【写真】蔦重(横浜流星)と平蔵(中村隼人)
横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”として時代の人気者になった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱と“エンタメ”に満ちた人生を描く“痛快”エンターテインメントドラマ。
「べらぼう」の物語も第5回の放送を終え、蔦重(横浜流星)の吉原への思い、本作りへの思いが加速していく。WEBザテレビジョンでは、のちの火付盗賊改方・長谷川平蔵宣以を演じる中村隼人にインタビューを実施。役柄への思い、役作りについて語ってもらった。
■抱いていたイメージとは違った平蔵に
――隼人さんは長谷川平蔵宣以に対して、どのようなイメージをお持ちでしたか?
やはり平蔵については池波正太郎先生原作の中村吉右衛門さんが演じられたドラマ「鬼平犯科帳」でのイメージを持っていました。僕は再放送で見ていましたが、“鬼平”が“本所の銕(てつ)”と呼ばれていた若い頃は粋に遊び、けんかが強く、色気のある男という印象で。今回長谷川平蔵宣以を演じるにあたり、そのようなイメージを持って監督とお話したところ、どうやら全然違うものになりそうだと(笑)。
――どこでそのように思われましたか?
まず「シケ」(こめかみから一筋出す髪のこと)をと、監督に言われまして。舞台では割とあるのですが、映像で「シケ」を表現することはなかなかないんですよ。今回かつらを担当してくださる方も「初めてだ」と仰っていましたね。映像ではどういうふうになるだろうかと思いながら撮影を進めていく中で、吉原の目をそむけたくなるような部分をも描く作品の中で、「シケ」がある平蔵が、視聴者の方にちょっとでもくすっと笑っていただけるのかなと。少しでも息抜きになればいいなと思っています。
――「シケ」をフッと吹いてみたり、手で触ってみたりという仕草も印象的です。どのように生まれたのでしょうか。
監督が「その“シケ”どうします?」って言うんです(笑)。それに応える形で「じゃあ…吹いてみますか?」とやったのが始まりでしたね。「シケ」で遊ぶことも自分で考え、監督に意見をいただきながら楽しくやっています。
■“カモ平”が浸透し始めています(笑)
――平蔵を演じる上で心掛けていることはありますか?
この先、きっと立派な「火付盗賊改方」になるだろうと思いますので、あまり立派にやりすぎないということを意識しています。所作一つ、喋り方一つ、立派すぎないよう、余白を残すことを考えていますね。
――視聴者の間では愛情を込めて“カモ平”というあだ名も付いているようですね。
歌舞伎の楽屋で先輩に言われて知りました(笑)。ちょうど今月から歌舞伎座で始まった“蔦屋重三郎”を描いた演目もある「猿若祭二月大歌舞伎」の稽古中に、(中村)勘九郎さんがアドリブで「今日は“カモ平”のおごりだ!」って(笑)。周りもみんな分かっていたのですが、僕だけ分かっていなくて「誰のこと?」って。そうしたら「お前だよ」って(笑)。それくらい“カモ平”が浸透し始めているのを実感しました。
■僕と(横浜)流星の関係性ならではのものがある
――主演の横浜流星さんとは舞台「巌流島」(2023年)で共演されて以来、公私ともに仲が良いと伺いました。横浜さんとの関係性が生きたと感じた場面はありましたか?
第1回(1/5放送)の撮影で、僕の前で彼がいきなり歌舞伎の見えを切ったんですよ。これは本当にびっくりしましたね。何やってるんだって笑いをこらえるのに必死でした(笑)。きっと初対面だとしたらあのシーンは生まれなかったと思うんです。流星が持っている遊びの部分と、蔦重が持っている陽気なムードメーカーな部分がうまくリンクした場面になった気がしています。
――見えを切ることは本番まで知らされなかったんでしょうか?
そうなんです。本番前にカメラが回ってないところで畳に足を踏み出す練習をずっとしていて。「何やってるの?」と聞いても「いや、畳の感じをね」って(笑)。ささいな部分で、僕らの関係性ならではのものが出ているように感じています。
――横浜さんと平蔵と蔦重の関係について話されましたか?
クランクイン前も、撮影が始まってからも話しました。撮影前から今も変わらないものとしては、平蔵は周りに“親の七光りで仕事をしている”などのやっかみを受け肩身の狭い思いをしている中で、蔦重とは一番年が近く、気を許せる相手だというところがあると。そして蔦重も、吉原で生まれ育ってきた中で、本当の意味で気を許せる相手は平蔵なのかなという話をしていました。なので、お互いに特別な立ち位置に見えればいいねと。そして実際に撮影が始まってからも、平蔵、蔦重が周りの環境によって孤独になればなるほどに二人のつながりは強いのかもしれないねと話しています。
■平蔵のギャップをお見せしたいです
――第6回(2/9放送)で平蔵が仕事として蔦重の前に現れるシーンがあります。こちらのシーンはいかがでしたか?
今回の作品の中で彼と初めてがっつり芝居をしたシーンだったのですが、平蔵と蔦重の関係性がすごく出るシーンになっています。平蔵が蔦重に語る言葉によって蔦重が心を切り替えるというふうな場面もあり、大事にしたいなと思っていましたね。
――仕事をしている時の平蔵は、吉原にいる平蔵とはまた違った“かっこよさ”がありました。意識されたことはありますか?
まず、仕事になった瞬間に髪型がちょっと変わっています(笑)。そこでまず“平蔵どうした?”と笑っていただければと(笑)。遊んでいるけれど、仕事はきっちり出来るということを髪型でも表現しました。
今作の長谷川平蔵は、割と“ダメダメ”に見えるんですよ。ですが仕事が出来ないという描写は一切ない。人よりもやる気があって、行動力がある人物だと思うので、仕事になった時のギャップをお見せできたらと思います。
■流星はライバル心のようなものをくすぐるのがうまい
――隼人さんにとって、大河の座長としての横浜さんはどのように映っていらっしゃいますか?
年下なのですごくかわいいなと思うところも多いです。ですが、蔦重という役柄は非常に明るくムードメーカーなところがある中、横浜流星くんという人物は本当に物静かな性質の人間なので、蔦重を演じることで心に掛かる負荷はすごく大きなものだと思います。撮影が大変な日程でもあり、そして大先輩方と共演していくという想像を絶するプレッシャーを感じているのではないかなと思うんですが、それを全く感じさせないんですよ。
彼は周りに声を掛けて引っ張っていくというよりは、自分の芝居そのもので引っ張っていく役者さんなのかなと。彼自身も話していますが、一つ一つ、後悔のないように撮影に臨んでいる姿を見て本当にすごいと思っています。
――その姿を見て、より良い作品にしていこうという意識が高まるんですね。
ピリッとしますよね。これだけ主演がきっちりと見せてくれるなら、こちらも負けていられないと。役者としてのライバル心のようなものをくすぐるのが非常にうまいなと感じます。
■平蔵の成長を感じてもらえるように演じたい
――最後に、長谷川平蔵を演じる上での思いを改めてお聞かせください。
やはり平蔵と言えば、池波正太郎先生の書かれた“鬼平”のイメージが強く、映像としてもそうそうたる大御所のスターが演じてきていらっしゃいますし、その中で平蔵を演じるということが初めはすごく怖かったです。ですが、1年にわたる放送の大河ドラマだからこそ、成長させていける余白があるんじゃないかと思うんです。きっとそれを期待してくださっている方もいらっしゃると思いますし、平蔵という人物を「べらぼう」という作品の中で立派に成長させていけるかということが僕の中での課題でもありますので、どう育てていくかということに注力しています。今後平蔵として、仕事以外のプライベートな部分、精神面での成長もお見せできればと。
そして重い展開の中でも平蔵の存在が、視聴者の方にとって肩の力を抜いて見ていただけるものになったらいいなと。そして“カモ平”が今後どう立派になっていくのかを楽しみにしていただければうれしいです。
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