阿部寛、キャリア初の役柄を演じた『ショウタイムセブン』で決意を新たに「70歳になっても挑戦し続けたい」

映画『ショウタイムセブン』主演の阿部寛にインタビュー!/撮影/興梠真帆

阿部寛、キャリア初の役柄を演じた『ショウタイムセブン』で決意を新たに「70歳になっても挑戦し続けたい」

2月7日(金) 10:30

韓国映画『テロ,ライブ』(13)を原作に、テレビの生放送中に爆弾犯との命がけの交渉に挑むキャスターの姿を描くリアルタイム型サスペンス、『ショウタイムセブン』(公開中)。阿部寛が主演を務め、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)で映画初監督を務めた渡辺一貴がメガホンを取る本作では、オリジナル要素を盛り込んだ、手に汗握る緊張感たっぷりの物語が展開していく。
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命懸けの“生放送”を映すリアルタイム型サスペンス


阿部が演じる折本眞之輔は、ラジオ局に左遷された国民的ニュース番組「ショウタイム7」の元キャスター。ある日の午後7時、ラジオ局に入った1本の電話から物語が動きだす。電話をかけてきた男の予告通り、発電所で爆破事件が発生。謎の男は、交渉人として折本を指名し、これを番組復帰のチャンスと考えた折本は「ショウタイム7」に乗り込み、自らキャスターを務めて犯人とのやりとりの生中継を強行する。しかし、そのスタジオにもすでにどこかに爆弾が設置されていた。自身の発言のすべてが生死を分ける極限状態に追い込まれた折本の姿が、リアルタイムで国民に拡散され、予測不能のラストに向かっていく。

■「僕がやってきた仕事にも近い存在なのに、一番遠い感じがしました」
国民的ニュース番組の元キャスター、折本眞之輔に惹かれたポイントとは?


自身初のキャスター役に挑んだ阿部。ライブ感を重視しての撮影は、長回しが多く用いられ、緊張している状態、追い詰められている状態の表現を意識したという。「事件が起きるのが『ショウタイム7』が始まる午後7時ごろ。そこから放送される2時間ほどの時間は映画のサイズとほぼ一緒。まるで舞台の準備のように、撮影数日前にみんなで集まって動きを合わせて、セリフや位置の確認をしました。カメラマンはどんな動きにも対応できるように、準備を進めていきました。実際の撮影は、10分超えの長回しが何本もありました」と本作に漂う緊張感を生みだした撮影を振り返る。

台本のト書きには動きについての細かい記載はなかったそう。シーンのほとんどはニュース番組「ショウタイム7」の収録スタジオで、折本は座っている状態も長い。“見せ方”の点で意識していたのは、アナウンサーとして生放送で視聴者を意識して冷静さを保とうとすること。「生放送中のキャスター役なので、様々な方向からカメラに捉えられています。常に視聴者に観られていることを意識する気持ちはかなり強く持っていました」。渡辺監督からはいろいろな方向から様々なカットを撮るので、自由に動いてほしいというリクエストもあったという。そんな初めてのキャスター役はどのように作り上げていったのか。
爆破テロ事件の犯人と決死の生中継を始める


「まず、(キャスターが)なにを考えているのか。番宣で目にした時の印象は『常に全体が見えている存在』。どんなことを考えているんだろうと思うことはたくさんありました。例えば、なにか1つのものを読むにしても、役者とは違う意味できっちり伝えること、情報を的確に伝える冷静さと判断能力が必要である一方で、いざなにかが起きた時には自分の力量の見せ場だと瞬時にアドレナリンが出て対処すると思ったりもして。僕ならあたふたしてダメになってしまうけれど、彼らの頭のなかはどうなっているのかなと考えました。冷静さの反面、興奮もすると想像すると、二重構造のようになっているのでは、など(笑)。僕がやってきた仕事にも近い存在なのに、一番遠い感じがしました。初めての領域という印象ですね」。

■「アドレナリンが出るのは、昔やった役ではないんですよね…」
折本のもとにかかってきた爆破テロ予告の電話から物語が動きだす!


一筋縄ではいかない折本を演じることに興味を持ったのは、難しい役だと感じたから。「キャスター役はすごく難しそうで自分にはできない役だと、これまで特に大きな理由もなく避けてきたように思います。だけどそろそろ拍車をかけて、無理だと思う役にも挑戦したほうがいいのかなと考えるようになった」と新しい役に挑戦した経緯を説明。「30年以上年役者をやってきていよいよ後半の時期に入っている。いろいろな役に挑戦してきたから演じたことのない役柄というのは、避けてきたものや自分にとってハードルの高いもの」と苦笑い。「アドレナリンが出るのは、昔やった役ではないんですよね…」としみじみし、「そうやって探していった結果が、キャスター役に惹かれた理由かもしれません」。
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折本には正義感もあれば、事件を利用して「復帰したい」という目論見もある。腹黒さと正義感の両方を持つ、表裏一体のキャラクターだ。「事件を利用しようとする彼の内面は、演じていて一番おもしろかったし、一番好きなところ。その一方で、実は正義感もある。ポリシーを持って生きてきたということだし、野望が出るところはすごく好きです」と折本というキャラクターに惹かれるポイントに触れる。「僕も20代の時にはモデルとして人気が出て、役者の世界に飛び込み、調子に乗って家を買うみたいな、若気の至りを絵に描いたようなこともしてしまって(笑)。その後、世の中そんなに甘くないことも知った時に、もう一度ここから立ち直そうとエネルギーが湧き上がった経験をしています。野心に満ち溢れたエネルギーが出る瞬間は、正直、人生で一番楽しかった。がむしゃらに、頭を下げてでもなんでもいいからやっていこうって時に出るアドレナリンが好きでした。折本にもすごく惹かれるところがありました」と自身の経験を重ねて、正直な気持ちを打ち明け、「共感できます」とも補足した。
本物の番組制作スタッフが『ショウタイムセブン』に出演!


映画全体に流れる緊迫感、緊張感を高めたのは、事件が起きている現場とその様子が流れる番組を観ている視聴者に同じ時間が流れること、つまりリアルタイムであることが大きな意味を持つ。そしてもう一つ、重要な要素となったのは撮影現場に“本物”の番組制作スタッフがいたことだった。「カメラマンさん、ディレクターさん、タイムキーパーさんもすべてエキストラだと思っていました。どうしてこんな動きができるのかと感心していたんです。撮影が始まって3日目くらいに、みなさんが本物だと知って(笑)。監督から明かされるまで気づきませんでした。『今日は天気がよくてよかったですね』なんて雑談が上手なスタッフさんがいて。緊張感のあるシーンの撮影で僕に気を遣って話しかけてくれているのかなと思っていたら、実はディレクター志望の方でした。だからすごく自然だったのか!と本当にびっくりしました。現場の動きって独特だから、演出するのはすごく大変。監督はかなり助かったと思います」と阿部自身も驚きだった撮影エピソードを披露した。

■「『こんなこともやっちゃうのか』って思われるようなことに挑戦し続けたい」
逃げ場のない生放送中のスタジオで、極限状態に追い詰められるが…


折本は緊張感が漂うなかで選択を迫られるが、阿部自身にはなにかを選択する際の基準はあるのだろうか。「昔からわりと熟考するタイプ。若いころに決断が早すぎて大失敗した経験があるから、石橋を叩いてわたるようにしています。例えば仕事を請ける時に、明らかにおもしろそうなものは即、快諾することも多いけれど、そうじゃないものに関しては少し詳細が見えるまで返事はしないようにしています。僕の場合の話だけど、決断が早くてあまりいいことはなかったから(笑)、過去の経験も踏まえて、少し考える時間を作るようにしています」とそういった苦い経験から学んだことがいまの自分の考え方を作りだしたと、包み隠さず語る。

また、インパクトのある折本のセリフ「興奮した!」のように、自身のキャリアで興奮した、アドレナリンが出るのを感じた瞬間は「数々ある!」と充実感を滲ませ笑顔を見せた阿部。なかでもはっきりと明確に“興奮”を感じ取ったのは、「日本アカデミー賞を獲った時かな。ほかの方が受賞した時はコケたほうが盛り上がるよなとか、くだらないことを考えていたら、自分が呼ばれて、本当に予想外だったんだなあと自分でも後からあの時のことを思うけど、意外だったからうれしかった。やっぱり興奮した瞬間と訊かれたらあの時になるかな」と教えてくれた。
緊迫した場面が続き、観るものを引き込んでいく


本作はメディアのあり方を問う作品にもなっている。最後の折本のセリフにも問いかけが入っていると指摘した阿部は「フェイクニュースが次々と飛びだし、リアルに力を持ち始めてしまったりもする。テレビの情報よりもネットが力を持っていたりもする。そういう世の中だからこそ、キャスターというのか、報道の世界にこれからも存在し続けてもらいたいとも思いました」とし、「情報が勝手に出ていく世の中を、なんとかしていかなきゃならない。どんどん進んでいき、抜け道が多くなる状況はちょっと心配です」と役を通して考えた報道のあり方にもコメント。

自身のメディアとの向き合い方について「SNSはほとんど見ないし、意識しないです」とのこと。ただ以前はネットの世界での“本音”を参考にすることもあったそう。「20年くらい前は、『2ちゃんねる』を見るようにしていました。実は作品への“本音”が回収できる場所でもあったんですよね。すごく正直な意見が多いから、ドラマ初回放送後に感想をチェックして、それ以降の話数の参考にすることもあったりして。『こういう観点もあるのか』と前向きに捉えることもできたし、便利なツールだと思っていました。プロ並みに知識が豊富な人も本当に多いし、深掘りもすごく参考になっていました(笑)」と、意外な使い方を明かす。時代もツールも変化した現在は「あまりにも見るべき量が多いから見なくなったというのが正直なところ。量がありすぎて手が出せないんです」と率直な気持ちを吐露した。
阿部寛が自身のメディアとの向き合い方を明かす


改めて、初のキャスター役への挑戦は「楽しかった」と満面の笑み。今後も「やったことがない役」には高いハードルと感じても挑み続け、超えていきたいモチベーションを持ち続けるとキッパリ宣言した。「動けるうちにやっておきたい役はちゃんとやっておきたいです。日本は年齢を重ねると現場での体力などを心配されるのか仕事が減っていくという現実があります。カッコよく歳を重ね、すてきに年を取っている方もたくさんいるのに、なぜか作品の話が回ってこない。海外ではアンソニー・ホプキンスや、ジャック・ニコルソンのように年齢を重ねてもバーンと主演を張っているし、彼らが出るならと映画館へ観に行く人もたくさんいる。でも日本はちょっと違うんですよね。だから僕はそういうのをぶっ飛ばしていきたい!」と力を込める。「70歳くらいになって『こんなこともやっちゃうのか』『おっそろしいな』って思われるようなことに挑戦し続けたいなって。例えばだけど『75歳で宙吊りやってるよ、この人!』みたいな(笑)。まだ先の話だけど、そこに向けて頑張っていきたい気持ちは強く持っています」。

取材・文/タナカシノブ


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