【写真】ハリソン・フォード演じるロス大統領と平岳大演じる尾崎首相に挟まれるサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)
マーベル・スタジオの劇場公開最新作となる映画「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」が、2月14日に日米同時公開された。今作は、2014年の「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」で初登場し、2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」で、初代キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)より正義の象徴である盾を託され、その重責を受け継ぐことになったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の物語。主人公であるサムとは、一体どんな人物なのか。過去に登場したドラマ版を含む7作から彼の人物像をひもとく。(以下、過去作のネタバレを含みます)
■スティーブ・ロジャースとの出会いから始まったサムのヒーロー人生
2014年の「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」にて初めて登場した時のサムは、まだ退役軍人に過ぎなかった。かつてはパラシュート部隊として活躍していたが、仲間の死をきっかけに退役。ワシントンD.C.の退役軍人省に所属し、トラウマに悩む退役軍人に寄り添い、心のケアにあたっていた。そんなある日、ワシントンのナショナル・モールをランニング中にものすごいスピードでいつも左からサムを抜いていく、初代キャプテン・アメリカことロジャースと出会う。
スティーブは、第二次世界大戦中の極秘実験で血清を注入された超人。星条旗を思わせるヴィブラニウム製の盾を持ち、70年ぶりに仮死状態から目覚めてもなお、正義のために戦い続けていた。
実直な性格でスティーブの信頼を勝ち取ったサムは、秘密組織ヒドラに囚われて洗脳されたかつての仲間バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)を救おうとするスティーブの心に寄り添い、2人の関係はさらに強固なものになっていく。そうして、スティーブと共に戦うことになったサムは、パラシュートならぬ人工の翼で宙を舞いながら高い戦闘スキルを見せつける“ファルコン”として愛されることになる。
■長き戦いの末にスティーブに託されたキャプテン・アメリカの象徴
その後、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015年)のラストでスティーブ率いるアベンジャーズ入りを果たし、「アントマン」(2015年)では国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.での訓練中にスコット・ラング/アントマン(ポール・ラッド)と遭遇。アベンジャーズのあり方でトニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)とスティーブが対立した「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)では、もちろんスティーブ側に付き、ウィンター・ソルジャーの洗脳を解きたいという彼の希望をかなえるために尽力した。
そして、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)では、宇宙のバランスを取り戻すために生命の半分を滅亡させようとするサノスとの戦いに敗れ、サムは多くの仲間と共に消されてしまった。しかし、生き残ったアベンジャーズの活躍により、「アベンジャーズ/エンドゲーム」で復活し、アベンジャーズが大集結したサノスとの戦いに身を投じた。
ラストシーンでタイムトラベルをせずに年老いたスティーブからキャプテン・アメリカの盾を託され、「借り物みたいだ。ベストを尽くすよ」と語ったサム。だが、偉大なる称号の継承は容易ではなかった。
■苦悩の末に決意したキャプテン・アメリカの継承
キャプテン・アメリカを継承すべきか、否か。その苦悩を描いたのが、2021年にディズニープラスで配信されたマーベルドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」だ。米軍が手を出せない領域での任務に当たっていたサムは、新たなヒーローが必要だと言いながら、自分には荷が重いと盾をアメリカ政府に寄贈する。
その背景には、実際のアメリカ合衆国が抱える歴史がある。このドラマのドキュメンタリー「アッセンブル ファルコン&ウィンターソルジャーの裏側」で、脚本/制作総指揮のマルコム・スペルマン氏は「黒人のヒーローということで、サムの道のりは特に過酷なものになると分かっていた」と明かした。
同様に、サム役のアンソニーも「黒人が、自分を代弁しない国の象徴にどうしてなれるのかと不安を感じるんだ」と語った。だが、スティーブと同じように超人血清を打ったイザイア・ブラッドリー(カール・ランブリー)が登場したことで、黒人のヒーローは一定数の人に拒絶されることを承知で、サムはキャプテンになることを決意する。
ドキュメンタリーでアンソニーはこうも語っている。「マーベルは南部出身の黒人をキャプテンに選んでくれた。その重責を託されたのは、役柄が認められただけでなく、社会を変えてほしいというマーベルの期待でもあるだろう」と。彼の言葉通り、ドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」は、社会への強いメッセージが込められたサムのメッセージで幕を閉じた。
そして、そんな思いを抱いたサムがついにキャプテン・アメリカとなるのが、最新作「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」だ。覚悟をしていたとはいえ、新たな脅威は容赦なくサムに襲いかかる。その中で彼はいかにして、スティーブから受け継いだレガシーに応えていくのか。その答えは劇場にある。
◆文=及川静
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