『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。1968年フォード・マスタングGT390に乗るジェシーが、シートの張り替えに挑戦。
【画像】フォード・マスタングのシート修復作業中の様子と仕上がり後(画像3点)
車のレストアは、誰もができる最もクリエイティブな作業のひとつだ。レストアといってもナットやボルトを締めたり、エンジンを組み立てるだけではない。内張りや装飾もクリエイティブ心を刺激する。なぜなら、触れて感じる部分であり、往々にしてその時代を最もよく反映しているからだ。1968年マスタングGT390の内装は、まさにそう。ビニールで覆われたシートには、特徴的な「コンフォートウィーブ」が入っていて、クロームのボタンも付き、まさに「1960年代」を象徴している。
私のGTはファクトリーオリジナルのハイランドグリーンの外装色で、GT用装備セットとパワーディスクブレーキのオプションを装着した映画『ブリット』のマスタングと、実質的には同じモデルだ。両車は1968年初頭にサンノゼでわずか4週間違いで製造されたが、たったひとつの大きな違いは、内装の色だった。ワーナー・ブラザースの車が「ブラック・ビニール・バケットシート」だったのに対し、私の方は赤色の内装にマッチした「レッド・デコ・バケットシート」だった。1960年代のカリフォルニアらしいといえばその通りだが、今の内装はブラックでレストアされている。
このマスタングを手に入れたときに唯一失われていたのが、オリジナルのフロントシートだった。でも、傷んではいたものの純正のシートがレストア用に1組付属していた。最大の作業は、運転席のひび割れを接着することと、ランナーを作り直すことだった。しかし、2つのローラーが内蔵されていることで、それが実に厄介な作業であることが判明した。シートバックを前方に倒せば、+2のリアシートにアクセスできるようになっているのだが、それぞれの内部にあるリリース用の機構はリビルドが必要だった。私はまた、ベンチトップキットを使ってさまざまなパーツを亜鉛メッキし、すべてをいい感じに作り直した。
今回使用したTMI製の布張りキットには成型されたフォームが付属しており、工場出荷時さながらにフレームに取り付けるためにはホグリングとプライヤー、それにフォームを支えるための新品のシートスプリングのセットも必要だった。クロームのボタンは別売りで、簡単に布張りに差し込めたが、思い通りに仕上げるのに何度も試行錯誤することとなった。結局、付属のモールドクッションだけでは不十分で、シートに張りを持たせるため、ハーフインチ分のフォームを買い足した。
リアのシートバックは、フレームがシンプルな長方形なのではるかに簡単だった。しかし、出っ張りのあるベースは複雑で、うまくやり遂げるにはまたもや余分なフォームが必要だった。1968年マスタング・ファストバックのユニークな特徴は、折り畳み式のリアシートだ。これは2枚の重厚なヒンジ付き金属製パネルで構成され、カーペット敷きで、縁にはクロームメッキが施されている。シートを折り畳むと、3つ目のカーペット敷きパネルとともにハッチバックスタイルの荷室となり、トランクスペースに通じる巧妙なトラップドアからアクセスできる。
余暇時間を使いながらの作業だったこともあり、フロントシートとリアシートの完成には約半年を要した。急げばいいというものではない。レストアのすべてがそうであるように、費やした時間は最終的には価値あるものになるのだ。
文:Jesse Crosse
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