と想いを込めて寿司を握る。そして、保が握った寿司を食べた皎子が、無言で手を止め涙を流しながら言ったのがこの言葉だった。耳心地のいいことは決して言えない2人だが、朴訥とした言葉や態度の一つ一つから、誠実さがにじみ出ている。それぞれに複雑な過去を背負っている2人は結婚に躊躇するが、少しずつ心が通い惹かれ合っていく姿と、また不器用ながらも真っ直ぐに相手と対峙する表情を、ぜひ見逃さずに堪能して欲しい。緊張感のある忘れ難いシーンだ。


■「嫌いなもんも、ええとこ3つ見つけたら好きになるよ。試してみたら?」

デート中の食事でトマトに手を付けようとしない保を見て、皎子が提案したワザありな一言。「赤い」「ツルツルしている」など、到底“味”とは関係のないトマトの魅力を挙げる保だったが、トマトに対する肯定感はだいぶアップした模様。世の親御さんたちも、好き嫌いをしがちな子どもに無理矢理食べさせるのではなく、“この方法なら楽しく克服できるかも”と目から鱗が落ちるはず。それはもちろん食べ物に限らず、すべてのことに通じると言える。何事も“ちょっと苦手”とか“ちょっと嫌い”だからと言って、すべてを拒否・拒絶してしまうのではなく、どんなコトや人やモノにも必ず“いい面”があるのだと、別の角度から見てみることで受け入れる姿勢が変わっていくことを教えてくれた皎子のアイディアには感服しきり。
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多角的にいろんな面を見て新たな魅力に気づいたり、見過ごして来たいい点に気付いたりすることができれば、きっと人生はより豊かになることだろう。皎子のユニークな視点やアイディア、ポジティブな姿勢を示すこの言葉は、その後の保の人生にも大きく影響を与えていく。保が、夜間中学で知り合う若い同級生に皎子のこの教えを伝授するシーンも。苦手なモノや人を嫌いになる前に、まずは“いいところを3つ見つける”こと。これすなわち人生を輝かせる秘策なのだ。

■「つらかったな。これから一緒に頑張ろ」「今日から私があんたの手になるわ」

結局、読み書きができないことを打ち明けられないまま皎子と結婚した保は、幸せな生活を送りながらも、日常の様々な場面で小さな嘘や小芝居を打つ羽目に。皎子から万年筆を贈られても、笑顔を引きつらせながら喜んで見せ、試し書きさえ皎子の前ではすることができない。自己嫌悪に陥りながらも必死でやり過ごしていたが、結婚して半年後、隠しきれない事態に遭遇する。
大切な皎子からの手紙を読むことができず、涙する保の姿に胸が締めつけられる


自分の名前さえ満足に書けず、自棄っぱちで感情を爆発させた保に対し、皎子はそれまでの保の悲しみや苦しみ、その苦労に思いを馳せたのだろう。「つらかったな」という労わりの一言が心に染みわたったであろう保の心境を思うと、目頭がジワジワと熱くなってしまう。“読み書きができない”ことを隠していたことに怒ることなく、なにより保の苦しむ心に寄り添おうとする皎子の人間力には心底、脱帽せずにはいられない。そして保の心にのしかかって来た重しを取り除き、これからも保を隣で支え続けようという決意、一緒に人生を歩んでいく決意を示すこの言葉は、2人の人生においても映画においても、非常に重要かつ感動的なシーンである。

■「つらいことも、ちょっとのことで幸せや」

保は皎子に感謝のラブレターを書くため、一大決心をし夜間学校に通い始める

この言葉も皎子の閃きや豊かな考え、視界の広さ、ユーモアや人間の大きさを示す金言だ。定年退職した保には、心に秘めた“どうしても叶えたい夢”があった。それは、“字”で苦労を掛けてきた最愛の妻に、“字”で感謝を伝えたい、ということ。そこで、保は一大決心して夜間中学に通い始めることに。年齢や性別、国籍も異なる様々な人たちが通う夜間中学に入学した保は、“妻にラブレターを書きたい”と参観していた皎子の前で伝える。しかし字の書き方のみならず、勉強の仕方自体を学んでこなかったうえに、60歳を超えた保の学習はなかなか進まない。そんななかで、担任の谷山恵(安田顕)をはじめ、いろんな事情を抱えた同級生たちとの出会いは、保の優しく大らかな人間性や頑張りを、さらに輝かせていく。

なかなか上達しないラブレターだったが、徐々に形になっていく

数年後、ついに保は生まれて初めての手紙――皎子へのラブレターを書きあげる。つたないながらも一字一字、心を込めて文字をしたためる保の姿は劇中でも印象的なシーンだ。とはいえ、初めての手紙にはいろいろな間違いが。読み終えた皎子は「幸せ」と書いたつもりが正反対の意味を持つ漢字「辛」になっているのに気づく。「上に一本書き足すと、“幸”の字になるよ。つらいことも、ちょっとのことで幸せや」とアドバイスするシーンは、思わず「本当だ!」とウキウキしながら、さすが皎子と唸ってしまう。それは漢字の誤字の指摘に留まらず、映画を観る誰しもに、ちょっと見方を変えるだけで人生が豊かになること、つらいことも乗り越えれば幸せになれることを教えてくれるから。“妻にラブレターを書く”という夢を叶えた保の姿を通して、“いくつになってもやる気さえあればなにごとも遅いことはない”という可能性を、映画を観る私たちに感じさせ、心に希望を宿してくれる。

ピックアップした名言以外にも、本作では保と皎子を支える様々な人たちが、そっと人生や心を豊かにしてくれるような言葉を紡いでいる。相手を想う気持ちの尊さや温かさに気づかせてくれる本作を観て、改めて人との関わり方を考えてみるきっかけにしてみてはいかがだろうか?

文/折田千鶴子


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