43歳、川崎宗則が語る野球人生の「終活」 「電池はもう少ししたら切れるんで」」

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43歳、川崎宗則が語る野球人生の「終活」 「電池はもう少ししたら切れるんで」」

2月6日(木) 22:15

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日本ではプロ野球12球団の春季キャンプが始まった2月上旬、メキシコのメヒカリというアメリカ国境沿いの街で、第67回カリビアンシリーズが開催された。

この大会には、ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコのウインターリーグ優勝チームが出場し、カリブ海王者を決める。今回、日本代表として初めてジャパンブリーズが招待され、参加を果たした。

チームの創設者であり監督を務めるアレックス・ラミレス(元DeNA監督)は「セカンドチャンスを与えたい」と語り、独立リーグの選手を中心にチームを編成。そのなかでも特に注目を集めたのが、元メジャーリーガーの川﨑宗則(栃木ゴールデンブレーブス)だった。

ジャパンブリーズの一員としてカリビアンシリーズに参加した川?宗則photo by Nakajima Daisuke

ジャパンブリーズの一員としてカリビアンシリーズに参加した川?宗則photo by Nakajima Daisuke





【世界の野球ファンを魅了するムネリン節】現地時間2月1日(以下同)、ジャパンブリーズはドミニカとの初戦を迎えた。試合前、MLBネットワークの記者から大舞台に立つ心境を聞かれると、川﨑は英語でこう答えた。

「I am happy. Very very very happy and happy, more happy, more happy, happy happy.」

独特の「ムネリン節」に、周囲の誰もが笑顔になる。2012年からメジャーリーグで5年間プレーし、底抜けに明るいキャラクターは、43歳となった今も変わらない。この動画インタビューが公開されると、アメリカのファンから大きな反響を呼んだ。

続いてマイクを向けたのはメキシコのメディアだった。女性レポーターが川﨑のインタビューやパフォーマンスを称賛すると、彼はスペイン語で応じた。

「Gracias, gracias, gracias(「ありがとう」と3回言い、お辞儀)。Te amo, Mexico(メキシコを愛しています)。Tacos, tequila!(タコス、テキーラ!)」

──スペイン語で一番気に入っている言葉は?

「Muchas chicas(たくさんの女性たち)」

女性レポーターは笑顔で拍手を送り、最後にメキシコのファンへのメッセージを求めた。

「Mexico, I love you.(中略)Gracias, gracias. ありがとうございます(日本語で)。Tequila, cerveza, vamos(ビールを飲もう!)。Tequila bueno(テキーラは美味しい)。Muchas chicas. Muchos juegos(野球の試合をたくさん)。Salud!(乾杯!)」

こうした即興のリアクションで、目の前の相手やSNSを通じて見るファンを楽しませられる野球選手は、世界でも川﨑ほどの選手はいないだろう。

【野球より大事なことは?】ムネリンの魅力を直接感じたく、翌2日、プエルトリコ戦の前にインタビューを申し込んだ。

「(カリビアンシリーズは)ラテンの選手たちにとって歴史ある大会なので、出場できることを非常に光栄に思います。僕自身、ラテンの選手を尊敬しているので、とてもうれしく、幸せな気持ちでいっぱいです」

──ラテン系の選手たちを尊敬する理由とは?

「よく世話を焼いてくれるというか。優しくて、そして情熱的。(ラティーノは)お酒が好きで、野球が好きで、そして人が大好きなところに惹かれますね」

メキシコの女性レポーターに「テキーラ」や「ビール」とスペイン語で繰り返していたのは、そんな思いが込められていたのだ。

メジャーリーグで活躍する日本人選手の多くは、インタビューの際に通訳を介し、英語で直接答えることは珍しい。

一方、カリビアンシリーズでは、川﨑の隣にも通訳がいたが、彼はできる限り自分の言葉で返そうとしていた。しかも、可能な限り現地の言葉で。それは彼にとって重要なことなのだろうか?

「別に重要じゃないですね。そんなことは気にせず。特に大事なことなんてないので。自分が好きなことをしゃべるだけです。僕は、特に重要なことなんてしゃべってませんから(笑)」

43歳となった今でも現役でプレーを続ける川﨑宗則photo by Nakajima Daisuke

43歳となった今でも現役でプレーを続ける川﨑宗則photo by Nakajima Daisuke



常に自然体。そんな彼の姿勢は、グラウンドでも変わらなかった。初戦のドミニカ戦ではサードで先発すると、相手の走者や三塁ベースコーチと頻繁にコミュニケーションを取っていた。そして、決まってドミニカの選手たちは笑顔になる。

「ラテンの言葉を忘れていたので、ちょっと教わりに。サードを守っている時は、いい勉強の時間なんですよ。野球よりも大事なことはたくさんあるので。忘れていたことを教えてもらっていました」

──野球より大事なこととは?

「お酒を楽しく飲むことです(笑)。それと奥さんを愛すること、家族を愛すること、女性を大事にすることですね」

"Muchas chicas." そのひと言にも、彼なりのメッセージが込められていたのだ。決して流暢な英語でなくても、心を込めれば伝わる。

【緊張しないなんてもったいない】そんな川﨑の魅力に惹かれたアメリカ人のひとりが、プエルトリコ代表「インディオス・デ・マヤゲス」に所属するデビッド・マキノンだ。

2023年に西武でプレーし、ファンに愛された一塁手の彼は、2戦目で川﨑がセンター前にタイムリーを放った直後、「君のビッグファンだ」と伝えたという。

川﨑の魅力は、プレーだけではない。カリビアンシリーズでは、ベテランとして集中力を発揮し、チームを支えた。

初戦のドミニカ戦で4点を先制された直後の3回裏。先頭打者として打席に立つと、初球をサード前にセーフティーバントで転がし、見事に出塁する。

「とりあえず反撃したかったので、一番チャンスがあるセーフティーバントを選びました。これでヒットになると信じてやりました。いいところに決まりました」

1対12で大敗した初戦。若手選手の多いジャパンブリーズは、守備の細かいミスやサインミスを繰り返した。2万人収容のスタジアムには多くの観衆が集まり、普段と異なる環境にチーム全体が緊張していたのだろう。

「そうですね。若い選手が多いので、おそらく緊張していたと思います。でも、それはすごくいいこと」

由緒ある大会に日本代表として出場するからこそ、緊張感に包まれる。川﨑は続ける。

「僕も昨日はきっちり緊張していましたよ。すごくいい時間でした。生きていて、緊張しないなんてもったいない。部屋でゆっくりしていたら、緊張することもないじゃないですか」

【43歳の今も現役を続ける理由】カリビアンシリーズでの川﨑は、初戦のドミニカ戦、3戦目のメキシコ戦にサードで先発出場。18歳でプロ入りした彼も、今や43歳。それでも現役を続ける理由に、年齢は関係ないのだろうか?

「関係ありますよ。(2戦目を控えた)今、体が痛いですし。昨日試合をして、今日は朝も起きられませんでした。何とか起き上がって、熱いシャワーを10分間肩に当てたりしていましたね。もうそろそろ限界かな......と思っています」

メキシコには専属トレーナーを帯同し、コンディションを整える。今もグラウンドに立ち続ける裏には、当然ながら努力がある。

「電池はもう少ししたら切れるんで、止まったらちゃんとやめます。もう最後かもしれないですね。でもそう言いながら、気づけば10年経ってますよ(笑)」

10年前、メジャーリーガーだった頃のような勝負強さは健在だ。

2戦目のプエルトリコ戦では、1対3で迎えた8回二死三塁の場面。代打で登場すると、初球をセンター前に弾き返した。

負ければ2連敗となり、決勝トーナメント進出が厳しくなる状況。そんな場面で、やはりベテランらしい一打を放った。試合には惜しくも敗れたが、彼のプレーはチームに勇気を与え、メキシコのファンも「Japon(日本)!」と大声援を送った。

川﨑は、スタメンを外れた試合でも若手を励まし、イニング間には外野手のキャッチボールの相手も務める。彼は常に前向きに野球と向き合っているのだ。

「40代中盤に差しかかった中年ですけど、野球を楽しんでいます。あとは人生の一部だと思っているので。それをどこまで自分のなかで突き詰められるか、どれだけ楽しめるか。野球だからこそできることなんですよね」

相手チームの選手にも積極的に声をかける川﨑宗則photo by Nakajima Daisuke

相手チームの選手にも積極的に声をかける川﨑宗則photo by Nakajima Daisuke



緊張感に包まれつつも、自然体だからこそ実力を発揮できるのかもしれない。周囲の日本人選手には「野球がすべて」という考え方も少なくないが、視点を変えることも必要なのではないだろうか。

「別に野球がすべてでもいいし、人生の一部だと思ってもいい。ただ、野球だけではメシは食えない。野球でチャンスをもらえる人間に必要なのは、やっぱり人間性。たくさんのスポンサーがいて成り立つエンターテイメントだからこそ、僕らはいいプレーを見せなきゃいけない。人間的にも恥じないようにしないといけない。そういう意味で、野球よりも大事なことがたくさんある。それが僕の考えです」

なぜ、川﨑は世界の野球ファンに愛されるのか──英語でもスペイン語でも日本語でも、彼のシンプルな言葉には、唯一無二の魅力が凝縮されていた。

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