2月11日(火) 1:00
新NISA制度が始まり1年がたちました。銀行預金とリスク商品との一番の違いは“値動きがある”ことです。預けた10万円が11万円に増えることも、逆に9万円になってしまうこともあるので、投資を始めることに躊躇する方も少なくありません。このブレ幅を少なくする方法が「分散投資」です。要点をピックアップします。
(1) 数ある日本の企業の中で、どの会社に投資するのか……1社に絞ることはかなり難しいですし、購入するにはある程度の資金が必要です。日本株式を投資対象にした投資信託に投資すれば、少額でも始めることができます。何よりも1つの商品で多くの会社に分散投資ができる優れものです。
(2) (1)に加えて、購入するタイミングを分散する手法として積立投資があります。「いつ買えば良いの? 」と迷っていると、いつまでも買えません。買った後で値下がりしたら、「もう少し待てば良かった」と後悔することにもなります。購入する時期を分散することで、この高値づかみのリスクは軽減できます。
毎月定額購入することで、価額に応じて購入する口数が変わることにも注目しましょう。毎月1万5000円ずつ積立投資していると仮定します。1口3000円の値段なら5口購入できますが、1口5000円に値上がりすると3口しか買えません。このように“安い時に多く買う”が自動的にできるのです。
このように投資信託を使って毎月定額を積立投資することで、リスクを減らすことが可能です。NISAの“つみたて投資枠”はこの原則に沿っています。
「投資は余裕資金で始めましょう」が基本です。余裕資金といわれても、具体的ではありませんが、まずは生活費の半年分を預貯金で確保しておけば安心材料になります。その上で、5年以内に使う予定のない資金は「余裕資金」として位置づけられると考えます。
いよいよ今回のメインテーマである「どのくらいの割合で分散したら良いか」についてです。この質問は、“投資に充てる金額100%を、国内外の株式と国内外の債券の4つのカテゴリに分けて1/4ずつ投資すること”など、具体的な配分を期待されているのかもしれません。
この4分法は公的年金を運用しているGPIFの資産構成割合です。25%ずつ4つの資産に均等に配分されたポートフォリオは、「年金財政上必要な利回りを満たしつつ、最もリスクの小さい」配分とされています。
1/4ずつ分散?「投資初心者は、つみたて投資枠でオールカントリーの投資信託から始めるのがお勧めです」という話と大きく違うのでは?と疑問に思われたのではないでしょうか。もしGPIFが資金のすべてを外国株式で運用していたら、景気が悪化した時には年金制度を維持することが困難になります。
20代~50代の資産形成期は、お金を守るよりも増やすことに重点が置かれます。時間を味方につけて資産形成するツールである“つみたて投資枠”で運用できる商品は、債券ではなく株式で構成されている理由がここにあります。
国内外の株式で運用を続けてある程度増えてきたら、大事な資産を守ることも考えましょう。その時は、債券も含めた分散に取り掛かる好機です。年齢や家族環境に応じて、資産の構成割合を調整することも必要です。「株式は何%が最適」という正解はありませんが、利益を追求して株式に偏ってしまうと“大けが”のもとであることは確かです。
最後に金についてです。「有事の金」ともいわれるように、金は世界的な危険や不安が高まった時にも安全な資産とされています。株式とは値動きが異なり、一般的には逆相関の関係にありますので、分散投資の選択肢として有効です。全体の10%程度組み入れることを推奨されています。
では、もっと多くの割合を保有しても良さそうなのに、どうして10%なのでしょうか。
1. 無価値にならない実物資産であること
2. 有事の時に価値が上がりやすい
3. インフレ時に現金のように価値が目減りしない
1. 利息や配当がない
2. 現物の場合は紛失や盗難の心配がある
金投資には上記のような特徴があります。今後はインフレが予想されますので、現金ではなく実物資産としての金が注目されています。
ただし、将来値上がりすれば売却時に利益を得られますが、持っているだけでは利息や配当を得ることはありません。複利効果もありませんので、雪だるま式に増えることは期待できません。これが、少しだけ持つことが推奨されているゆえんです。
守りの資産として金に投資する場合も、積立方式での購入をお勧めします。
年金積立金管理運用独立行政法人基本ポートフォリオの考え方
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
【関連記事】
iDeCoとつみたてNISA、50歳から始めて「2000万」貯めるにはいくら投資したらいい?