プレミアリーグ今冬の移籍動向を専門家に聞く「1億ユーロ超の移籍金は少なくなりつつある」

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プレミアリーグ今冬の移籍動向を専門家に聞く「1億ユーロ超の移籍金は少なくなりつつある」

2月28日(金) 22:10

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プレミアリーグ移籍事情前編

FIFAによると、2024-25シーズンの冬のトランスファーマーケットは過去最高の取引額を記録した。その主役を担ったマンチェスター・シティや、日本人選手が在籍するクラブが複数ある英国の最新事情について、世界最大の移籍情報サイト『Transfermarkt.com』の英国担当ステファン・ビエンコフスキ氏に話を伺った。ビッグディールから注目されている日本人選手、世界の市場の傾向などを、エキスパートはどう見ているのか。

今冬にマンチェスター・シティに加入したオマル・マルムシュphoto by Getty Images

今冬にマンチェスター・シティに加入したオマル・マルムシュphoto by Getty Images





【今冬の移籍市場はマンチェスター・シティの独壇場】 ――まずはプレミアリーグの今季の冬の移籍市場について、印象を聞かせてください。

「興味深いマーケットでした。主役はマンチェスター・シティ、というよりも彼らの独壇場と言ってもいいような市場でした。『Transfermarkt.com』にも掲載していますが、今冬の市場でシティの支出額は推定2億1800万ユーロでした(FWオマル・マルムシュ、MFニコ・ゴンサレス、DFアブドゥコディル・クサノフらを獲得)。次点のウルバーハンプトンの5000万ユーロ(DFエマニュエル・アグバドゥらを獲得)と比べても、4倍以上となりますし、支出がゼロだったクラブは7つもあります。

冬の移籍市場はもともと、シーズンの前半戦にうまくいかなかったチームが後半戦に修正する機会として捉えられていますが、今回はまさに前半戦で苦しんだシティが、かつてないほどの出費をしました。次点のウルブスは残留争いをしていますし、4875万ユーロを使ったブライトン(MFディエゴ・ゴメスらを獲得)も後半戦に巻き返して来季の欧州カップ戦の出場権を手にしたいところ。

3800万ユーロを費やしたアストン・ビラの動き(FWドニエル・マレンらを獲得し、FWマーカス・ラシュフォードやFWマルコ・アセンシオらをローンで迎えた)は、サウジアラビアのアル・ナスルに7700万ユーロでFWジョン・デュランが売れたからこそ、と言えるでしょう。イプスウィッチは降格圏内から抜け出すために、2610万ユーロを投じたと思われます(FWジェイデン・フィロジーンらを獲得)」

――今冬の世界全体の移籍金の最高額はそのデュランの推定7700万ユーロで、次点はマルムシュを獲得したシティがフランクフルトに支払った7500万ユーロでした。

「プレミアリーグのクラブは利益と持続可能性のルール(PSR)を守らなくてはならないため、以前のように巨額のオファーを出さない傾向にあります。例えば、レバークーゼンのフロリアン・ビルツには多くのビッグクラブが注目しているはずで、かつてなら1億5000万ユーロのオファーをするようなクラブがあったでしょう。でも今は、1億ユーロ超の移籍金は少なくなりつつある。今季は夏と冬を通じた最高額が、デュランですから」

【サウジアラビアへの移籍は落ち着いたのか】 ――ただ、今回のウィンドウでプレミアリーグの選手がサウジ・プロリーグへ移籍したのは、そのデュランだけだったと思います。2023年からクリスティアーノ・ロナウドやカリム・ベンゼマ、ネイマール、サディオ・マネ、リヤド・マフレズら、ビッグネームを一気に獲得していたサウジアラビアですが、少し落ち着いたということでしょうか?

「私はサウジアラビアのフットボールの専門家ではないのですが、まず同国政府の意向もあって、国内のフットボールに巨額投資を始めたのが、2年前ですよね(2023年1月にC・ロナウドがアル・ナスルに加入)。その半年後には、ベンゼマ、ネイマール、マネ、マフレズらが、昨夏にはピエール=エメリク・オーバメヤンやイヴァン・トニー、ジョアン・カンセロらが続きました。

そう考えると、確かにこの冬には欧州からサウジへの動きは急減したように見えます。同僚や同業者などに聞いたところ、サウジ・プロリーグのチームの多くはすでに外国籍枠(各クラブに10枠)がいっぱいで、国外から新戦力を迎えるスペースがあまりないそうです。それも一因でしょう」

――戦略的にターゲットをスーパースターから若手に変えたのではないかという報道もありましたが、実際はどうなのでしょうか?確かにここ2回のマーケットでは、現在21歳のデュランほか、複数の若手がサウジアラビアのクラブに買われています。

「その流れはありそうです。外国籍枠の都合もあると思いますが、最近は誰もが知るようなビッグネームがサウジアラビアへ移籍するケースは減っています。理由はいくつか考えられます。

選手からすれば、若いうちに巨額のサラリーを受け取って、生活を安定させてから欧州のトップレベルに戻ることができる。リーグにとっては、クオリティの高い若手の活躍により、全体の活性化や健全な継続性が見込めます。クラブとしては、若手を獲得して彼らが成長した後に高額で売却できれば、それに越したことはない。

とはいえ、アル・ヒラルがモハメド・サラー、アル・ナスルが三笘薫に巨額のオファーを出したように(どちらも契約には至らず)、今もサウジアラビアのクラブはビッグネームの獲得を諦めたわけではないでしょう」

【トップ中のトップはこれからも欧州にとどまる】 ――日本のクラブとしては、AFCチャンピオンズリーグ・エリートの決勝で対戦する可能性もあるので、無関心ではいられません。サウジアラビアからはすでにネイマール(サントスへ)やジョーダン・ヘンダーソン(アヤックスへ)といった選手や、スティーブン・ジェラード監督(アル・イテファクを退団)らが去っていますが、チーム編成を見るとトップ5のクラブは実に絢爛豪華です。一時期の中国のように、短期間のブームで終わるようなことはなさそうですか?

「どちらも政府の号令のもと、フットボールに巨額の投資を始め、多くのビッグネームを集めたのは同じですが、おそらくサウジアラビアのほうが長期的な展望に立っているように見えます」

――『サウジ・ヴィジョン2030』という国家計画があり、経済や社会、文化の多様化を目指していて、フットボールをはじめとするスポーツも、積極的に発展させようとしています。

「砂漠に巨大な街やスキー場を建造したりするくらいなので、とてつもない計画でしょう。フットボールは魅力的なコンテンツとして、そのなかでも重視されているようです。加えてサウジアラビアは中国よりも、フットボールに熱を入れる人が多い印象です。気候条件はフットボールに適しているとは言えないかもしれませんが、サポートするカルチャーはしっかり存在しているのではないでしょうか。

とはいえ、やはりトップ中のトップの選手は、これからも欧州にとどまるでしょう。実際、キリアン・エムバペやアーリング・ハーランド、ビルツ、ヴィニシウス・ジュニオール、ブカヨ・サカらは欧州のトップクラブから出て行こうとはしません。選手としては、より多くの報酬よりも、最高のレベルでプレーし、至高のタイトルを手にすることが最大の目標でしょうから」

後編「移籍市場で注目の日本人選手は?」につづく>>

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