中島 京子「2024年 この3冊」

中島 京子「2024年 この3冊」

中島 京子「2024年 この3冊」

2月2日(日) 3:00

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◆2024年「この3冊」
◇<1>岡真理著『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房)
◇<2>安田浩一著『地震と虐殺1923―2024』(中央公論新社)
◇<3>奈倉有里著『文化の脱走兵』(講談社)

パレスチナとウクライナから、頭が離れない1年だった。戦争、集団殺害。その根底にあるものは、遠い国の話ではないことも感じられて、重苦しい気持ちが去らない。<1>は、ガザで起こっていることを理解するために必要最低限の知識を与えてくれる。ともかく、ここから、という思いで、年頭に読んだ。

<2>は、著者が100年前の関東大震災直後に起こった虐殺の地を訪ね、あらためて事件を丁寧に掘り起こす。ヘイトクライムによる悲劇を二度と引き起こさないために、「記憶のバトン」を受け取る重要性を考えさせられた。

<3>は、ウクライナで戦争が始まった年に、ロシア文学者である著者が書き始めたエッセイ。引用されるロシアの詩がどれも心に沁みて、やわらかい気持ちになる。タイトルの「脱走兵」は、セルゲイ・エセーニンの反戦詩から。

ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義 『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房)著者:岡 真理 Amazon | honto | その他の書店

地震と虐殺 1923-2024 『地震と虐殺 1923-2024』(中央公論新社)著者:安田 浩一 Amazon | honto | その他の書店

文化の脱走兵 『文化の脱走兵』(講談社)著者:奈倉 有里 Amazon | honto | その他の書店

【書き手】
中島 京子
1964年東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務を経て渡米。帰国後の2003年『FUTON』で小説家デビュー。2010年『小さいおうち』で直木賞、2014年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、2015年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、2016年日本医療小説大賞を受賞した。他に『平成大家族』『パスティス』『眺望絶佳』『彼女に関する十二章』『ゴースト』等著書多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月14日
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