父が「認知症」の診断を受けたので資産の管理が心配です。資産を勝手に動かすと「違法」になるのでしょうか?

父が「認知症」の診断を受けたので資産の管理が心配です。資産を勝手に動かすと「違法」になるのでしょうか?

2月28日(金) 17:20

親が認知症になると通帳や財布の管理、金額の大きな買い物の契約などがおぼつかなくなり、資産管理について家族が不安を感じる場面が多くなります。そのようなときの備えとして、「親の代わりに自分が管理すべきでは?」と考える人も多いでしょう。 しかし、名義人以外が資産を勝手に動かすと、法的に問題になる場合があります。本記事では、認知症の親の資産管理について、家族が行うことが認められるかや適切な対処法をまとめました。

認知症の親の資産を勝手に動かすと罪に問われる可能性がある

結論から述べると、たとえ認知症になって自分で管理ができなくなった親の資産であっても、子どもが勝手に動かすと罪に問われる可能性があります。
 
認知症になると、通帳や財布などの置き所を忘れる、計算ができなくなる、契約書などの内容を理解できなくなるなどの症状が現れることがあり、金銭の管理や不動産売買などの契約行為に支障が出ます。そのため、家族が資産の管理能力に不安を感じて、代わりに管理したいと考えるのも無理はありません。
 
しかし、金融機関は原則として、預貯金などの引き出しや口座の解約を名義人本人にしか認めていません。金融機関所定の手続きを経ずに親の預貯金などを勝手に引き出すと、窃盗や横領に当たる可能性があるため注意が必要です。
 
通常、金融機関は名義人が認知症を発症したことを知ると、口座取引に制限をかけます(いわゆる口座凍結の状態)。そうなると、成年後見人など法的に認められた代理人を立てるまでは、預貯金の引き出しや口座の解約はできなくなります。
 
また、土地家屋などの不動産資産についても、売買などの契約ができるのは名義人本人のみで、家族は勝手に動かせません。名義人が認知症になり意思能力が失われると契約行為が無効とみなされるため、法的な代理人を立てるまでは実質、資産が凍結された状態になります。
 

金融機関によっては家族による預貯金の引き出しなどが認められる場合も

親が認知症になると、家族の手で資産が一切動かせなくなるかというと、そうではないケースも存在します。
 
全国銀行協会は2021年に、認知判断能力が低下した高齢顧客や代理人との金融取引を行うときの参考になるよう、金融取引の代理等に関する考え方などを取りまとめた声明を発表しました。声明では、主に次のような指針が示されています。

●基本的には親族等に成年後見制度等の利用を促し、後見人等を介して取引を行う
●やむを得ず顧客本人と取引をする場合は、使途などを確認する
●本人からの代理権付与および銀行への代理人の届け出があれば、親族などによる取引に応じることもできる(金融機関ごとの判断)
●成年後見制度を利用していない(できない)場合、医療費の支払いなど本人のために使われるお金に関しては、代理権のない親族との取引に応じる場合もある(金融機関ごとの判断)

つまり、金融機関にもよるものの、本人のための支払いに必要な場合などは、家族が代理人となって預貯金の引き出しなどの取引ができる場合があるのです。家族による取引が可能かどうかや必要な手続きを、金融機関に確認してみましょう。
 

認知症の親の資産管理は成年後見制度の利用が基本

認知症ですでに判断能力を失った親の資産を動かすには、原則として「成年後見制度」の利用が必要です。
 
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が十分ではない人の権利を守る人(後見人等)を選び、法的に支援を行う制度です。後見人が選ばれると、本人に代わって財産管理や契約の締結・取り消しなどを行ってくれます。
 
成年後見制度にはいくつかの種類がありますが、判断能力がすでに失われている場合、選択できるのは家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」のみです。親の判断能力がまだ十分に残っているときであれば、後見の範囲や後見人になる人をあらかじめ自分で選んで契約に定めておける「任意後見制度」の利用もできます。
 
また、判断能力がある場合には、家族に財産管理などを託す契約を結び、裁判所を介さずに手続きできる「家族信託」などの選択肢もあります。家族で納得のいく管理ができるよう、親が認知症になってから対処するのではなく、元気なうちに老後の財産管理について対策をとっておくとよいでしょう。
 

親が認知症になったときの資産管理について正しい手続きを知っておこう

親が認知症を発症すると、判断能力の低下の程度にもよるものの、本人や家族の一存で資産を動かすことが難しくなります。勝手に資産を動かすと、罪に問われるケースもあるため注意しましょう。銀行所定の手続きで代理人を立てておく、成年後見制度を利用するなど、正しい対処法を知り、できるだけ早い段階で対策をとることが大切です。
 

出典

一般社団法人全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について
内閣府 政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
最高裁判所 裁判手続 家事事件Q&A
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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