福田正博フットボール原論
■2月14日に開幕する今季のJ1リーグを福田正博氏が展望。ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、FC町田ゼルビアの昨季上位陣は充実。新監督を迎えた8チームにも注目だ。
【優勝争いは神戸中心か 広島はいい補強】
ガンバ大阪とセレッソ大阪が対戦する2月14日(金)の"大阪ダービー"で、今季のJリーグは幕を開ける。各クラブともオフシーズンに戦力補強などをしてきたなか、中心となるのは2連覇中の王者・ヴィッセル神戸だろう。
ヴィッセル神戸は今季3連覇を目指すphoto by Getty Images
神戸の強みは、2連覇中のメンバーがほぼ顔を揃えることだ。移籍も囁かれたが、昨季のリーグMVPの武藤嘉紀が残留した。元日本代表のFW大迫勇也は5月で35歳になるが、まだまだ衰えは見せていない。ボランチの山口蛍がV・ファーレン長崎へ移籍したのは驚きだったが、戦力的には不安は小さいだろう。このポジションには昨シーズンを大怪我で棒に振った齊藤未月が戻ってきて、穴は埋まるとみる。
新戦力はサイドバックに小池裕太(横浜F・マリノス)、センターバックにカエターノ(SCコリンチャンス・パウリスタ)などを獲得。他クラブに比べると派手さはないが、弱さの目についたポジションにしっかり手を入れた印象だ。
いい補強をしたと感じるのが、サンフレッチェ広島だ。昨季J1で19得点をマークしたジャーメイン良(ジュビロ磐田)、強烈な左足が武器の左ウイングバック菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)などが加わった。なかでも浦和レッズに移籍した松本泰志に代わって、田中聡を湘南ベルマーレから獲得できたことは大きい。個人的には、Jリーガーのなかで海外クラブが次に目をつける日本人選手は田中聡だと思うほど、力が秀でている。それだけにこれは広島にとっての不安要素でもある。
昨季も夏場にMF川村拓夢(ザルツブルク)、FW大橋祐紀(ブラックバーン)というチームの核が海外移籍した。その穴は夏の補強でかろうじて埋めたとはいえ、もし両選手がシーズン最後まで広島のユニフォームに袖を通していたら、結果は違ったのではと思うほどだった。
これは広島に限らず、Jリーグの全クラブで起きていることでもある。FC町田ゼルビアも昨季は前半戦首位の原動力だった平河悠(ブリストル・シティ)が海外移籍して以降は失速したし、2022年シーズンの鹿島アントラーズも得点源だった上田綺世(フェイエノールト)が抜けたことで優勝戦線から脱落した。また、下位にいるクラブでもこうした海外移籍の可能性に加え、上位争いをしているJリーグクラブへも主力選手が移籍するケースがある。
若くて力がある選手は、開幕から活躍をするほど夏場に移籍する可能性は高まる。見方を変えれば、クラブはそれを織り込んで新シーズンのチームづくりができるかも、長いシーズンを通して成績を残すポイントになってくるということだ。
【新監督を迎えたチームに注目】
昨季3位と大躍進した町田は、積極的な補強を展開した。前線に西村拓真(横浜FM)を獲得したのをはじめ、黒田剛監督の志向するハードワークと堅守速攻のできる選手がさらに増えた。そのなか起用法で注目しているのが、昨夏からチームに加わったMF白崎凌兵だ。
ボールテクニックに優れて中盤でタメをつくれるタイプだが、黒田監督は彼をどう起用していくか。ハードワークをして堅守でボールを奪ったあとに、白崎にボールを預けて攻め上がる時間をつくり出したり、攻めあぐねた時にボールを散らすなどの役割を担わせたいのではないだろうか。白崎を上手に使って町田がバージョンアップできるかに注目している。
新監督を迎えたJ1クラブは8チームある。鹿島の新監督は、昨季まで川崎フロンターレを率いた鬼木達監督。その川崎には、昨季はアビスパ福岡を指揮した長谷部茂利監督が就いた。昨季はアルビレックス新潟を率いた松橋力蔵監督はFC東京へ。その新潟には昨季まで水戸ホーリーホックでコーチだった樹森大介監督が初めての監督業に挑む。
アビスパ福岡は、昨季まで町田でコーチをつとめた金明輝監督。柏レイソルは徳島ヴォルティスや浦和で監督を務めたリカルド・ロドリゲス監督。セレッソ大阪は横浜FMでのコーチ歴や鹿児島ユナイテッドで監督歴のあるアーサー・パパス監督。横浜FMはスティーブ・ホーランド監督に代わった。
鬼木監督を新たに迎えた鹿島は、選手補強にもしっかり動いた。昨季はC大阪でJ1得点ランク2位のゴールを稼いだFWレオ・セアラを獲得したのをはじめ、MF荒木遼太郎(FC東京)、MF松村優太(東京ヴェルディ)といった他クラブに期限付き移籍させていた能力の高い選手たちも呼び戻した。
DFラインやボランチなど守備陣の選手は揃っているだけに大崩れはしないだろう。現役時代は鹿島でプレーし"鹿島イズム"を知る鬼木監督のもと、頂点が狙える戦力で開幕からしっかり優勝争いに加わると予想している。
興味深いのは、川崎が新監督に長谷部監督を迎えたことだ。福岡とは異なり、ポゼッションやパスサッカーのできる選手たちが揃うチームで、福岡では堅守をベースに結果を残した手腕を、川崎でどういう形で発揮するのか。
松橋監督を迎えたFC東京が、ふたたびポゼッションサッカーに挑戦する点にも注目している。松橋監督と言えば、FC東京を2022年から1シーズン半率いたアルベルト・プッチ・オルトネダ元監督が新潟を率いた時代にコーチを務め、そのスタイルを継承して新潟の監督に就任。2022年にJ1昇格を勝ち取り、2023年、2024年とJ1で存在感を示した。アルベル元監督はFC東京ではポゼッションスタイルで結果を残せなかったが、その流れを汲む松橋監督がどういう仕事をするのかは注目している。
これまでのチームで培ってきたスタイルを考えると、松橋監督が川崎、長谷部監督がFC東京というほうがしっくりくる。それだけに両チームともしっかりと追いかけていきたい。
【昇格組の奮闘は楽しみ】
リカルド・ロドリゲス監督を迎えた柏は、面白い化学反応が起きるのを楽しみにしている。スペインサッカー的なポジショニングをベースにする監督のサッカーは、育成組織でしっかり育てられた選手が多い柏にはハマる可能性がある。マテウス・サヴィオ(浦和)は抜けたものの、前線に細谷真大が残った。チーム全体で攻撃を組み立て、細谷が仕留めるパターンが確立できれば、残留争いに巻き込まれた昨季のようなことはないはずだ。
台風の目として期待しているのが、京都サンガF.C.だ。2021年に就任した曺貴裁監督のもと、2022年からJ1を戦い続けてきたが、今季はこれまで以上に上位を争う可能性が高いとみている。その最大の理由が、昨夏にチームに加わったFWラファエル・エリアスだ。
昨季は加入後15試合11得点の高い決定力でチームを残留に導いたが、その決定力が今季は開幕から備わっている。もともとハードワークと運動量をベースにした守備に定評があるチームだけに、不足していた得点力を補えれば、昨季は取りこぼしていた勝ち点を上積みしていけるのではないかと思う。
J2から昇格してきた横浜FC、清水エスパルス、ファジアーノ岡山の3チームが、どんなサッカーを繰り広げてくれるかは楽しみのひとつだ。初昇格の岡山は戦力的に見れば降格候補に挙げられがちだが、近年のJ2からの昇格組は福岡にしろ、新潟にしろ、東京ヴェルディにしろ、下馬評を覆す見事な戦いぶりでサプライズを起こしてきた。
岡山にもそのチャンスは十分にある。神戸のある兵庫、岡山、広島と、瀬戸内海に面して並んだ3県が、西日本のサッカーを盛り上げてくれるのではと期待もしている。
Jリーグは2026年からシーズン移行するため、今季が2月スタートの1年間シーズンは最後となるが、開幕から熱い試合を各地で繰り広げてもらいたい。
後編「大型補強の浦和レッズの2025シーズンはどうなる?」へつづく>>
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