モロニー戦でも物議…那須川天心が「なぜか批判される」理由は?“二面性”が“悪い意味でのギャップ”と捉えられることも

一夜明け会見を行った那須川天心写真/産経新聞社

モロニー戦でも物議…那須川天心が「なぜか批判される」理由は?“二面性”が“悪い意味でのギャップ”と捉えられることも

2月27日(木) 23:53

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那須川天心VSモロニー戦、物議を醸した試合結果

“神童”那須川天心のボクシング転向6戦目、元世界王者の対ジェイソン・モロニーの試合が物議を醸しています。3-0の判定で天心の勝利を支持したジャッジに対して、モロニー陣営が公然と異議を唱えているのです。

試合後の会見でモロニー選手は一人のジャッジが92-98と大差をつけたことを「アンフェアだ」と批判。そして会見が終わろうかというそのときに、モロニー選手のマネジメントを担当するドン・マジェスキー氏が「一言いいですか」と割って入るサプライズもありました。マジェスキー氏は、「(日本のボクシング)コミッションはジャッジの教育をしてほしい。このような不公平な採点がないことを祈る」と、試合結果への不満をあらわにしました。

Yahoo! JAPANのトップにも掲載されるほどに議論を呼んだ今回の判定に、ネット上では意見が割れています。

まずはモロニー陣営の主張を支持するものから見ていきましょう。“天心のパンチは手打ちで見栄えだけだった”とか“モロニーの勝ちだった。地元びいきの判定でモロニーに申し訳ない”とか、厳しい声があがっていました。

また、今回は試合前から日本の一部ボクシングファンがモロニーを応援するという現象も起きていました。天心の実力に懐疑的な見方をするのみならず、その大きな人気ゆえに潜在的なアンチも少なからず存在することが浮き彫りになった格好です。

専門家はどう評価したのか?

一方、元プロボクサーなど専門家は、一様に天心の勝利に納得していました。クリーンヒット、防御技術、リング上での主導権支配、いずれも天心が優勢であり、ワールドクラスのモロニーを相手にしてもスピードと技術は十分に通用していた、という意見がほとんどです。

筆者も採点をしながら観戦していましたが、96-94で天心勝利とつけました。特に印象に残ったのは、カウンターで合わせる左ボディブローと、第7ラウンドに見せたいきなりの美しい右アッパーカット。このあたりの距離感、タイミング、独創性は、単調で直線的なモロニーを圧倒していました。

ただし、どちらがより相手にダメージを与えたかという点では、実際に天心の動きが止まったり、ダウンしかけたりする場面もあったのでモロニーに分があったのも事実です。その印象からすると、ジャッジの採点は差をつけすぎなのではないかとも思いました。

プロボクシングが、単純なクリーンヒットの数よりも、強いパンチを相手の急所に当てることにより重きを置いた競技だという見方をすれば、現状の那須川天心にはかなりの物足りなさを覚えてしまう。

筆者は、天心の明確な勝利を支持しつつも、基本的には相手の動きにあわせたリアクションのアウトボクシングを軸にしたスタイルゆえに、今回の判定に対する騒動が起こっているのだと考えます。

なぜ那須川天心はここまで叩かれている?

とはいえ、アウトボクシングでポイントを重ねるスタイルは正当な戦術、戦略です。それ自体に批判されるべき点は何もありません。

にもかかわらず、なぜ那須川天心はここまで叩かれているのでしょうか?

それは、キックボクシングや総合格闘技で築き上げてきたエンターテイナーの資質に、プロボクサーとしての実績、試合内容、経験値が追いついていないからなのだと思います。

つまり、天心は試合よりもインタビューのほうが面白すぎるのです。

たとえば、モロニー戦前の共同会見では、「今、世の中的に良いニュースがない」とか「ヒーローがいない」と、大きな視点から自らのビジョンを語っていました。また、「自分には自分がついている」と忌野清志郎の歌詞を引用してスポーツ新聞の見出しになるようなフレーズも残すあたり、これまでのプロボクシング界にはなかったボキャブラリーの持ち主です。

“エンターテイナー那須川天心”と“ボクサー那須川天心”のイメージのズレ

ところが、この言葉の押し出しの強さと、相手をかわして待ち受けながらパンチを引っ掛けていくようなファイトスタイルが一致しない。なぜなら、天心の言う「ヒーロー」をボクシングで体現するなら、自ら仕掛けて強いパンチを打ち込んでKOする姿を期待するのが自然だからです。

けれども、天心のスタイルは、それに反してとことんクールなのです。タイミングと角度があえば相手を倒す力は持ち合わせているけれども、それは門外漢にもわかりやすい“強さ”として表現されるのではなく、玄人ウケする技術として分析される類のものなのですね。

今回のネット上の批判意見と、プロや専門家が天心を評価する見立てが大きく乖離していることからも、それがよく分かるのではないでしょうか。

そこに、“エンターテイナー那須川天心”と“ボクサー那須川天心”のイメージのズレが生じるのです。記者会見やインタビューではいかにも派手なKOを見せてくれそうな発言を連発するのだけど、実際の試合は渋い。悪い意味でのギャップが、どこか消化不良に感じてしまうのですね。

とはいえ、キャリア6戦目にして元世界王者をポイントアウトした格闘センスは誰もが認めるところ。いまのスタイルを進化させていくのか、はたまたそれに加えて相手を倒すパワーショットを身につけてアンチを黙らせるのか。

世界タイトルマッチで、その答えが見られるのでしょう。

文/石黒隆之

ボクシング6戦目
勝ちました 狼煙を上げました
ハラハラさせてすみません
本当に闘ってて楽しかった
初めての感覚でした
モロニー選手俺を漢にしてくれてありがとう
まだまだ強くなりたいです
次みんなと会う時は一つでも強くなって戻って来ます
倒れなかったのはみんなが支えてくれたから… pic.twitter.com/cN31Kivo7F— 那須川 天心 (@TeppenTenshin) February 24, 2025

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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