デンマーク開拓史の裏に隠された愛の物語を描いた傑作!マッツ・ミケルセン主演の映画「愛を耕すひと」を鑑賞

マッツ・ミケルセン主演の映画「愛を耕すひと」/(C)2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB

デンマーク開拓史の裏に隠された愛の物語を描いた傑作!マッツ・ミケルセン主演の映画「愛を耕すひと」を鑑賞

2月27日(木) 10:00

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2025年2月14日より全国公開された「愛を耕すひと」。イダ・ジェッセンによる史実に基づく歴史小説「The Captain and Ann Barbara(英題)」を、発売前に読んだニコライ・アーセル監督が感銘を受け、マッツ・ミケルセンに声をかけたことで映画化にいたったという本作。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
【写真】“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが演じるのは貧しい退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉
マッツ・ミケルセン主演の映画「愛を耕すひと」


【ストーリー】
1755年、デンマーク。貧窮にあえぐ退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)は、長年不可能とされた広大な荒野の開拓にひとり名乗りを上げる。

そんな無謀な挑戦の理由はただひとつ。国王に敬意を表し、〈貴族の称号〉を得ることだった。

しかし、それを知った有力者のフレデリック・デ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)は自らの勢力が衰退することを恐れ、その土地の所有権を主張し、開拓を阻止しようと立ちはだかる。

そして、彼のもとから逃げ出した使用人の女性アン・バーバラ(アマンダ・コリン)がケーレンのもとに身を寄せていることを知り逆上すると、執念深いデ・シンケルの迫害はさらに残虐なものへとエスカレートしていく。

ある日、“王の家”と名付けたケーレンの家に泥棒が侵入する。犯人は、両親に捨てられたタタール人の少女アンマイ・ムス(メリナ・ハグバーグ)だった。

肌の色が黒いことで“不吉な子”と虐げられるその孤独な少女は、やがてケーレンと共に暮らすようになる。

襲い掛かる自然の脅威と非道なまでの仕打ちに抗いながら、彼女たちとの出逢いによって、頑なに閉ざしていたケーレンの心に大きな変化が芽生えてゆくが……。
【写真】“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが演じるのは貧しい退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉


■幅広い役柄に挑み続けるマッツ・ミケルセンが、荒野の開拓に奮闘する男を魅力的に体現!
第62回ベルリン国際映画祭で2つの銀熊賞(男優賞/脚本賞)に輝いた「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年)以来、2度目のタッグを組んだニコライ・アーセル監督とマッツ・ミケルセン。

ドラマ「ハンニバル」(2013-2015年)でのハンニバル・レクター役や映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016年)、「ドクター・ストレンジ」(2017年)などでマッツを知った人も多いと思うが、筆者がマッツを「すごい俳優がいる…」と認識したのは「偽りなき者」(2013年)という作品だった。

もちろん、その前にもニコラス・ウィンディング・レフン監督の「プッシャー」(1996年)や「007/カジノ・ロワイヤル」(2006年)などでマッツはインパクトのある役を演じていた。だが、「偽りなき者」のマッツの演技はちょっとすごすぎるのである。

「偽りなき者」でマッツが演じたのは、親友の娘の何気ない作り話がもとで変質者の烙印を押されてしまう男性。周囲から憎悪を向けられ四面楚歌の状況に陥った主人公が孤独に闘い続ける姿を、マッツは見事に体現していた。とってもつらい作品だが、マッツの芝居に心震えるのでぜひこちらも観てほしい。

そんなマッツが本作で演じたのは、退役軍人で元大尉のケーレン。貴族の称号を懸けて荒野の開拓に名乗りを上げたケーレンは、目的のためなら多少強引な手段もいとわず、一見冷たそうにも見える。

ところが、物語が進むうちに少しずつ他人に心を開き、目的を果たそうとする真の強さだけではなく、大切な者を守ろうとする優しさも見せていく。そんなケーレンをマッツは魅力的に演じている。
映画「愛を耕すひと」場面写真


ケーレン大尉の宿敵フレデリック・デ・シンケルを演じるのは、「THE GUILTY/ギルティ」(2018年)などデンマーク作品を中心に活躍するシモン・ベンネビヤーグ。

秩序や規律を重んじるケーレンとは真逆のキャラクターで、気に入らないことがあると簡単に使用人を殺めるようなサイコパス男である。

そんなシンケルにケーレンは喧嘩を売ってしまったことで、シンケルから執拗な嫌がらせを受けることになる。シンケルが嫌な面を出すほどにケーレンが素敵に見えるという不思議。

とにかく彼の見事な極悪非道っぷりに笑ってしまうので、そこも楽しんでいただきたい。
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■過酷な試練を乗り越えながらも強く生きる女性アン・バーバラの姿が心を打つ
シンケルの元から逃げ出した使用人の女性アン・バーバラを演じるのは、アーセル監督が脚本を手掛けたミステリー映画「特捜部Q Pからのメッセージ」(2016年)や、リドリー・スコットが製作総指揮を務めるドラマ「レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星」(2020年~2022年)などで知られるアマンダ・コリン。

彼女はシンケルから数々の酷いことをされてきたからなのか、最初は匿ってくれたケーレンにも心を開かない。だが、ケーレンのお世話をするうちに、少しずつ柔らかい表情を見せるようになり、そんな彼女の姿にホッとする。

男性の命令を素直に聞かず、自分の意見を主張し、信念を貫き通す女性が登場するとワクワクしてしまう筆者にとって、アン・バーバラは時にケーレンよりも魅力的に見える瞬間があった。

過酷な試練を乗り越えながらも強く生きるアン・バーバラの姿に心を打たれた。そんな彼女を繊細に演じたアマンダ・コリンの今後の出演作も追いかけていきたいと思う。
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ケーレンが開拓の途中で出逢うタタール人の少女アンマイ・ムスを演じるのは、スウェーデン出身の子役メリナ・ハグバーグ。両親を亡くし、肌の色が違うことで“不吉な子”と虐げられるが、明るく天真爛漫な性格でケーレンの心を溶かしていく。

アンマイ・ムスとケーレンが、本当の父と娘のように心を通わせていく過程も本作の見どころの一つといえる。
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本作の主人公はケーレンではあるが、ケーレンに好意を抱く貴族の女性やアン・バーバラ、両親に捨てられたアンマイ・ムスが自分の意思で運命を動かそうとする姿もしっかりと描かれていて、個人的にはそこに強く惹かれた。

マッツファンはもちろん、女性をエンパワーメントする作品が好きな人、主人公が逆境に立ち向かっていく姿を描いた作品が好きな人、そして愛の物語が好きな人などにおすすめの本作。ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。
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文=奥村百恵

(C)2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB




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