人気のお笑いコンビ「春とヒコーキ」のぐんぴぃ主演映画『怪獣ヤロウ!』が公開中。地方公務員の青年が地域おこしのため怪獣映画作りに奮闘する本作は、“春ヒコ”のマネージャーで映画監督でもある八木順一朗監督の最新作だ。ぐんぴぃと八木監督は、共に平成ゴジラシリーズで育った筋金入りの怪獣ファン。彼らの熱き怪獣愛が映画にも注入されている。今回は、ぐんぴぃ、八木監督、そして相方で、やはり怪獣好きの土岡哲朗ら3人に、怪獣映画の魅力を語ってもらった。
【写真を見る】怪獣映画が大好きな春とヒコーキ&八木監督が、推しの怪獣を語り合う!
■「『ゴジラVSデストロイア』を観に行った時、初めて監督になりたいという夢を持った」(八木)
――まずは皆さんの怪獣映画との出会いを聞かせてください。
ぐんぴぃ「最初に映画館で観た映画が『ゴジラVSスペースゴジラ』なんですが、舞台が地元の福岡なんですよ。スペースゴジラがやって来て、自分の知ってる街並みがぶっ壊されるのが、怖いというよりは気持ち良かったですね」
八木「僕は4歳の時に『ゴジラVSモスラ』を初めて劇場で観て怖くて泣いたんですが、それから毎年ゴジラ映画を観に行くようになりました。ゴジラが死ぬ『ゴジラVSデストロイア』を観に行った時、初めて監督になりたいという夢を持ったので、ゴジラで人生がこうなりました(笑)」
土岡「僕は家に“平成VSシリーズ”のソフビ(人形)があって、そのあとにビデオで映画を観たんです。たぶんその人形は、姉が親たちと映画を観に行った時に買ってもらったんだと思います。小さいころはゴジラが怖くて、優しそうなモスラのほうが好きでした」
――お好きな怪獣はなんでしょうか?
ぐんぴぃ「応援したくなる、という意味でモスラですね。可愛いし、あの弱い感じがいいんです。平成『モスラ』シリーズは3本とも大好きです」
八木監督「ゴジラ、ガメラがやっぱり好きですけど、映画を含めてとなるとビオランテですね。初代ゴジラが核兵器に警鐘を鳴らすため存在しているとしたら、ビオランテはバイオテクノロジーとか遺伝子組み換えとか科学の暴走から生まれた、新たなゴジラとしての意味を持っていますから。口の中に無数の牙が生えていたり、触手が生えていたりと、気持ち悪いけどかっこいいデザインも大好きです」
土岡「僕はキングギドラですね。あの金色の体が美しすぎます。映画の『ホビット』3部作に登場するドラゴンのスマウグが、溶けた金を浴びて全身金色になった姿は、明らかにキングギドラへのオマージュですごいかっこよかったです。映画としては、パンデミック真っ只中で配信された『ラブ&モンスターズ』が印象に残っています。放射能で怪獣になった虫や生き物たちが支配する世界のお話で、怪獣は生々しくてグロいんですけど、自由に外に出たいという当時の気持ちとすごくマッチしました。
――『シン・ゴジラ』(16)に続き『ゴジラ-1.0』(23)が大ヒットし続編が決定。ハリウッドではモンスター・ヴァースが進行中ですが、この状況はいかがですか?
ぐんぴぃ「めっちゃうれしいですよ!2004年の『ゴジラ FINAL WARS』でシリーズが終わり、2016年の『シン・ゴジラ』まで干支1周待ちましたから」
八木「かつては考えられなかったですからね。『FINAL WARS』以降は大っぴらに怪獣好きとすら言えない隠れキリシタンみたいな状態でしたが、いまや毎年ゴジフェスやるし、これだけ怪獣が世界の中心にいるんですから」
ぐんぴぃ「みんな『FINAL WARS』で怪獣映画を卒業して、もう観なくていいやとなって終わってしまった。要は世界が大人になったということです。でも子どものほうが楽しいよねって気持ちになり、いまやみんなが『僕が好きな怪獣映画』をそれぞれ作っている状態。ハリウッド版では走ったり殴り合ってるし、いろんなゴジラだらけになったという」
土岡「世界の映画界がモンスター・ヴァース状態ですよね」
■「怪獣映画の魅力は社会問題を形にしているところ」(土岡)
――怪獣映画の魅力とはなんだと思いますか?
ぐんぴぃ「“怒り”ですね。例えば庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』や、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』で巨神兵が光線を吐いて地平線がバーッと吹き飛ぶシーン。怒りを一気に放つ気持ち良さは、破壊ありがとう!と言いたいです。実生活でやったらダメですが、怪獣映画だったら許されます」
八木「怪獣は世の中が不安定になればなるほど流行るんですよ。おかしな世の中をリセットしてくれる存在が怪獣だと思います。いまこれだけ怪獣がブームというのは、世の中がおかしいんでしょうね。あと普通の怪獣映画は物語のなかで『怪獣はここが魅力的』なんて言えないじゃないですか。でも『怪獣ヤロウ!』は怪獣映画を作る人たちのお話なので、そこを語らせることができました。そういう部分でもおもしろがって観てもらえたらうれしいですね」
土岡「さっきビオランテの話でも出ましたが、社会問題を形にしたところです。子どもの時は見た目のかっこよさで楽しめ、大人になると『こういう社会の問題を具現化したからこのデザインなんだ』と理解できる、二度おいしいところが魅力ですね」
――怪獣映画を観まくってきた皆さんが、こんな作品を観てみたい!という夢の怪獣映画はありますか?
八木「これまでにない、新しい怪獣映画ですね。怪獣映画は災害や戦争のメタファーとして作られるので基本シリアスですが、『オースティン・パワーズ』の世界に怪獣が現れたらどうなるか?ぐらいの、おバカな作品が観てみたいですね」
土岡「僕は怪獣目線の映画を観てみたいです。『ちいかわ』風に「なんでこうなってるんだろう、俺」みたいな(笑)。『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』にも通じる目線で、怪獣側の気持ちが感じられる映画がいいですね」
ぐんぴぃ「ちびっこゴジラ。『今日も勝てなかったよ』みたいな。可愛くて良いね(笑)」
■「『怪獣ヤロウ!』の見どころはCGではなくガチ特撮なところ」(ぐんぴぃ)
――怪獣ファンである皆さんから見た『怪獣ヤロウ!』の見どころを教えてください。
ぐんぴぃ「やっぱりCGではなくガチ特撮なところですね。例えば、刃物工場で刃を研磨する時の火花を、怪獣のミニチュアモデルと合成して火を吐いてるように見せるなど、特撮の種明かし的シーンもおもしろいんですよ。お金がなくても工夫で特撮はできるんだ、という楽しさを感じました」
八木「子どもたちがこれを観て、みんなで怪獣映画を作ってみようと思ってくれたらめちゃくちゃうれしいです」
土岡「ジオラマ感覚でミニチュアセットを作っていく所のワクワク感も楽しかったですね。社会性を持った怪獣が多いなか、この映画は個人の憂さ晴らしじゃないですか(笑)。自分事で勝手にやってるところも気持ち良かったです」
ぐんぴぃ「自分が怪獣になった時は大丈夫か?と思いましたけど、なかなかできることではないので光栄でした。足が上からドーンと落ちて地面が揺れるところは、これ俺がやってんだぜ!という気持ちよさ(笑)」
八木「ミニチュアセットの中に立つことすら普通はないですからね。それにスタッフも怪獣オタクばっかりで、ああしようこうしようとテストして、みんなでモニター見て、おもしろい!なんだこれ!とか言い合って(笑)」
ぐんぴぃ「爆発シーンの操演も『シン・仮面ライダー』をやられたベテランの横井ゆたかさんで、テストの爆発を見て大喜びしてたら『本当?うれしいねぇ』と本番で火薬大盛りにしてくれたんです。おかげでとんでもない爆発が起きて熱いのなんの。しかも天井は炎上するし(笑)」
八木「爆発がすごすぎて画面が一瞬真っ白になって、ぐんぴぃ死んだんじゃないかって(笑)」
ぐんぴぃ「でも演じている時は無我夢中で、まんま怪獣ごっこ。ぜひ第2弾として『怪獣ヤロウ!2』やりたいですね」
土岡「となるともう1体、怪獣が必要じゃない?」
八木「やっぱり清水ミチコさんですね。三つ首になって出ていただきましょう(笑)」
取材・文/神武団四郎
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