有名人や投資の専門家になりすまして情報商材を売りつけるSNS型投資詐欺が社会問題化している。だが、詐欺の手口は時々刻々と進化している。被害者たちがその恐怖の体験を明かす。
偽警察・偽検事に軟禁・洗脳されて資産ゼロに……
「あなたの電話番号が犯罪に利用されています」
滝沢亮二さん(仮名・40歳)の奥さんの元に、携帯ショップ店員を名乗る人間から電話がかかってきたのは7月のことだった。店員はすぐに“警察官”に電話を代わったという。
「『このままだと共犯者になる。被害者22人に対する詐欺容疑で逮捕されると、最大440日勾留される』と妻は脅されたんです。“検事”を名乗る人も登場して、『私たちはあなたを守りたい。被害届を取り下げさせるために保証金200万円が必要』と畳みかけた。ビデオ通話で逮捕状まで見せられ、妻はすぐに指定口座に入金したようです」(滝沢さん)
想像のとおり、警官も検事も逮捕状もすべて偽物。だが、これは序章にすぎなかった。奥さんは数日後、「出張」を理由に1週間家を空けた。
奥さんの不審な出張、本当の理由がヤバすぎた
「最初の電話で“ヤツら”は画面共有アプリを入れさせ、妻の証券口座に4000万円の資産があることを知った。その刈り取りのために『ホテルに滞在して捜査に協力してくれ』と言ってリモート軟禁したんです。妻はホテルにいることを証明するため、数時間おきに部屋の写真を撮ってヤツらに送信していた。24時間ビデオ通話モードにさせられてネットに触れられず、洗脳状態にあったようです」
出張帰りの奥さんが頻繁に写真を撮り、「刑事」に送るのを発見し滝沢さんは気づいた。
「妻に相手は詐欺師だと伝えても聞いてくれないので警察署に駆け込むと、刑事さんはすぐに勘づいて電話口で妻を説得してくれました。警察署で対面した妻は、私を見るなり泣き崩れた。その後ヤツらが『人に相談したら旦那も犯罪に巻き込まれる』と脅していたことを知りました。妻は僕を守るために黙っていた」
妻は精神的に不安定に、夫婦の日常をも奪われた
詐欺師が奥さんに送った最後のメッセージは「逮捕されたいのか?」だった。定時連絡を怠った奥さんへの脅しだ。
「妻が精神的に不安定になったので、スマホからカード、口座まですべてつくり替えました。早くお金をつくりたいのか家のものをフリマアプリで売るので、モノがどんどん減っていく……」
詐欺師は大金だけでなく、夫婦の日常をも奪ったのだ。
怖~い詐欺事件簿6選
今回のケースの他にも様々な詐欺のケースが存在する。ここではあっと驚くような手口を6つ紹介しよう。
「新紙幣と交換します」詐欺(’24年3月)
7月3日の新紙幣発行に伴い、金融機関の職員を名乗って「交換する」とそそのかす詐欺が続発。3月以降、少なくとも4人が1500万円取られた。
SNS型投資詐欺で男性2.4億円失う(’24年3月)
昨年11月に若い女性からSNSでメッセージをもらった神奈川県の70代男性が「暗号資産で稼げる」とそそのかされ、県内最大2.4億円の被害に。
「黒柳徹子」名乗り生前贈与を打診(’24年7月)
70代男性が黒柳徹子を名乗る人物から「生前贈与して引退する」「贈与を受け取るために現金の振り込みを」と言われ、236万円を騙し取られた。
日銀総裁名乗るSNS型詐欺(’24年7月)
沖縄県の60代女性がSNS上で「日銀・黒田総裁」を名乗る人間から「原油先物で200%の利益が出る」とそそのかされ1100万円を詐取された。
総務省職員騙る劇場型詐欺(’24年7月)
秋田県の70代女性が、総務省職員を名乗る男から「あなたの電話から迷惑メールが送信されている」と連絡を受け、650万円詐取される被害に。
「暴力団の家にあなたの通帳が」(’24年7月)
静岡県の80代男性が警察官を名乗る男から「暴力団の家から通帳が見つかった。潔白の証明のためにお金が必要」と言われ、2300万円取られた。
取材・文/週刊SPA!編集部図版/ウエイド
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