連日雪と氷点下の気温が続く今年の第75回ベルリン国際映画祭だが、スターたちの到来がレッドカーペットをあたためている。「名もなき者 A Complete Unknown」でボブ・ディランに扮し、プロデューサーも兼任したティモシー・シャラメは今回、プロモーションのために単独でベルリンに参加。プレミアはちょうど14日のバレンタインデーにあたり、レッドカーペットではランニング姿も披露し、ファンサービスに務めた。
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【フォトギャラリー】ベルリン映画祭での模様
翌15日には、「ミッキー17」のプレミアで、ポン・ジュノ監督をはじめロバート・パティンソン、トニ・コレット、スティーブン・ユァン、ナオミ・アッキー、アナマリア・バルトロメイのキャスト陣が勢揃いした。記者会見ではポン監督のファンを自認するパティンソンが、「たぶん僕らキャストはみんなそうだと思うけれど、内容がなんであるか知る前に返事をしていた。彼との仕事を経験したかった」と説明。また「『殺人の記憶』を観て以来ずっと、彼の作品にはフィジカルなコメディの要素があると思っていた」と見解を語った。
ジャスティン・カーゼルが第2次世界大戦下の兵士を主人公に、許されぬ恋愛に身を焦がす物語を描いたドラマシリーズ「The Narrow Road To The Deep」は、5エピソード中の2話が披露され、主演のジェイコブ・エロルディらが出席。エロルディは「14、15歳の頃、ジャスティンの『Snowtown』を観て、映画とはなんであるかを教えられた。以来ずっと仕事をしてみたい監督として、彼の名前が胸に刻まれていたので、実現してとても嬉しい」と打ち明けた。
さらに18日には、コンペティション部門に出品されたリチャード・リンクレーター監督の「Blue Moon」と、アウト・オブ・コンペティションのベネディクト・カンバーバッチ主演作「The Thing With Feathers」のプレミアもあり、地元のファンを沸かせた。
前者は「ブルームーン」や「マイ・ファニー・バレンタイン」など名曲の作詞家として知られるロレンツ・ハートが48歳で亡くなる最後の7カ月を描いたもの。リンクレーターの盟友、イーサン・ホークがハートに扮し、たった15日間で撮り上げられた本作は、ハーツの行きつけのバーを舞台にした室内劇であり、前半はハーツの独白が続くホークの独壇場。後半には、彼の心のミューズとも言えるエリザベス(マーガレット・クアリー)とのやりとりが見もの。低い身長にコンプレックスを抱き、ホモセクシュアルでアルコール中毒でもあったハーツの屈折した心情を、ホークが見事に体現している。レッドカーペットには監督とホーク、クアリー、アンドリュー・スコットが顔を揃えた。
後者はマックス・ポーターの原作「Grief Is The Thing With Feathers」を、これまでミュージックビデオやドキュメンタリーを制作してきた若手、ディラン・サザーンが映画化。エグゼクィブ・プロデューサーも務めたカンバーバッチが、ふたりの幼い息子を持ち、妻を亡くした父親の深い悲しみをエモーショナルに体現する。大鴉が象徴的な存在として登場する、ユニークで鮮烈な作品である。
今年のベルリンは、男優たちによる力作が多い印象だ。(佐藤久理子)
【作品情報】
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ミッキー17
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