鷹野隆大《2002.09.08.M.#b08》〈立ち上がれキクオ〉より 2002年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2月6日(木) 2:30
東京都写真美術館が写真と映像を専門とする美術館として恵比寿に開館してから30年。その総合開館 30 周年を記念して、国内外で活躍を続ける写真家であり、また同館が特に注目している作家でもある鷹野隆大(たかの りゅうだい)の多岐にわたる表現活動に迫る展覧会が、2月27日(木)から6月8日(日)まで開催される。
1963年生まれの鷹野は、2005年に写真集『IN MY ROOM』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞した。その後は、この作品に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、《毎日写真》や《カスババ》といった日常のスナップショットも手がけ、さらに東日本大震災以降は、「影」を被写体として写真の根源に迫るテーマにも取り組んでいる。鷹野隆大《2012.08.12.#b30》〈毎日写真〉より 2012年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
今回の展覧会のタイトルにある「カスババ」とは、鷹野の代表的な作品シリーズのタイトルであり、カスのような場所(バ)を意味する造語だという。このタイトルのもと、同展では、日常をテーマとしたスナップショットシリーズを中心に、初公開作品も含めた約120 点を紹介する。写真のみならず、映像、インスタレーションと多岐にわたる表現方法で、実験や再編を行いながら新たな表現に挑戦し続ける鷹野の現在進行形の制作活動とその表現に迫る展観となる。
同展はまた、このように多彩な表現方法を用いた鷹野の作品の展示構成を、建築家・西澤徹夫が手がける点でも興味深い。鷹野が提示した「都市空間」をキーワードに西澤が空間を構成し、それと並行して鷹野も作品構成をさらに変化させてくというかたちがとられた。その複層的なプロセスを幾度となく重ねた結果、様々な技法や手法を駆使した鷹野の作品が動的な表現へと昇華し、その世界観を観る者が体感できる空間と展示が実現したという。鷹野隆大《2015.10.28.#a28》〈カスババ2〉より 2015年 ©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
大規模な自然災害や感染症の世界的流行、経済発展による環境破壊や都市開発など、急速な時代の変化の渦中を生きる現代人にとって、美しいものだけではない現実を受け入れ、弱いものも醜いものもそのままに、むき出しのイメージを提示する鷹野の作品は、この日常を生き延びるヒントをもたらしてくれるものとなるだろう。
なお、会期中の金曜日の夜には、ビルの陰に花火が打ちあがる様子を撮影し、その音とイメージのずれに注目した2007年の映像作品《花火》が、館内のオープンスペースで特別上映される。写真とともに、映像作品にも注目したい。
<開催概要>
『総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―』
会期:2025年2月27日(木)~6月8日(日)
会場:東京都写真美術館 2階展示室
時間:10:00~18:00、木金は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(5月5日は開館)、5月7日(水)
料金:一般700円、大学560円、大高・65歳以上350円
公式サイト:
www.topmuseum.jp