知らず知らずのうちに隙間時間を埋められ、平日は「24時間、戦えますか」状態の現代人。しかし、休日に寝ているだけでは、疲労は蓄積するばかり。“休み下手”な日本人の溜め込んだ疲労を吹き飛ばす休養法を手に入れ、「休む」を改革せよ!
【NG行動①】家で一日ゴロゴロ
疲労困憊で週末はずっと家でゴロゴロという人は多いだろう。医学博士の片野秀樹氏は、これに強烈なダメ出しをする。
「動けないほど疲れてしまっている場合は睡眠を優先すべきですし、家でゆっくり過ごすことはスタンダードな休み方です。ただし、疲労回復には血液を全身に回す必要があります。ゴロゴロしていては血流が滞り、余計に疲れてしまいます。運動とまでいかなくても、少し歩きに外に出るなど、軽微な動きで血行を良くすることを意識すべきです」
また、自身の自律神経の状態への理解も重要だ。
「自動車のアクセルにたとえられる交感神経と、ブレーキ役の副交感神経ですが、昼からゴロゴロしてしまう人は副交感神経が優位になっている場合が多い。意識的にアクセルを踏むことを心がけましょう」(片野氏)
【まとめ】攻めの外出こそ最大の休養
【NG行動②】1泊2日の温泉旅行
湯治という言葉があるように、温泉は疲労回復に効果があるのは間違いない。ただし、入り方によっては疲労感が増すことも?片野氏が解説する。
「40℃以下のぬるめのお湯にゆっくり浸かるだけなら血行促進など効果は絶大ですが、42℃以上の熱いお湯に入ると交感神経を高め、入眠前は悪影響になります」
また、1泊2日程度では、“慣れない土地”への弾丸旅行は、かえってストレスになることも……。
「やはり観光、温泉、食事など時間に追われ、自分のペースで動けないのは常に体がこわばった“緊張状態”になり心身がまったく休まっていない。リフレッシュのためには、時間に余裕の持てる近場にしたり、自分に合ったペースで回れるように、旅程を組みましょう」(片野氏)
【まとめ】熱い温泉は昼間に入るべし
【NG行動③】栄養ドリンクを飲む
瞬間的な疲労回復に、栄養ドリンクのお世話になっている人は多いはず。 だが、睡眠専門医の渥美正彦氏は懐疑的だ。
「栄養ドリンクやエナジードリンクは、名前が良くない。カフェインで眠気が治まっているだけで、疲労はなくなっていません。眠気覚ましなら、コーヒーやコーラを飲むのと変わりません。それにカフェインが欲しくなるのは、体が休養を求めているサインの可能性も。15分ほどの仮眠を取ったほうがいいでしょう」
サプリに疲労回復を期待するのも避けたほうがいい。
「サプリは本来、毒にも薬にもならないもの。何らかの劇的な効果があるならば、それは薬になってしまいますから。サプリで得られる疲労回復は、プラシーボ効果でしょう」
【まとめ】飲む前にまずは15分ほど仮眠を
【NG行動④】夜のサウナで整う
サウナ、水風呂、外気から睡眠……これぞ疲労回復の黄金パターンと思いきや、「極熱サウナは体に負担しかありません。特に副交感神経が優位になっている夜は、高温サウナで体と脳を正常な状態に保つために自律神経がフル稼働し、ますます疲弊します」(片野氏)
出たあとの心地よい睡眠も、「ただ疲れたあとの寝落ち」と一刀両断だ。
【まとめ】整い=疲労。回復にはぬる湯
【NG行動⑤】スタミナ食を摂る
焼き肉、鰻、ニンニク山盛りのラーメンなど、疲れた時こそパンチのあるスタミナ食を求めたくなるが?
「過食は脳を騙すマスキングによるストレス解消行動で、寿命を縮めることがわかっています。アンチエイジングの観点からも、腹八分目が体にいいことは科学的に立証済み。味の濃いものは塩分過多になる点でも体に負担です」(片野氏)
【まとめ】味の濃い食事は体の負担が増加
【NG行動⑥】CBD(大麻由来成分) を摂取
リラックス効果やストレス緩和効果があるとして、CBDが含まれているクッキーなどが注目されている。
「CBDは、大麻由来成分から精神的な作用がある物質を取り除いたもの。海外研究ではCBDが睡眠にいいという報告もありますが、日本人にはまだ効果や副作用についての臨床治験がなく、気軽な気持ちで使用するのは危険です」(渥美氏)
【まとめ】服用は日本での治験終了を待て
【NG行動⑦】ご褒美〇〇
酒は百薬の長、糖分は疲れた体によし、といった“ご褒美”を疲労回復に繫げがちだが、渥美氏は「注意が必要だ」と指摘する。
「近年、アルコールの健康効果はほとんど否定されています。甘いものも血糖値の急上昇を招き、睡眠の質を下げてしまう可能性があります。いずれも摂取するのであれば、量を考えて日中にすべきです」
何かと理由をつけた“ご褒美”摂取も要注意だ。
「アルコールや糖分は依存性が高い。食べたり、飲んだりすると快感ホルモンのドーパミンが分泌され、幸福感を抱くかもしれませんが、依存物質が追加の依存物質を呼んでいるだけですから。正真正銘、たまのご褒美であればいいですが、習慣化するのはやめましょう」
【まとめ】ご褒美は日中に。適量に配慮せよ
休養の常識を疑い、見直す
土日はしっかり寝て、家で休んでいるのに……どうも疲労感が残る。これは「現代人には脳疲労が加わり、従来の回復法では芯から回復できず、むしろ疲労が増すようなこともあるからです」と解説するのは前出・片野氏だ。「絶対にやってはいけないNG行動」にある“一日ゴロゴロ”はその代表例と言える。
「疲労を打ち消すには、自分に合ったチャージ方法を見つける必要があるのです。睡眠や食事、運動といった生理的なもの、友人や家族との親交や好きな趣味といった心理的なもの、旅やワーケーションで環境を変える社会的な休養、複数の方法を掛け合わせることをオススメしています。多様な休養の選択肢を持つことが、攻めの休養になります」
まず多様な休養の選択肢を持つ。そして、休みに対するマインドセットも要更新だ。
「皆さんもスマホの充電が少なければ、電源コードを挿してから寝ますよね。休養も同じです。疲れを感じる前に自分でコントロールする。主体的に休むことが何よりも重要なのです。
例えばカレンダーアプリの設定を土曜日始まりに変更し、休日→平日というスケジュールの組み立てにシフトすると、生活リズムが変わります。休みが後ろにあると思うと、疲労を週末まで我慢しようとしてしまう。週末にフル充電して、平日に高いパフォーマンスを発揮する意識を身につけましょう」
漫然と休む週末との決別。攻めの休養へ一歩踏み出そう。
【博士(医学) 片野秀樹氏】
日本リカバリー協会代表理事。ベネスク執行役員。休養に関する社会のリテラシー向上のための啓発活動に取り組む。著書に『休養学』
【睡眠専門医 渥美正彦氏】
精神科と心経内科での臨床経験を生かし、患者の脳と心の問題に対応。著書に『子どもの発達障害がよくなる睡眠の教科書』など
取材・文/週刊SPA!編集部イラスト/にぎりこぷし
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