堀未央奈とゆりやんレトリィバァが語り合う、ホラーへの深い“愛”。イチオシの1本はコレだ!

堀未央奈&ゆりやんレトリィバァが、ホラーへの熱い想いを語り合う!/撮影/河内彩

堀未央奈とゆりやんレトリィバァが語り合う、ホラーへの深い“愛”。イチオシの1本はコレだ!

2月8日(土) 11:30

令和の時代の新たなホラー映画作家を発掘・育成する目的で2021年にスタートし、これまでに3回を数える「日本ホラー映画大賞」。今年1月からAmazonプライムビデオで『「第1回日本ホラー映画大賞」受賞作品』、『「第2回日本ホラー映画大賞」受賞作品』が見放題配信開始となり、ホラーファンのあいだで話題を呼んでいる。
【写真を見る】堀未央奈とゆりやんレトリィバァ、ホラー好き2人で笑顔の絶えない対談となった

次世代のホラー作家を発掘・育成する「日本ホラー映画大賞」

そこでPRESS HORROR編集部では、第1回より選考委員を務める女優の堀未央奈と、第2回から選考委員を務めるゆりやんレトリィバァに直撃取材を敢行。選考会を通して意気投合したという2人に、これまでの「日本ホラー映画大賞」の歩みを振り返ってもらうと共に、イチオシのホラー映画、「日本ホラー映画大賞」の選考を通した自身の気づきまでを語ってもらった。

聞き手を務めるのは、「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞し、受賞短編を長編化した『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)で商業映画監督デビューを果たした近藤亮太監督。ホラー愛にあふれた取材の模様をたっぷりとお届けする。

■「『日本ホラー映画大賞』は人生が変わる場だと捉えて、選考に臨んでいます」(ゆりやん)
第1回で審査員特別賞を受賞した、平岡亜紀監督の『父さん』


「日本ホラー映画大賞」は、選考委員長の清水崇監督のもと、FROGMAN、堀未央奈、小出祐介、宇野維正、ゆりやんレトリィバァという、各界のホラーマニアが揃った選考委員たちが、一次選考を通過した応募作品を隅々まで鑑賞。長時間に及ぶ選考会の末に、商業映画監督デビューの権利が与えられる大賞受賞作を決定している。

――第1回、第2回の受賞作が見放題配信となり、ホラーファンの方に気軽に観ていただける環境が整いました。まずは第1回から参加してる堀さんから、おすすめ作品を伺いたいです。

第1回でオカルト部賞を受賞した、ヤマモトケンジ監督の『傘カラカサ』

堀「第1回では、平岡亜紀監督の『父さん』をめっちゃ推していました!それで清水監督と意気投合したんです。短いのにぎゅっと怖さが詰まっていて、人間の本能的な怖いと思う部分を突いている作品だと思います。ヤマモトケンジ監督の『傘カラカサ』も、どの世代の方が観てもちゃんと怖いと感じられる作品だと思います」

――ゆりやんさんは第2回から参加されましたが、イチオシの作品はどれでしょうか。

第2回でニューホープ賞を受賞した、三重野広帆監督の『NEW GENERATION/新世代』

ゆりやん「私は三重野広帆監督の『NEW GENERATION/新世代』が好きでした。どの作品もそうなんですけど、2~30分くらいのなかに怖い描写やおもしろい描写をあんなに詰め込んで、それで崩壊せずにやっているのがすごすぎました。堀さんはいかがでしたか?」

堀「私は川上颯太監督の『いい人生』がよかったです。発想力に若さを感じられてとてもいいなと思いました。あと、小泉雄也監督の『笑顔の町』も好きです!」
第2回で審査員特別賞を受賞した、19歳(受賞時)の川上颯太監督『いい人生』


――選考委員を務められているなかで、心境の変化はありましたか?

堀「自分の好み自体はあまり変わってないと思います。選考の際は応募された作品を観賞したあと自分のなかで整理して、意見を決めてから選考会に臨んでいるのですが、選考委員の方々と話していくうちに違った見方を発見して、意見が変わっていったり…ということもあり、毎回刺激を受けています」
第2回でMOVIE WALKER PRESS賞を受賞した、小泉雄也監督の『笑顔の町』


ゆりやん「私は普段、お笑いの賞レースでは審査をしていただく立場だったりするので、『日本ホラー映画大賞』も人生が変わる場だと捉えています。大賞を受賞した方に商業映画監督デビューを確約するという本賞の選考には、非常に大きな責任があると思います。だから第2回の選考の際は、『ほかの作品と並べるとどうかな?』と何度も観返して、悩みながら挑んだんです。でも今回はお客さん目線に立とうと思って。一回目に観た気持ちでどう感じたか、おもしろかったか、怖かったかを大事にして、選考会に臨みました」

■「第3回はどれが大賞を獲ってもおかしくないレベル。選考会は3時間以上かかりました」(堀)
第1回より選考委員を務める堀未央奈


「第3回日本ホラー映画大賞」の授賞式は、2024年11月16日にグランドシネマサンシャイン 池袋にて開催された。『夏の午後、おるすばんをしているの』で大賞に輝いた片桐絵梨子監督は、現在KADOKAWAで商業映画監督デビュー作の制作準備を進めている。

――「第3回日本ホラー映画大賞」の選考を終えて、率直な印象を教えてください。

堀「一次選考を通過したすべての作品がきちんと怖くて、クオリティが高かったことにおどろきました。今回はオチがわかりやすい作品と、観客に委ねるような作品、2種類にはっきりと分かれていたように思います。選考委員の皆さんも、それぞれの考え方があるので毎回票が割れるんですが、今回も選考会は3時間以上かかりましたね」
第3回大賞を受賞した片桐絵梨子監督は、「大賞受賞を励みに新しい映画を作っていきたい」と語った


ゆりやん「第2回の時は1人で全部やりました、というこれぞ自主映画!といったような作品もあって、それも好きだったんですが、今回は録音部、照明部、助監督もベテランさんだったりする作品もあって、普通に映画館で上映されている作品を観るようでした。なにより、皆さんそれぞれの視点での“怖さ”を持ってらっしゃるのがおもしろいですね」

堀「今回は特に、どれが大賞を獲ってもおかしくないレベルでしたね。ただ、私は“人怖”が好きなので、そういう作品も観てみたかった、という気持ちはありますね。人間のドス黒い部分に焦点を当てた作品はあまりなかったので。私の好きなスプラッターというジャンルは、身近に起こりそうもないことが起きるところがいいんですが、逆に人怖だと身近なテーマを描けて、社会問題などもホラーのなかに取り入れられると思うので、そういう作品も観てみたいです」

――お2人それぞれに“推し”の作品はありましたか?
第3回でシネマンション賞を受賞した、小泉雄也監督の『異星人回鍋肉』


堀「私とゆりやんさんはスプラッター好き同士なので(笑)、小泉雄也監督の“SFカニバリズムホラー”『異星人回鍋肉』(エイリアンホイコーロー)が共通して好きでした」

ゆりやん「『異星人回鍋肉』は怖いし目が離せない。お化けや幽霊が出ることがホラーというわけではなく、俳優さんの言動がホラーになるような描き方がよかったですね」

――ほかに気になった作品はありますか?
第3回でPRESS HORROR賞を受賞した、及川怜音監督の『闇の経絡』


ゆりやん「カーチェイスに迫力があった、及川怜音監督の『闇の経絡』も怖かったです。“車ホラー”って日本ではあまりないので、その点でも新鮮でした。誰も乗っていない車が追いかけてくる…というシチュエーションにゾッとしました」

堀「私も『闇の経絡』を推していました。映像のクオリティがとにかく高くて、そのまま映画館でかけられるほど映像美が秀逸でした。ストーリーもわかりやすくて、ここはこう見せるぞ、という描写の緩急もあって。『異星人回鍋肉』も『闇の経絡』も、エンタテインメントとしてのキャッチーさがあるのがすばらしいですよね。監督さんたちはお若いんですよね?」

――2人(小泉監督・及川監督)ともに20代ですね。

堀「有望すぎますね!これからも撮ってほしいな。すっかり2人のファンになっちゃいました」

■「『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は、なにかが起こるんじゃないかという怖さや不気味さを全編に感じました」(ゆりやん)
映画監督デビューも発表されているゆりやんレトリィバァ


――お2人とも日頃からたくさんのホラーを観てらっしゃると思いますが、2024年にご覧になったなかで、特に印象に残ったホラー作品を教えてください。

ゆりやん「清水崇監督の『あのコはだぁれ?』は『絶対観に行きたい!』って思っていたんですが、実際に観たらもう怖くて…。子どもの頃に怖がっていた感覚をまた感じさせていただいたように思って、ホラーってやっぱりコレだよねと。すっごくおもしろかったです!」
『ミンナのウタ』のDNAを継ぐ新作として、ヒットを記録した『あのコはだぁれ?』


――堀さんはいかがですか?

堀「すごく悩むんですけど、『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』ですね。『悪魔のいけにえ』シリーズがずっと好きなんですが 、本作は特に好きな1本で、4回観直しています。世間ではレザーフェイスのことを『殺人鬼なんだから、もともと悪いやつだったんだろう』というイメージを持っていると思うんですけど、本作では前日譚として、彼がこうなってしまったことには自分ではどうしようもできなかった幼少期の環境が関係していたり…という背景が描かれています。周りが決めつけてしまったことによって起きた悲劇といいますか、いろいろな感情が描かれている、とてもすばらしい作品でした。映画としてもスピード感があって、ぜひ観てほしい1本です」

――堀さんはホラー好きの友人たちと鑑賞会を開かれているそうですね。どんな作品をご覧になるんですか?

堀「最近だと、友達8人くらいで『ソウ2』を観ました。なかには1作目を観たことがない子もいたので、結局『ソウ』までぶっ通しで観ちゃって(笑)。やっぱり1作目のあのどんでん返しにはしびれますね。グロテスクではあるんですが、そこには物語があって、ちゃんと理由もある。『ソウ』のような、本当におもしろい作品が増えてくれるといいなと思います」
世界中で大ヒットを記録し、ジェームズ・ワン監督の出世作となった『ソウ』


――1作目は本当に名作ですね。堀さんの好みがわかった気がします!

ゆりやん「誰かと一緒に観たということだと私も、実は近藤監督と…」

堀「え?一緒にホラーを観たんですか?」

ゆりやん「はい、並んで観ました…。『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を」
近藤亮太監督の商業映画監督デビュー作『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』


――第37回東京国際映画祭での上映です(笑)。お越しいただけて光栄でした!

ゆりやん「『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』はJホラーらしさといいますか、なにかが出てくる、出てこない以前に、ずっと不穏な、なにかが起こるんじゃないかという怖さや不気味さが全編にあって、まずはとても怖かったです。ビデオの画質ってめっちゃ怖いなと思い知らされました」

――ありがとうございます。具体的にはどんなポイントで怖いと感じましたか?

ゆりやん「ロケ地が全部怖い場所ばっかりでしたね。主人公たちが住んでるアパートの一室もよかったです。こういう生活感のある場所って、リアリティがないと怖くなくなると思うんですけど、リアルな部屋として作品に溶け込んでいて、没入できました」
母親から送られてきた古いビデオテープには、主人公の敬太(杉田雷麟)がかつて撮影した”弟が失踪する瞬間”が収められていた


――色々と限られた条件のなかで作り込んでいったので、そこを指摘いただけるととてもうれしいです。

ゆりやん「美術や小道具も印象的で、特に骨壷が映った時にはゾッとしました。全体的に、怖いところをここです!って強調するような描き方ではないですよね。自分で『いま、なにか写ってたんじゃないか…?』って“なにか”を見つける、というアトラクション感覚みたいなところがあって感動しました。なにより、監督の隣で観させていただけてうれしかったです!」

――ありがとうございます。次回作も頑張ります!

■「選考を通して自分も大事にしていきたいと感じるのは、アイディアを信じて作り上げること」(堀)
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は初週から満席続出、拡大公開も決定した


――ものづくりに携わっているなかで、選考委員としての経験は普段の活動にどんな影響を与えていますか?

ゆりやん「いままでは10年くらいピン芸人として活動してきて、ネタを作って1人でやって…ということが多かったんですが、最近はチームとして自分の意見だけではなく、いろんな方の意見を取り入れるというものづくりの経験をすることが多くて。『日本ホラー映画大賞』に応募される監督たちには、自分の経験を通してとても尊敬の念を感じています」

――作品の選考とご自身の創作活動と、別の視点から見ることで気づきがあったんですね。

ゆりやん「そうなんです。お笑いの賞レースもそうですが、本番に向けて仕上げていくなかで考えすぎて、だんだんと本来自分がやりたかったことからずれていくことがあって、すごく難しいなと思います。『日本ホラー映画大賞』の応募されている監督たちも、たくさん悩んで、魂を震わせるような作品を作っているんだなと感じます」
【写真を見る】堀未央奈とゆりやんレトリィバァ、ホラー好き2人で笑顔の絶えない対談となった


堀「選考を通して、自分もものづくりのうえで大事にしていきたいと感じるのは、自分がいま一番やりたいこと、興味があることを信じて作り上げること。例えば『悪魔のいけにえ』でトビー・フーパー監督がチェーンソーを使ったことで、その後ホラー映画ではチェーンソーが定番アイテムになりましたよね。アイディアを信じて切り拓いてきた方々がいるから、ホラージャンルはここまで発展してきたのだと思います」

ゆりやん「本当にそうだと思います。もちろん、大賞を獲るためにはこうなんじゃないか、って考えたりもするとは思うんですが、選考のうえで『こういう条件を満たしていれば大賞だね』、なんて話したことは一度もないですね。純粋に、選考委員それぞれにとってなにが怖かったか、なにがおもしろかったかを話しています。だから、あまり寄せすぎず、ご自身の感覚を信じて作った作品が観られるのを、私も楽しみにしています!」

取材・文/近藤亮太


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