『エクソシスト3』キャストが違う“別バージョン”が初公開!4KレストアUHDを開封レビュー

封印された『レギオン』が解き放たれる…『エクソシスト』の創造主が生みだした正統続編の真の姿とは/[c]Morgan Creek Productions, Inc. ALL RIGHTS RESERVED『エクソシスト3』4Kレストア UHD+Blu-ray デラックス版発売中

『エクソシスト3』キャストが違う“別バージョン”が初公開!4KレストアUHDを開封レビュー

3月1日(土) 12:00

少女リーガンに取り憑いた悪魔と2人の神父の壮絶な死闘を描き、1970年代に隆盛を極めたオカルトホラー映画ブームを牽引。世界中で“現象”ともいえる大ヒットを記録し、ホラー映画としては異例のアカデミー賞作品賞にノミネートされた『エクソシスト』(73)。その原作者であるウィリアム・ピーター・ブラッティが、自ら監督と脚本を務めた『エクソシスト3』(90)の4Kレストア UHD+Blu-rayデラックス版、4Kレストア Blu-rayデラックス版、Blu-rayが、2月26日にリリースされた。
【写真を見る】悪魔祓いシーンは存在しなかった?『エクソシスト3』劇場公開版と『レギオン』はどう違うのか

4K UHD+Blu-rayデラックス版はアウタースリーブケース付きの3枚組!

今回のパッケージ化の最大の目玉となっているのは、長年にわたって“存在しない”とされてきた幻のオリジナルカット版『THE EXORCIST III: LEGION』(以下『レギオン』)が満を持して初収録(デラックス版商品のみ)されたことだ。そこで本稿では、『レギオン』とはどのようなバージョンなのか紹介しながら、本商品の内容を詳しくチェックしていこう。

■再撮影の末にお蔵入り…凄みと芸術性が増した幻のオリジナル

ブラッティが特に思い入れのあるキャラクターだと明かしている、キンダーマン刑事を主人公にした本作。なお、第1作で同役を演じたリー・J・コッブは1976年に亡くなっており、本作では『パットン大戦車軍団』(70)でアカデミー賞を受賞辞退したことで有名なジョージ・C・スコットが演じている。

1990年を舞台に、1作目で生き残ったキンダーマン警部を主人公にした『エクソシスト3』

1990年、アメリカ東部の街で少年の首なし死体が発見される。その捜査にあたったキンダーマンは、15年前に起きた同じ手口の連続殺人事件“双子座殺人事件”を思い起こすのだが、その犯人はすでに処刑されていた。さらに2人の神父が同じように殺害され、そのうち1人はキンダーマンの親友のダイアー神父(エド・フランダース)だった。そんななか、ある精神科医から担当する患者のなかに自分が「双子座殺人鬼」だと名乗る男がいることを告げられたキンダーマンは、その人物に会いに行くことに。

第1作の大ヒットの後、リーガンに再び悪魔が取り憑くという内容の『エクソシスト2』(77)が製作されたが、興行的にも批評的にもまったく振るわず。同作の執筆依頼を断っていたブラッティは、その出来に不満を抱き、自ら新たな続編のアイデアを構築したという。ウィリアム・フリードキン監督との再タッグで映画化を目指したものの、フリードキンがプロジェクトから去ったため断念し、1983年に「Legion」というタイトルで小説として発表した。

“双子座殺人鬼”による連続殺人は、悪魔の仕業なのか…?

その後、モーガン・クリーク・プロダクションが小説の映画化権を獲得。当時すでに『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』(80)で監督業に進出していたブラッティが自らメガホンをとることになり、撮影は大きな問題もなく進行。しかし、完成した作品の試写を観たモーガン・クリークの上層部は首を縦に振らず、制作費を上乗せしたうえでブラッティに再撮影を要求したという。

その要求の内容は、第1作でカラス神父役を演じ、今作でも当初は“双子座殺人鬼”と患者Xを演じる予定だったジェイソン・ミラーを復帰させること。そして「エクソシスト」らしい悪魔祓いのシーンを追加すること。ブラッティは「不必要で作品の本質を変えてしまう」と憤ったものの、やむなくそれを受け入れ、タイトルも『レギオン』から『エクソシスト3』に改題され劇場公開。興行的に伸び悩び、批評家からの評判もまずまずに終わった。

結果的にお蔵入りとなってしまった『レギオン』。ファンの間では決して観ることのできない“幻のバージョン”として語り継がれていたのだが、2015年頃に当時の関係者が保管していた作業用VHSなどが発見され、復元が進められた。そして2017年にブラッティが亡くなる直前にその作業が完了。海外ではすでにBlu-rayに収録されていたが、今回満を持して字幕がつけられた状態で日本初上陸を果たした。

『エクソシスト』でカラス神父を演じたジェイソン・ミラー。劇場公開版では物語のキーパーソンに扮した

大きな違いとしては、先述の追加要素であるラストの悪魔祓いシーンがないこと。また、劇場公開版ではジェイソン・ミラーが患者Xを、ブラッド・ドゥーリフが双子座殺人鬼を同じシーンのなかで入れ替わるように演じていたが、『レギオン』ではどちらもドゥーリフが一人二役で見事に演じ分けている。『カッコーの巣の上で』(75)で注目を浴び、「チャイルド・プレイ」のチャッキー役で有名なドゥーリフの、卓越した声色の使い分けなど、彼の俳優としての凄みがより堪能できるバージョンとなっている。

なお『レギオン』本編は、4K修復された劇場公開版の素材とつなぎあわせるかたちで収録されているので、画質や画面比が切り替わったところが劇場公開版との違いであると一目瞭然。それだけでなく、オープニングからラストに至るまでシーンの順番が入れ替わっているところも多数あるので、そこは両方のバージョンを見比べながら確認するのがいいだろう。

■特典はあわせて3時間超!『エクソシスト3』を隅々まで堪能

『レギオン』の本編ディスクには、特典としてブラッティへの音声インタビューが収録されている。こちらは『レギオン』の本編映像と同時再生される仕様で、製作の裏話や「エクソシスト」という作品がブラッティの人生にどのような影響をもたらしたかなどが、約100分にわたり語られていく必見の内容に。

『レギオン』の本編ディスクには関係者のインタビューによるメイキングが収録

また、スタッフやキャストなど関係者のインタビューと共に制作の舞台裏に迫った『死よ、誇る勿れ:メイキング・オブ・エクソシスト3』は、本編とほぼ同じ100分超の充実した内容となっている。どちらの特典も、劇場公開版と『レギオン』それぞれの本編を観た後にチェックするのがおすすめだ。

もちろん劇場公開版の本編ディスクも必見。収録されている本編は、最新の4Kレストアマスターが使用されており、暗部のシーンまでくっきりと隈なく確認できる仕上がりに。これまでVHSやDVDなどで本作を鑑賞したことがあるという人も、新たな発見ができること請け合いだ。さらに音声も2023年にレストアされた5.1chと2.0chのオリジナル英語音声が収録されており、日本語吹替音声は1991年にリリースされたVHS版と、1994年に「ゴールデン洋画劇場」で放送されたテレビ放送版の2種が収録されている。

【写真を見る】悪魔祓いシーンは存在しなかった?『エクソシスト3』劇場公開版と『レギオン』はどう違うのか

そしてボーナスコンテンツには、削除シーン・別カット・音声不良素材集から、削除されたプロローグ、インタビュー集、オリジナルの劇場予告編やテレビスポット、日本版の予告編集など、約82分にわたる特典映像がたっぷり収録。こちらも見逃せない内容となっている。みっちりと文字が敷き詰められた解説リーフレットは、映画評論家の山崎圭司によるプロダクションノートと、映画監督の篠崎誠による作品解説、さらに山崎と高橋ヨシキの対談を掲載。

異なる2つの本編バージョンを堪能でき、そして何通りもの視点で作品を深部まで味わい尽くすことができる今回のパッケージは、まさに『エクソシスト3』ファン必携の決定盤。是非とも入手して、自宅のホラーコレクションに加えてみてはいかがだろうか。
2つのバージョンを観比べながら、『エクソシスト3』の世界に浸ろう!


文/久保田 和馬


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